独断的JAZZ批評 950.

GARY PEACOCK TRIO
80歳を超えたPEACOCKのベース・ワークは文句なしに素晴らしい
"NOW THIS"
MARC COPLAND(p), GARY PEACOCK(b), JOEY BARON(ds)
2014年7月 スタジオ録音 (ECM : ECM 2428 B0023136-02)

MARC COPLANDがGARY PEACOCKとトリオを組んだアルバムとしては2006年録音の"MODINHA"(JAZZ批評 396.)があげられる。ドラムスにBILL STEWARTを迎えて、そのドラミングの素晴らしさを厭というほど堪能させてくれたアルバムであった。
本アルバムはGARY PEACOCKがリーダーのトリオ。しかも、レコード会社はECMだ。果たして、どんなサウンドが待ち受けているのだろう?

@"GAIA" 御年、80を迎えたGARY PEACOCKのベース音が素晴らしいではないか!80歳を超えてこのビート、これぞベーシストの鏡でしょう。COPLANDのピアノは透明感あるクリスタルのような輝きをみせている。そこに絡むBARONのドラムも良く歌っている。
全てのトラックが3者のインタープレイを軸に進む。内省的であり、耽美的でもある。

A"SHADOWS" 
B"THIS" 
後半部に躍動感あふれるPEACOCKのベース・ワークを堪能することが出来る。
C"AND NOW" 
D"ESPRIT DE MUSE" 
ここでも躍動感のある演奏を聴くことが出来る。
E"MOOR" 
F"NOH BLUES" 
G"CHRISTA" 
PEACOCKの書いた美しいバラード。
H"VIGNETTE" 
I"GLORIA'S STEP" 
SCOTT LAFAROの書いた名曲を本アルバムで挿入しているのはPEACOCKなりの拘りかもしれない。BILL EVANSの名脇役・LAFAROと、KEITH JARRETTEと長年にわたりトリオを組んだ自分の姿をなぞったのかもしれない。。
J"REQIEM" 


一つの統一されたテーマがあって、アルバム全体が組曲のような感じかな?全てのトラックはインタープレイに始まり、インタープレイに終わると言って過言ではないだろう。緊密感に溢れる素晴らしいアンサンブルと言っても良いだろう。80歳を超えたPEACOCKのベース・ワークは文句なしに素晴らしい。ただ、COPLANDの手癖というか、似たようなフレーズがあちこちで再現されるのが気になるところだ。だから、どのトラックも似たような印象を与えてしまう。
例によって、ECMサウンドは温度感の低い、研ぎ澄まされた透明感に溢れている。決して熱くはならないのだ。
緊密感溢れるインタープレイ、素晴らしいアンサンブル。良い音楽だとは思う。だけど、好きな音楽かというとそうではない。
本アルバムを5回くらい聴いている。そのどれもが途中で猛烈な睡魔に襲われた。残念ながら、最初から終わりまで聴き通したことがない。
心躍るような、ワクワクするような昂揚感がないのが惜しい。と言っても、そうなればECMサウンドとは言えなくて、多くのECMファンを逃すことになるのだろう。   (2015.08.02)

試聴サイト:
https://www.youtube.com/watch?v=ZDKB79nvrjM



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