街のエクステリア「アートボード高知」
『文化高知 2001年11月 No.104』('01.11. 1.)掲載
[発行:財団法人高知市文化振興事業団]

 高知市のおびさんロードに「アートボード高知」という、芸術文化イベントに的を絞ったポスターを一挙に15枚も貼り出せる、チラシ棚と夜間照明つきの一大掲示板ができて早くも二年半になる。県の職員提案事業により「文化のパブリシティ活性化事業」として予算化され、民間大手企業である第一勧業銀行が場所を提供し、県民公募のデザインによって、行政機関の高知県が設置したものだ。運営は民間文化団体で構成する管理組合で、窓口業務は地元商店街の喫茶店が担っているから、土日や午後五時以降でも受け付けてもらえる仕組みだ(註:現在は二時から五時まで)。新しい形での官と民の役割分担が模索される昨今において、次代の行政と住民の関係の在り方を考えさせる、官民協働時代のシンボルとも言えるモニュメントにもなっている。
 展覧会や演劇、舞踏、コンサート、映画上映などに的を絞ったポスターを屋外で一堂に掲示することでパブリシティ効果を高めると共に、芸術文化イベントの企画を競い合う場としてまた、街のアートの情報スポットや若者の待ち合わせ場所にもなる、住民に愛される街のエクステリアとして文化の街づくりにも貢献している。チラシ棚がついているところがミソだ。掲示期間は、原則四週間以内で、掲示の度に三百円の組合費を納めることになっている。集めた組合費で、掃除道具を購入し、掲示申し込みの十番目ごとに組合員の手でガラス拭きをしたり、毎年一年間に貼り出したポスターのなかから「いい感じポスター賞」を選出して、その発表と表彰もおこなっている。平成11年度の利用件数は147件、平成12年度は181件。利用頻度も順調に伸びてきており、ほとんどトラブルもなく、好評を博している。これまでに二回おこなわれた「いい感じポスター賞」の選出は、二年連続で横倉山博物館のポスターが最優秀賞となり、公立文化施設としてのセンスの確かさを誇っている。

 巨大なガラス張りの掲示板ということで、設置前は不心得者による悪戯などが危惧されたりしたが、良いものを作れば手は出しにくい、行政だけの仕事にせずに取り組めば大丈夫との説得が実証された形になっていて、とても嬉しく思っている。新聞やテレビには、デザイン公募や選定、管理組合発足、オープニングセレモニー、最初の「いい感じポスター賞」の選出と表彰、と節目節目でパブリシティを高めて貰えた。おびさんロード商店街振興組合からは、アートボード高知管理組合の監事も出していただき、受付窓口を喫茶メフィストフェレスにお願いしている。管理組合の事務局は、四十年を越える活動実績を誇る高知市民劇場が担ってくれている。誕生のときから運営に至るまで実にたくさんの関係者を得たことが、当初の危惧を払拭できた最大の理由だろう。官民協働の値打ちはまさしくそこにある。
 隣県徳島でもこれに倣って徳島市に設置の動きがあるようだし、県の「県民参加の予算づくりモデル事業」では安芸ブロック9市町村で「ふれあいボード“みてみいや、きてみいや”」というものが既に誕生している。さらなる波及が楽しみだ。

  *受付窓口:喫茶メフィストフェレス(高知市帯屋町2-5-23、TEL:088-823-7871)
  *事務局 :高知市民劇場(高知市鷹匠町1-1-3、TEL:088-823-2715)
by ヤマ

'01.11. 1. 『文化高知 2001年11月 No.104』



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