『レジェンド&バタフライ』
監督 大友啓史

 タイトルの意図するところは、レジェンド信長&バタフライ濃姫ということだったのかと得心した。NHK大河ドラマに『利家とまつ』というタイトルの作品があったのは、何年前になるのだろう。

 なんだか三年前の『麒麟がくる』に描かれた信長&濃姫に近い捉え方が窺えたように思うが、大河ドラマで川口春奈の演じた帰蝶よりも猛々しくて意地っ張りな濃姫(綾瀬はるか)だったような気がする。若き日の信長(木村拓哉)のみならず、そのいかにも取り巻き然とした取り巻き連中(丹羽・柴田・前田etc)を含め、織田家中をひとかどの武門に育んだのは、濃姫の薫陶であるが如き有様だった。ドラマ世界でのこの女性優位というのは、近ごろのトレンドではあるのだろうが、如何に今めかしいのが好みの信長ものとはいえ、いささか易きと過剰に流れている気がして仕方がなかった。

 それにしても、大河ドラマに限らず、僕は今まで何人の信長を観てきているだろう。最も数多くの役者によって演じられているキャラクターなのではないかという気がする。性格付けもさまざまに施されていたように思うけれど、信長と濃姫の拗れ者同士のラブストーリーを主軸にした信長キャラというのは、初めて観たような気がする。

 明智光秀(宮沢氷魚)謀反の動機が、濃姫と別れて腑の抜けた信長の魔王再生を目論んだ光秀の策を家康に看破されてしまった不首尾による信長見限りにあったというのは、ちょっと面白かったのだが、帰蝶だから帰るの蛙ネタは、駄洒落かと少々興醒めた。でも、安土城の威容と贅を凝らした設えやリュートの使い方は気に入った。
by ヤマ

'23. 3.21. TOHOシネマズ1



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