敢えて言うと、この音楽は僕の物差しの外にある。
"ANOTHER MIND"
HIROMI UEHARA(p), MITCH COHN(el.b), DAVE DICENSO(ds), ANTHONY JACKSON(el.b), JIM ODGREN(as), DAVE FIUCZYNSKI(g) 2002年スタジオ録音(TELARC CD-83558)

今、話題のピアニストだという。
このCDを新聞紙上で知ったのは7月31日の夕刊だったと思う。その時、すぐにでも購入したいと思った。新聞評によれば、これは凄いと。またまた、刺激的な日本人女性ピアニストの活躍かと思った。でも、生憎、HMVには置いていなかった。

数日後、DISK UNION新宿の店頭で、このCDを購入する際に躊躇するものがあった。それは、メンバーだ。ほとんど知らないメンバーの上、一部の曲に(as)と(g)まで入っている。唯一、知っているメンバーにエレキ・ベーシストとして名高いANTHONY JACKSONが入っているということで一種の不安があった。
(1)ピアノ・トリオ以外のトラックが数曲あること 
(2)エレキベースで演奏されている曲があること(実は全部エレキだった!) 
(3)購入前にネット検索で何曲かのさわりだけを試聴できた時点で、このアルバムの傾向はある程度把握していたこと 
以上を理由にやめようかとも思ったが、アコースティック・ベースによるピアノ・トリオもありそうだったので購入してみたが、なんと全曲、エレキベースであった。これで気分の80%は萎えてしまった。

僕はビート感のないダボついた音のエレキベースが嫌いだ。ほとんど生理的なものといってもいい。これは、理屈ではない。特にピアノ・トリオのように躍動感や緊迫感を命とする演奏にエレキ・ベースはなじまないと僕は思うのだ。

だから、このあとはそういう偏見と独断があるという前提で読み進んでもらった方がいいだろう。

で、このアルバム。
これは同じ日本人女性でも、今までに紹介してきたAKIKO GRACE や山中千尋、馬場和子とは単純に比較することが出来ない。聞こえてくる音楽がまるで違うのだ。ベースはエレキだし、ドラムスもノリがフュージョン&ロック。このドラムスはベース以上にいただけないね。
じっくりと耳を傾けるというよりは車の中でのバックグラウンドで聞くようなスタイルの方が合っているかも。でないと聴き疲れする。1枚通して聴くのは辛い。
そんな中で4曲目の"JOY"でのピアノのアドリブはこの人の才気を感じさせるし、随所にそういう部分はある。

演奏曲目は以下の通り。全て、彼女のオリジナル曲。
@"XYZ" テーマが面白くない。
A"DOUBLE PERSONALITY" (as)と(g)が参加。
B"SUMMER RAIN" (as)が参加。この程度なら、どこにでもありそう。
C"JOY" ピアノはきらりと光っているが・・・。
D"010101" keyboardも使用。
E"TRUTH AND LIES"
F"DANCANDO NO PARAISO"
G"ANOTHER MIND"
H"THE TOM AND JERRY SHOW" このピアノ・ソロが一番楽しめた。

この音楽は僕の好きなジャズとは程遠い。僕の物差しの外にある。必然的に辛口になってしまった。メンバーも次回は選りすぐった方がいいだろう。
何はともあれ、一度、上原ひろみのアコースティックなジャズ・ピアノ・トリオを聴いてみたいと思った!  (2003.08.07)


HIROMI UEHARA

独断的JAZZ批評 146.