『オオカミの家』(La Casa Lobo)['18]
『骨』(Los Huesos)['23]
監督 クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ

 先に上映された短篇『骨』の、タイトルどおりバラバラになった人骨が蠢く作品もさることながら、『オオカミの家』の、いい加減手間暇の係るコマ撮りアニメーションで一時間を超える長尺を片時も途切れることなく侵食と破壊のイメージを連ねて続く不気味さの醸し出す怖さというか、気色の悪さが印象深かった。サイズが小さければまだしも、実際の部屋と思しき壁やら床にペインティングを加えていくばかりか、それに見合ったほぼ等身大と思しき人形などを壊したり造形したりしてコマ撮りをしていく労力と掛けられた時間の膨大さに気が遠くなるような気がした。

 上映後、主催者から『オオカミの家』のモチーフになっているのはカルト教団だそうだとの補足説明があったが、間断なく続く侵食と破壊のイメージの示唆するところは、それだったのかと得心がいった。帰宅後、チラシをきちんと観直すと実在のコミューン【コロニア・ディグニダ】にインスパイアされた“ホラー・フェアリーテイル”アニメーションとの惹句が裏面に記されていた。

 折しもHDに、BS世界のドキュメンタリーストップモーションアニメを紡ぐ -エストニア 激動の時代を越えて-』(HANDMADE A Tale Of Stop-Motion['23]を録画してあったので、視聴した。コマ撮りの手間暇を具体的に見せてくれていた。

 エストニアのヌクフィルムのアニメーション作品を僕はどこかで観ているのだろうか。番組に現れた作品群から受けた感じから、きっと観ているはずだとは思いながら、特に思い当たるものが浮かばないのが残念だ。ちょうどストップモーションアニメの作品を観賞してきたばかりだったことから観てみたのだが、非常に面白かった。スウェーデンの番組であるところがまた興味深い。

 ソ連統治下のエストニアであれ、チリであれ、政治的な不自由さは、「報道の自由度ランキング」で七十位前後にまで落ちている近年の日本よりも甚だしいと思われるが、さればこそアニメーションによって寓意を込めることで検閲などを掻い潜ることのできる部分に値打ちもあるのだろう。

 ヌクフィルムの創始者エリベルト・トゥガノフの名も、ヘイノ・パレス、リホ・ウント、ラオ・ヘイドメッツの名も記憶にないが、県立美術館の企画上映でヌクフィルムを取り上げてもらいたいものだと思った。
by ヤマ

'23.11. 3. 喫茶メフィストフェレス2Fホール



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