複雑な内面性を表現
 『マリリン 7日間の恋』(My Week With Marilyn) 監督 サイモン・カーティス

高知新聞「第169回市民映画会 “実話基にした秘話2作”」
('13. 2. 4.)掲載[発行:高知新聞社]


 1962年に36歳で謎の死を遂げた世紀のスター女優マリリン・モンロー。彼女が「年下の人とのキスは初めて」と微笑む30歳のときの束の間の恋を描いた作品だ。エンドロールに「コリン・クラークの日記に基づく」とクレジットされるように、相手となった23歳の青年(エディ・レッドメイン)が40年余り公表せずにきていた実話のようだ。

 さすがにマリリンと比べると、少々野暮ったい顔で体型も均整の及ばないミッシェル・ウィリアムズが、アカデミー賞主演女優賞ほか各賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞主演女優賞に輝いている。彼女の演技が一番の見どころで、過去に私の観たマリリンを演じた女優たちの誰よりも、細部でマリリンを髣髴させるところがあった。所作や表情などの外見のみならず、ノーマ・ジーンとマリリン(96年)では2人の女優によって演じる意匠が凝らされたくらいに複雑な彼女の内面性を、さりげない深みを添えて演じ切っている。

 また、名優ローレンス・オリヴィエ(ケネス・ブラナー)が監督し共演を務めた『王子と踊子』(57年)製作の舞台裏を描いたメイキングとして、当時の映画製作の状況や半世紀前にマリリンが実際に宿泊したホテルの様子、緑豊かな素晴らしい景観などを楽しむこともできる。観終わった後、思わず『王子と踊子』を観てマリリン・モンローとスクリーンで再会したくなるような映画だ。

by ヤマ

'13. 2. 4. 高知新聞「第169回市民映画会 見どころ解説」



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