『ハケンアニメ!』
監督 吉野耕平

 アニメとハケンが掛け合わされると、てっきり派遣かと思いきや覇権のほうだった。二組のプロデューサーとディレクターのカップルの対照に加えて、幅広くスタッフにも目くばせを施した、いわゆる現場物で、けっこう面白く愉しんだ。

 新人監督の斎藤瞳を演じた吉岡里帆は、四年前にフジテレビ系列で観た連続ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』での義経のごとく、志とガッツ溢れる心ある職業人の役柄がよく似合っているように思った。幼時の自分と同じような子供の心に響く作品を届けたいという志が、最も届いて欲しかった身近にいる太陽クンに届いて涙するラストの予定調和は、劇中、予定調和を打ち破りたいと意気込んでいた王子監督(中村倫也)が、最終的には『運命戦線リデルライト』の作中キャラクターに「そんなの、もう古いんだ」と言わせるエクスキューズによって辻褄を合わせていたが、未読の辻村深月の原作でもそういうあしらいになっているのだろうかと、ふと思った。

 それぞれのプロデューサーを演じた柄本佑と尾野真千子が、なかなか達者な好演だったように思う。主人公以外の人物もとても魅力的に描かれているのがいい。無名の新人監督の作品が埋没しないように光を当てるための行城(柄本佑)の四苦八苦も、天才作家と持て囃されたプレッシャーとプライドの板挟みに苦闘するカリスマ作家の危うさを支える有科(尾野真千子)の辛抱も、並のプロデューサーには出来ない難業であることが、作家の苦闘共々よく伝わってきた。

 いちばん面白かったのは、人気アニメーター並澤和奈(小野花梨)とロケ地の観光課職員宗森(工藤阿須加)が交わしていた「リア充」のニュアンスネタだった。「宗森クン、あながち間違ってないぞ!」と思わずニンマリとした。また、斎藤瞳とのステージトークで王子千晴の見せていた毒と配慮もなかなか冴えていて、かっこよかったように思う。




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by ヤマ

'22. 6. 8. TOHOシネマズ2



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