『愛の渦』['14]
監督 三浦大輔

 R18+だし、当地では上映されることのないまま気になっていた作品だ。原作・脚本も担っている三浦大輔が自身の率いる劇団で公演して、第50回岸田國士戯曲賞を受賞している舞台劇の映画化作品なのだが、思ったほどには面白くなかったものの、いろいろ触発されるものもあった。

 秘密クラブ「ガンダーラ」に集う20代30代限定との乱交パーティ参加者となれば、前夜に観た『SHAME -シェイム-』['11]以上にセックス依存症の面々、とはならず、むしろ場慣れしていない新参者ばかりだった。そういう状況が実際に多いのか否かは、一度も参加経験がなく斯界に明るいほうではない僕には、不明だ。だが、案外そうなのかもしれないと思わせる生々しさというか、現実感が漂っていて、手元にある二つ折りチラシに記された「…かつて青年と同じ経験をして迷走した僕は、心からGood Luck!と祈った。」との宮台真司の言葉からしても、そんなものなのかもしれないと思ったりした。

 最後に従業員の男(窪塚洋介)が「ここには、そんな意味ありげなカッケェこと、ないッスから」と言っていたように、むしろ気詰まりで、互いの値踏みに晒される居心地の悪さのほうが顕著なのかもしれない。単に衣服を脱いだからと言って、裸の付き合いができるものではないし、見知らぬ人相手だと直ちに「旅の恥は掻き捨て」感覚に切り替われるほど、確かに人は非日常性に親しんではいないような気がした。

 地味で真面目そうな容姿ながら、抑圧した性欲の強さを持て余しているらしき女子大生を演じた門脇麦のみならず、『SHAME -シェイム-』以上に恥ずかし気な、身も蓋もない役どころをしっかり演じていた池松壮亮や滝藤賢一、中村映里子、三津谷葉子らの役者陣に感心した。それこそ、ある意味、濡れ場以上に演じていて気恥ずかしくなりそうな場面がいくつもあって、役者というのは大したものだと妙な感心をした。
by ヤマ

'19. 9.22. Netflix配信動画



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