『怪物はささやく』(A Monster Calls)
監督 J.A.バヨナ

 これでエンドロールだなと思ったところから添えられていたエンディングに、昨今の映画の語り過ぎを予感したのだが、豈図らんや、母親リズ(フェリシティ・ジョーンズ)が遺していた絵本の最後の頁の絵に唸らされた。あの怪物は、学校でのいじめや母親の死といった試練をコナー(ルイス・マクドゥーガル)に生き延びさせるために、先逝く母親が遣わせたものだったような気がして、ちょっと痺れた。

 思えば、中学生にもなって母親の寝床に潜り込む軟弱な少年だったコナーがタフさを獲得していくためには、12:07に訪れる怪物の存在は不可欠だったと言えるような気がする。少年を描くことに主眼を置いていて母親の描出が少なかったものだから、本作は、実は息子への想いを遺して死んでゆく母の物語だったのかと、思いを新たにしたラストショットだった。

 また、スペイン映画なのかと思っていたら、英語圏の作品になっていたので、このテイストなら、イギリス映画に違いないと思ったが、映画を観終えた後、チラシを確かめるとアメリカ・スペイン合作とあってイギリス映画でなかったことに意表を突かれた気がした。しかし、原作小説【パトリック・ネス:脚本も】がイギリスらしく、それならばと納得した。

 シガニー・ウィーバーの演じた祖母の器の大きさがなかなかよかった。僕にも孫がいるけれども、自身でコントロールできなくなったままに爆発させた激情によって孫息子があそこまで居室の破壊をしたならば、とても彼女のような冷静さを保てる自信がない。驚きのあまり怯んでしまいそうな気がする。ましてや互いに相性の悪さを認め合っている間柄なのだから、尚更のことだ。

 
by ヤマ

'18. 4.24. 民権ホール



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