『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』(Amazing Grace)['18]
監督 シドニー・ポラック

 特にソウル・ミュージックのファンでも、ゴスペル・ファンでもない僕でもその名を知っているアレサ・フランクリン【vo】やコーネル・デュプリー【g】、チャック・レイニー【b】などの往年の伝説的なパフォーマンスが観られるということに特段の感激はないけれども、技術的な問題で映画として完成できなかったとのソースが半世紀の時を経て、こうしてスクリーンに興行作品として映し出せるに至っていることに感銘を受けた。

 作品タイトルにもなっているアメイジング・グレイスの第一夜での熱唱が確かに最もインパクトのある歌唱だったように思うけれども、それ以上に、信仰者においてゴスペル・ミュージックがかほどに魂に響くのかと、アレサの歌唱に涙し、歓声を上げ、感応している聖歌隊や聴衆の姿が印象深かった。

 その他、僕が特に気に入ったのは、さまざまな歌手の歌唱で馴染みのあるキャロル・キング作詞作曲の♪きみの友だち♪を、同伴者としての神に重ねていた第一夜の♪尊き主よ我が手を/きみの友だち♪だった。また、第一夜のパフォーマンスが評判を呼んだのか、白人の姿のなかった第一夜に対し、第二夜では白人聴衆の姿が散見されたなかに♪高き山に登らん♪の歌唱中、ミック・ジャガーの姿が捉えられていたのが目を惹いた。

 僕は「第二夜は、今夜よりも凄いよ」と企画者と思しき牧師が呼びかけていたのが奏功しているように思ったのだが、先輩映友は、第一夜は地元の教会関係やごく近しい人を呼んだもの…第二夜は教会の収益のためにお金持ちを呼んだものと観たそうだ。なるほど、そういう事情があったかもしれない。今の時代だと、あのパフォーマンスと呼び掛けがされると、あっという間にSNSで拡散されて翌日は、さぞかし大変なことになっただろう。また、別の映友からは私は過去にGospel choirに所属しており、また一年を経ての高知での公開でしたので、感極まった90分でした!との知らせがあり、僕が足を運んだ十五年前のステージのことではないかと訊ねたら、そのとおりだった。

 ただ東京での公開も今年のことで、一年を経てのものではなかったらしい。チラシに2018年作品とあったから、東京では疾うに公開済みかと思っていたのだが、少し経ってからの劇場公開というのは、ドキュメンタリー映画にはよくあることだと思うから、さして驚きはなかった。だが、それなら尚のこと、本作をそう東京に遅れることなく上映したあたご劇場は大したものだという気がする。もっとも本作の場合、アレサが亡くなった年の追悼制作のようだから、もっとタイムリーに公開されても良さそうなものなのにと思わぬでもない。
by ヤマ

'21.10. 3. あたご劇場



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