『スピード』(Speed)['94]
『おとなの恋は、まわり道』(Destination Wedding)
監督 ヤン・デ・ボン
監督 ヴィクター・レヴィン

 公開当時以来となる四半世紀ぶりの再見となった『スピード』['94]は、思った以上に古びてなくて、なかなか面白かった。告知で見たカバー写真に“炎のなかバスが宙を飛ぶ図柄”があって、「こんなシーン、あったっけ?」と思ったが、確かにバスが宙を飛ぶ場面が出てきた。派手な炎はまた別の場面だったが、どちらもかなりなハイライトシーンだったのに、記憶を押しやっていたのは、やはりラストの地上に突き出る地下鉄の圧巻だったのだろう。観た当時、腹を突き破って飛び出してくる『エイリアン』['79]を想起した覚えがある。

 この時分のサンドラ・ブロックは、キラキラしていたなと改めて思った。後には少々怪物めいてきたりもしたように思うが、当時は本当に弾けるような歯切れの良さがあって、実に魅力的だった。異常な状況で結ばれたカップルは長続きしないそうだから、とアニー(サンドラ・ブロック)のほうから、もう一つ別の結びつきを求められる果報に見合う強運を、行き当たりばったりの“結果オーライの果敢さ”で手に入れていたジャック(キアヌ・リーヴス)とあまりに対照的なハリー(ジェフ・ダニエル)の不運が哀れだった。そして、傍らで「良かった」を繰り返すだけでほとんど活躍できずにいたマクマホン隊長(ジョー・モートン)が妙に可笑しかった。だが、特筆すべきはやはりデニス・ホッパーで、映画としての息つく暇もない見せ場の連続もさることながら、彼の体現していた異常感が効いて、これだけ観応えのある作品になっているのだと思った。

 その『スピード』['94]が思いのほか面白くて、“融通の利かない変わり者キャラ”の似合うキアヌが嫌いではなかったことを思い出し、90分を切っているランニングタイムの短さも気に入って観に行った『おとなの恋は、まわり道』では、近年覚えがないほどの不興を味わった。

 映画に対して節操がないというか、ウィングが広いほうだと周囲から認められている僕にして、これほどピクリとも響いてくるものがない作品は珍しい。実に詰まらなかった。先ごろ観た『熱狂宣言』など、観ていて作り手の奥山監督にムカついて来たりする分、まだ観甲斐があったなどという妙な感慨を覚えた。

 ほぼ全編、フランク(キアヌ・リーヴス)とリンジー(ウィノナ・ライダー)が遣り合っている会話劇なので、内容よりも言葉遣いや台詞回しが面白いのだろう。僕が原語を解することができれば、もう少し違ったのではないかとでも思わないと、本作が映画として存在し得ていることが不思議なくらい、つまらなかった。英語を解せなくて、字幕版で観て、これをコメディとして笑える人がいったい何人いるのだろう。字幕の訳は、もう少し何とかならなかったのだろうか。

 
by ヤマ

'18.12. 9. 高知伊勢崎キリスト教会
'18.12.11. TOHOシネマズ3  



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