『音楽』
監督 岩井澤健治

 kenjiが研二【声:坂本慎太郎】とクレジットされたエンドロールを眺めていたら、原作:大橋裕之と出てきて驚いた。研二と健治の違いはあっても、てっきり岩井澤のオリジナル作品だと思っていたからだ。他愛無いと言えば、まことに他愛も無い話で、「オチはそこかよ!」と思わず突っ込みたくなったところも、作り手の狙い目なのだろう。

 思わず笑ったのは、古美術バンドの森田【声:平岩紙】くんが、研二たちの演奏を初めて聴かされて、その素朴で原初的なサウンドに打たれた場面に、タルカスや原子心母、ツェッペリンやチュブラー・ベルズなどのアルバムジャケットを彷彿させるイコンがどっと現れたときだった。今の若者でもそうなのかと愉快だった。

 なんだか無性に緩くて脱力しつつも妙なところで高揚感をもたらすヘンな映画だけれど、ちょっと可愛らしいところのある作品だったように思う。だが、カルト的人気を博す理由が今ひとつピンと来ないところもあった。ジェネレーション・ギャップだろうか。エンドロールを眺めていると、どうやら実写から起こしたアニメーションのようだ。その手法自体が、素朴で原初的なものらしい。ロックにしてもアニメにしても、そういうところへの回帰をゆる~く謳いあげているところがヲタク受けしたのかもしれない。

 それにしても、研二と大場【声:竹中直人】との間の距離感が絶妙だった亜矢【声:駒井蓮】のヴォーカルは、どうなったのだ。とぼけたリコーダーもいいけれども、そこのところを外されたのが心外だった。でも、だからこその『音楽』という作品なのだろう。
by ヤマ

'20. 2.24. 喫茶メフィストフェレス2Fシアター


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