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『バットマン』(Batman)['89] | |||||
監督 ティム・バートン
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一作目を観逃していたのだけれども、いかにもバートン印の映画の意匠が面白かった。“ジョーカー”ことジャックを演じていたジャック・ニコルソンが実に楽しそうだった。とりわけ美術品を冒涜して回っている場面が喜々としていて、印象深かったように思う。 映画の領域における“キッチュのアーティスティックな洗練の旗手”として、当時、脚光を浴びていたような感のあるティム・バートンからすれば、ある種、受け手の期待に応える面もあって、アカデミック・アートに対する蛮行を絵にしたような気がしなくもない。それをジャックがバットマンとの闘いによって手ひどい傷を負わされて弾けた狂気的な振る舞いとして描いているところが、なかなかクレバーだなと感心した。 己が欠落感をバットマンに変身して補わずにいられない強迫から逃れられないブルース・ウェインを演じたマイケル・キートンも、幼時に両親を目の前で殺されて負った喪失感からか、どこか幼児期で止まっている部分を残している男の人物造形をよく果たしていたように思う。取材目的で接近してきたはずのヴィッキー・ベール(キム・ベイシンガー)の気を惹かずにおかないような、頼りなさと頼り甲斐の相反する両面を色濃く窺わせる心閉ざした独身資産家を体現していたような気がする。「月明かりの下で悪魔と踊った」ことがあるのは、なにもジャックだけではなくブルースもそうなのだろうが、踊り方が決定的に違うということなのだろう。 ただ、2時間を超える長尺が必要だったようには感じられず、少々まどろっこしい気がした。ペンギンもキャットウーマンも登場しないのだし、100分内には収めてほしいところだと思った。 | |||||
by ヤマ '21. 7.22. BSプレミアム録画 | |||||
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