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『母とわたしの3日間』(Our Season)['23] 『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』['24] | |||||
監督 ユク・サンヒョ 監督・構成・編集 小松莊一良 | |||||
第205回市民映画会の二本立てで先に観たのは、パニック障害で職場から郷里に逃げ帰った娘が亡母の癒しと見守りによって復帰の力を得ていく『母とわたしの3日間』。やろうとしていることは判り過ぎるくらいに判るのだけれども、ちっとも乗れなかったのは、僕の好まないトレンディな食ネタ映画の形を採っているからか、韓ドラ的誇張が過ぎているからか、何とも置いてけぼり感に苛まれた。 学校の成績が中の下だった子が選りによって数学のしかも米国UCLAの教授になっていたり(そりゃあ、そういうこともあるかもしれないけど)、娘に教育を与えたくて稼ぐために弟夫婦に預けたことを母親から捨てられたと感じるほどに共に過ごしてもいないのに、母親のレシピを習得していて料理上手の母親以上の腕前を発揮することにしても(そりゃあ、そういうこともあるかもしれないけど)、何だか拵えもの感が過ぎて興醒めだった。それにしても、あの何とも唐突なゴルフ場開発の話は、どうなったのだろう。 すると高校時分の映画部長から「随分前に観た『椿山課長の七日間』を思い出した」との見解を得た。成程と思った。映画日誌にはしていないが、当時の観賞メモに「奇抜な趣向のファンタジーで、人生の機微を心得つつ、ある種、手玉に取れる才覚と機知がストーリーテリングの巧みさという形に結実して、うまく語られたような思いがしなくもないけれども、けっこう面白く観た。人の誤りを赦す寛恕は、やはり誤りに至る事情への理解と己が誤りへの気づきがイチバンという判りやすさがきちんと折り込まれていたところがミソだったように思う。そのうえで、誤っていたか否かの過去を追うのではなく、これから何が必要かに思いを致すことが寛恕を生み出すものであることがうまく表されていたように思う。」と残っていた。 続いて観たのは、フジコ2023年春パリ9区コンセルヴァトワール劇場でのモーツァルトの名を刻んだ天井を映し出していた♪アンプロンプチュ(シューベルト)♪の演奏から始まり、天井に刻まれたバッハの名を映し出していた同劇場で奏でる♪エオリアンハープ(ショパン)♪だったか、♪黒鍵のエチュード(ショパン)♪だったかで終えていた二時間のなかで、六十代後半で脚光を浴び、九十二歳で亡くなる直前まで現役を貫き、世界中の演奏会でソールドアウトを続ける支持を得ていたというピアニストの晩年を追った『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』。 クラシック音楽における稀代のポップスターに相応しい楽曲が並び、サンタモニカ、東京、京都、パリに居を構え、卒寿を迎えても転々としていたタフな彼女の語る来し方や生き方が興味深かった。フジコ・ヘミングを一躍、表舞台に押し上げることになった♪ラ・カンパネラ(リスト)♪以上に、彼女が十三歳のときに疎開先で弾いていたというピアノがまだ残っていて、小学校の体育館兼講堂のステージで七十七年ぶりに弾くという演奏会のなかで子どもたちの前で弾いていた♪エオリアンハープ(ショパン)♪だった。戦前にスウェーデン人画家の父とのハーフとしてドイツで生まれ、数奇なる人生と言う他ない来歴と内外四か所の自宅の佇まいが目を惹いた。 | |||||
by ヤマ '25. 2. 7. 高知市文化プラザかるぽーと | |||||
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