『ペンギン・ハイウェイ』
監督 石田祐康

 白骨街道を主題にした検察側の罪人を観た翌日に観賞した映画は、ペンギン街道だった。まさしく“少年時代”だと思った。おっぱいへの目覚めはアオヤマ君【声:北香那】に及んでいなかった気がするけれども、小四の頃の僕もあんなふうな感じだったような覚えがある。アオヤマ君の敏感と鈍感の塩梅加減やちょっと律義な記録魔といったところに、何だかやけに親近感があった。

 そして、妙に理屈っぽかったと同時に、わりと感覚的に物事を受け入れる感受傾向が強くて、そういう基本的なところというのは今なお変わらずにあるものの、やはりアオヤマ君を観ていると、小学高学年時には既に失っていったものがたくさんあるように感じられた。

 MIYATA Dental Clinic(だったか?)のお姉さん【声:蒼井優】がなかなかよくて、実際には、あんなふうに小四男子の相手をしてくれる若い大人女性はいないとしたものだろうが、アオヤマ君がペンギン街道のゴールに置くのも分かる気がした。

 僕にそういう“お姉さん”像というものはなかった気がするが、ペンギンが陸に上がるときには必ず通る道としてのペンギン街道は、人間の男の子が大人に近づいていく過程においても、必ずあるような気がする。ハマモトさん【声:潘めぐみ】といい、お姉さんといい、アオヤマ君の少年時代というのは、なかなか楽しそうで好もしかった。ペンギン街道を抜けてアオヤマ君が漕ぎ出た世界の果てでいつか再び、おっぱいが大きくてチェスの上手なあのお姉さんと巡り合えるといいなと思ったが、案外その頃にはハマモトさんのおっぱいが大きくなって待っているのかもしれない。チェスは既に十分上手だったし、アオヤマ君が気になっていたのだから。

 それにしても、このシュールでノスタルジックな作品世界を森見登美彦の原作小説はどのように造形していたのだろう。ちょっと気になってきた。『夜は短し歩けよ乙女』のときは全くそういう気にはならなかったのに。
by ヤマ

'18. 9. 9. TOHOシネマズ3



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