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『ジェントルメン』(The Gentlemen) | |||||
監督 ガイ・リッチー
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予告編を観たときから、いかにも“野郎映画”だと思い、どこが紳士かと笑いつつ、すっかり女性仕様がスタンダード化した今の映画市場で、こういう映画がどのような造りになっているのか興味が湧いたのだが、思いのほか、オーソドックスに野郎映画のテイストを保っていて、何だか嬉しくなった。オープニングクレジットからして、今どきらしからぬスモーク&スコッチのクラシカルな野郎風味だったように思う。 チラシに“ゲスな私立探偵”と記されていたフレッチャー(ヒュー・グラント)の語るロンドンの大麻王ミッキー(マシュー・マコノヒー)の仕掛けた、言うなれば業界再編策の顛末がなかなか凝った語り口によって綴られていき、思いのほか面白かった。思い掛けなく硬骨漢を貫いていた“マシンガン”レイ(チャーリー・ハナム)と、とても堅気とは思えない手際を見せていたボクシングコーチ(コリン・ファレル)がちょいとかっこよく、多弁でこすっからいフレッチャーとの対照が利いていたように思う。 概ね大物クラスは、どいつもこいつもろくでなしだったが、なかでもゴシップ誌の編集長ビッグ・デイヴ(エディ・マーサン)の食らった豚小屋での仕置きと、黒幕的漁夫の利を得ようとしたユダヤ人富豪マシュー(ジェレミー・ストロング)の食らわされた“ベニスの商人”みたいな仕置きは、直接的には画面に映し出されなかっただけに、その凄惨ぶりが偲ばれたように思う。 最後に、嬶天下の恋女房ロザリンド(ミシェル・ドッカリー)の元へと全力疾走するミッキーを描くあたりが、昔の野郎映画にはなかった今どき仕様のようにも思ったが、基本、オーソドックスな野郎映画の魅力がたっぷりで、好感を抱いた。 | |||||
by ヤマ '21. 6. 3. TOHOシネマズ8 | |||||
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