ピアノという楽器の能力を余すことなく引き出している ソロであってもこれだけの躍動感が表現できる
KEITH の原点とも言うべき作品
"FACING YOU" KEITH JARRETT(p) 1971年スタジオ録音(ECM 1017 827 132-2)

KEITH JARRETT のピアノ・ソロ・アルバム。現在に至る原点とも言うべき作品。
"THE KOLN CONCERT" から遡ること4年。力強くも躍動感に溢れ、若々しく、そして瑞々しいソロ・ピアノが聴ける。全編、KEITH のオリジナル。そうは言っても、どこかで耳にしたことのあるフレーズがあちこちに散りばめられている。

先ずは、1曲目の "IN FRONT" における躍動感が素晴らしい。最初にインパクトの強い曲がきているので、それ以降の曲が少し物足りなくなる程の素晴らしさ。イン・テンポになってからのスウィング感が堪らない。左手から打たれる力強いリズムとビート感。打楽器的重低音部と右手のブロックコードからなる一体感と躍動感が凄い!ピアノという楽器の凄さをも思い知らせてくる。
ピアノはひとつの楽器でありながら、リズムもメロディもハーモニーも同時に表現することのできる数少ない楽器だ。その楽器の能力を余すことなく引き出していると言ってよいだろう。

3曲目の "LALENE" は美しい曲だ。ミディアム・スローの曲だが、KEITH はお得意の牧歌的、あるいはアメリカン・フォーク的演奏で叙情感たっぷりに歌う。しかも、リズム感、躍動感に溢れている。
僕もジャズは「スィングがなければ意味がない」と思う一人だ。例え、スローであったとしても、この躍動感を忘れてならないのがジャズだと思っている。

先の「JAZZ批評 78.大音量のJAZZから聞こえるもの(2)」で書いたように、このCDの1、3曲目を大音量で聴いた時の素晴らしさは驚きだった!オーディオ装置と演奏の素晴らしさが相俟って、あたかも、僕らの目の前で KEITH がピアノを弾いているかのようだった。
特にこの2曲は僕のお気に入りだ。いつも決まってこの2曲だけを聴いてしまう。
その他の曲は比較的バラード調の曲が多い。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2002.06.29.)




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KEITH JARRETT

独断的JAZZ批評 79.