「ピアノとは鍵盤を叩く打楽器であったか!」と納得するのである。
"THE HOUSE OF BLUE LIGHTS"
EDDIE COSTA(p), WENDELL MARSHALL(b), PAUL MOTIAN(ds)
1959年スタジオ録音(DOT UCCU-5109)

前掲の"BLUE LIGHTS"と今回の"THE HOUSE OF BLUE LIGHTS"はGIGI GRYCEの手になる同じ曲。しかしながら、演奏されている曲想は天と地ほどの違いがある。これを聴き比べて欲しいと思った。ジャケットに見られる尋常ならざる怪しい雰囲気が全てを物語っている。

このEDDIE COSTAはピアニストである同時にヴィブラフォン奏者でもある。というよりも、ピアニストとしてよりもヴィブラフォン奏者としての参加アルバムの方が多いという。ピアニストとしてのリーダー・アルバムはこれ1枚だという。まさに、貴重な1枚である。
1957年、ダウンビート誌のピアノとヴァイブの両部門で新人の部のポール・ウィナーとなっている。それから5年後の1962年に、わずか31歳という若さで交通事故で夭折した。
こういう雰囲気のピアニストは今では本当に稀だ。超個性的な演奏を堪能して欲しい。でも、決して、「キワモノ」ではない。

@"THE HOUSE OF BLUE LIGHTS" テーマの後は快い4ビートのアドリブで始まる。が、徐々に、EDDIE COSTAの個性が発揮されていく。クライマックスに来ると、「ピアノとは鍵盤を叩く打楽器であったか!」と納得するのである。激しく低音部を叩くかと思えば流れるような高音部のフレーズもあり、そのコントラストの妙を堪能いただきたい。
更に、特筆したいのはリズム陣の頑固なまでの4ビートによるサポートである。あたかも「お釈迦様の掌でCOSTAが踊らされている」ように聴こえるのである。ベースはRED GARLANDの名盤"WHEN THERE ARE GREY SKIES"(JAZZ批評 38.)にも参加したWENDELL MARSHALL、ドラムスがBILL EVANSの盟友、PAUL MOTIAN。10分間の長尺ものだが、全く、飽きない。

A"MY FUNNY VALENTINE" 低音部の余韻が残る演奏。フリーなピアノ・ソロでテーマを演奏するが、アドリブに入ると一転してリリカルな面も垣間見せる。この曲も強烈な印象を残さずにはおかない。
B"DIANE" アドリブが楽しい。快いスウィング感に満ちている。
C"ANNABELLE" 高音部と低音部のコントラストの妙。

D"WHEN I FALL IN LOVE" このスタンダード・ナンバーにも個性的なアレンジが施してある。
E"WHAT'S TO YA" 3者のインタープレイで始まる。ここでもリズム陣の堅実なサポートが見逃せない。「このリズム陣あってのCOSTAのわがまま」という気がするのだ。


今では希少価値となってしまった個性的なピアノ・トリオのアルバム。こういう1枚が「manaの厳選"PIANO & α"」にあっても良いではないか。  (2003.09.13)



EDDIE COSTA

独断的JAZZ批評 153.