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「日本人とは何者か」を視聴して https://www.nhk.jp/p/frontiers/ts/PM34JL2L14/episode/te/XRL92XPWX2/ | |||||
NHK フロンティア | |||||
高校の同窓生から「NHKBSで先日放送された標記の番組を見たかな? けっこう衝撃的な内容だった。」とのメールを貰い、視聴してみたものだ。日本人の特殊性がDNA解析で明らかにされると共に、古代遺骨のDNA解析が可能になったことで縄文人のルーツが明らかになってきたという部分について旧友は反応したようだった。 Chapter1「“最初の日本人”の正体」 Chapter2「今も残る“縄文DNA”の謎」 Chapter3「激動の時代“新たなDNA”の謎」 人類の起源がアフリカにあるという話は、ずいぶん前から知られたことだから、そこに驚きはなかったけれども、学者の世界でも、縄文人の後に弥生人が加わって、現代の日本人のルーツが出来あがったというのが通説だったことが覆ったというような説明がなされていたことに驚いた。 かねてより僕は、日本人に純血性を見出すことに対して非常に懐疑的な部分があり、文字や記録が残るようになってからの時代でさえ、帰化人などという奇妙な説明による日本人の古代“文明開化”が、まるで明治期と似たような形で進められたかのように教えられることに対する疑念があって、一部の篤志的な少数の来日者がいて社会や文化に変革がもたらされたのとは違うのではないかと思っていたからだ。 第三章で示されたDNA解析では、現在の大陸の人々にはもうほとんど残っておらず、タイの山奥に暮らす「森の民」マニ族が現代日本人以上に濃厚な縄文人DNAを残し継いできているほかは、東京人のなかに一割程度、沖縄人に三割程度、そして、アイヌ人には七割程度も残っているという状況らしい。現代の大陸人の多くと違って日本人には縄文人のDNAが残っている理由が所謂ガラパゴス化のような“隔絶”にあるというのは、番組中でも説明のあったとおり、氷河期の後期に海水面が上昇し、日本列島が大陸から隔絶されたことからして実にもっともなことだと思う。 だが、それから後、弥生人が渡来するようになったのであれば、弥生時代に限らず、その後の古墳時代であれ、飛鳥時代であれ、渡来人が少なからずあっておかしくない。確たる統一国家が出来るまでは意外と流動性が高かったのではなかろうか。その確たる統一国家がいつできたのかが問題なのだが、大和朝廷が出来たと習った覚えのある古墳時代において、日本国内での豪族争いのなかで統一王朝が現れたとするよりも、その時代に渡来人による征服王朝が統一を果たしたというふうに考えるほうが理に適っていると随分前から考えてきたようなところが僕にはある。 だから、今回の特番では、むしろそのことが、古代人と現代人のDNA解析を対照することによって科学的に可能性として示されたというふうに受け取りつつ、やはりそうだったかと非常に興味深く観た。さすがにNHKだから、万世一系を今でも信奉する人々がうるさ型で存在する以上、あからさまに大和朝廷は征服王朝だという発言は控えていたが、かなり踏み込んで暗示していたような気がする。 すると、番組を紹介してくれた旧友から「万世一系」は、大和朝廷確立以降の話だから、大和朝廷が征服王朝であるのか、弥生時代の渡来人による統一王朝であるのかによって左右されることではないのではないかといった主旨の指摘とともに、この番組を観て「僕が危惧したのは、最初のアフリカ経由アジア人を含め、あらゆるアジアの血を受け継いで日本人ができているという点を、強調しすぎると日本人優位論につながり、それこそ「八紘一宇」の科学的根拠づけに利用されはしないかということ。とにかく、これから、物語を作る人にとっては、格好のネタになると思う。」との興味深い返信があった。 これについては、嫌韓嫌中に限らず排外主義に染まった純血イデオロギーに囚われている“右翼的な陣営”が「あらゆるアジアの血を受け継いで」いることを以て優位性を誇るとは思えないから、杞憂のような気がする。そもそも戦時に唱えられた八紘一宇なぞ、所詮は覇権支配を誤魔化す方便として使っていただけのことで本気ではなく、日本書紀から剽窃することで権威付けしていたに過ぎないものだと僕は思っている。もっとも、その覇権支配がひたすら搾取と収奪のみを企図したものだとも思ってはおらず、要は、基本的に大日本帝国が手本にしていたのは同盟国でもあったイギリスだということだ。イギリスのインド支配を真似た中国支配を夢みていたのではないかと思っている。 また、大和朝廷確立以降の万世一系に対しては、大和朝廷が出来たとされる古墳時代の大和朝廷と、古事記・日本書紀の著わされた飛鳥時代の大和朝廷とは、実は別物なのではないかと僕は思っている。言うなれば、飛鳥時代の渡来人が古墳時代からの大和朝廷を乗っ取って政権に就いたものを権威づけるために記紀神話を構築して、一から各地を統べるまでもなく、既存の統一国家の枠組みを保とうと企てたものだと考えているところがある。それゆえの万世一系だし、驚くほど長命の神武天皇だという気がしている。好都合なことに、飛鳥時代より前の大和朝廷には文字による記録がなかった、というわけだ。古墳時代の大和朝廷の権威を利用しようとしたのは、言わば、ちょうど三国志で曹操であれ、劉備であれ、自分こそが正当な漢王朝の継承者だと主張していたようなものだ。前述した「文字や記録が残るようになってからの時代でさえ、帰化人などという奇妙な説明による日本人の古代“文明開化”が、まるで明治期と似たような形で進められたかのように教えられることに対する疑念」の核心部分でもある。 そのような遣り取りをしていたら、八年前に『大放言』を読んだことのある百田尚樹らが政治団体「日本保守党」を立ち上げたという新聞記事のなかで「神話とともに成立し、以来およそ二千年、万世一系の天皇を中心に、一つの国として続いた例は世界のどこにもありません」などと言っていることが目に留まった。この記事によれば、日本保守党の旧ツイッターの「公式アカウントのフォロワー数は33万超と、約25万の自民党など、既存政党をしのぐ」のだそうだ。『大放言』にも透けて見えていたような三百代言が支持される方向にポピュリズムが働いていることが嘆かわしくてならないと改めて思った。 | |||||
by ヤマ '23.12.20. NHKプラス | |||||
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