デビュー・アルバムにありがちな
「お試し、てんこ盛り」の感は否めないが
十分刺激的で今後の期待感が湧いてくる
"EXISTENCE"
AYAKO SHIRASAKI(p), MARCO PANASCIA(b), LEWIS NASH(ds)
2003年2月スタジオ録音(WN WNCJ-2124)

HMVで試聴をした上で、2枚のCDを購入した。1枚がこのCDで、もう1枚がBILL CHARLAPのNEW YORK TRIO "LOVE YOU MADLY" だ。どちらを先に掲載するか。
やはり、インパクトの強いこのCDを選んだ。なんとも刺激的な演奏である。またまた現れた日本人女性の凄腕が。AKIKO GRACE、山中千尋、馬場和子、に次ぐ活きの良いピアニストの登場である。

僕にはこのピアニストに対する予備知識は何もない。試聴して良かったから買った。それだけ。ジャケットを開いてみるとコンテストに優勝したとか、KENNY BARRONに師事したとか、能書きが書いてあるが、それでCDを買っているわけではない。あくまでもそこから溢れてくる音楽がどうか、だ。
NEW YORK TRIO "LOVE YOU MADLY"に比べると刺激的で期待感が湧いてくる。もっとも、今度のNEW YORK TRIOは購入するほどのものでなかった。魔が差したとしか言いようがない。詳細は次回掲載。

演奏曲目は以下の通り。
@"AIREGIN" SONNY ROLLINSのオリジナル。NIGERIA(ナイジェリア)を裏返しにしたタイトル。やはり、これが一番刺激的。抜群のテクニックに裏打ちされた鋭さがある。スティックから打ち出される快いアップ・テンポのシンバリングの上でピアノが躍動する。ベース・ソロ→ピアノとドラムスのインタープレイを経てテーマに戻る。
A"BE BOPPERS" 

B"LENNIE'S PENNIES" クラッシクを思わせるイントロで始まる、LENNY TRISRANOの曲。4ビートを刻むシンバリングが良い音している。分厚いウォーキング・ベースと相俟って、スウィングの条件は整った。ベース・ソロでは弦がネックに当たるバチバチという音がリアルだ。ここでもピアノがはじけている。
 
C"EMBRACEABLE YOU" 最初のテーマは4/4、アドリブ以降が3/4になっている。わざわざこうする必要性はあったのだろうか。こんな風にも出来ますとか、スタンダードを人と同じに弾きたくないという気持ちは分かるのだが・・・。
D"NOT YET" 変拍子に挑戦。この変拍子というのは人間の生理にどうも合わない気がする。生理的に心地よくないのだ。

E"FAR AWAY" 美しいバラード。
F"EXISTENCE" これも実験的作品のひとつ。テーマは詰まらないがリズム陣の好演が光る。
G"ESTATE" ボサノバのリズムが心地よい美しい曲。イタリアの流行歌だという。
H"PERFECT SUNDAY" しっかりとしたサポートを得て、気持ちよくスウィング。
I"FALLING LEAVES" ワルツ。枯葉の舞い散るイメージだそうだ。

@、B、C、Gの4曲がスタンダード・ナンバーで、それ以外が白崎彩子のオリジナル。
このアルバム成功の立役者にリズム陣の好サポートを上げねばなるまい。ピアノ・トリオというユニットには優れたリズム陣が必要で、それぞれのパワーが融合し、昇華すると3+αになる。+αのないピアノ・トリオは魅力的とはいえない。
デビュー・アルバムにありがちな「お試し、てんこ盛り」の感は否めない。確かに、デビュー・アルバムとなるとあれもやりたい、これもやりたいという気持ちは分からないでもないが・・・。その辺がマイナス点かな。KENNY BARRONの域には及びもつかないが、今後の期待感を抱かせるピアニストではあると思う。  (2003.08.24)


白崎 彩子

独断的JAZZ批評 150.