『バーバラと心の巨人』(I Kill Giants)['17]
監督 アンダース・ウォルター

 風変わりな少女バーバラ(マディソン・ウルフ)の頑なまでの現実逃避と創造力のエネルギーの強さに圧倒されながら、そこまで駆り立てずにおかない彼女の心底にある怒りは何なのだろうと、両親の事故死がよぎったりしたのだが、そうではなくて意表を突かれた。

 だから、唯一出来た友人のソフィア(シドニー・ウェイド)に対してバーバラが「なぜ二階に上げたのよ!」と抗議し、スクールカウンセラーのモル先生(ゾーイ・サルダナ)の発した「野球」という単語に固まってしまった理由については、得心できたけれども少々拍子抜けしたわけだが、考えてみれば、未然形のまま引っ張られる宙ぶらりん状態のほうが、ストレスはより強いということなのだろうと、介護苦のことを想起したりした。

 同時に、それなら父親についての言及が一切なかったような気がするが、どうなっていたのだろうとの疑問が生じた。離婚した後のシングルマザーファミリーだったということだろうか。いずれにしても、友人とのTVゲームに没頭して姉カレン(イモージェン・プーツ)を呆れさせていた兄が申し訳程度に登場するのみで、いじめっ子も友人も先生も女性ばかりの“男たちのまるで存在しない世界”であることが印象深く、なかなか意味深長に感じられた。原作も含めて作り手が専ら男たちである点がまた、とても興味深く思われる。

 バーバラが巨人に託して恐れ、脅えながらも抗い、打ち倒そうとしていたものが何だったのかを思うとき、台詞にもあったように思われる“彼女の使命と化した決意そのものを表している原題”と違って随分と穏当ながら、なかなか的確な邦題だと思った。

 そして、転校生のソフィアの果たした役割の大きさを思わずにいられなかった。シドニー・ウェイドの程のいい佇まいに現実感があって、バーバラの構築する妄想感との対照のバランスが良くとれていたような気がする。




推薦テクスト:「チネチッタ高知」より
https://cc-kochi.xii.jp/hotondo_ke/20080401/
by ヤマ

'20. 8. 3. あたご劇場



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