『日本と再生』
監督 河合弘之

 世界の潮流については、ドイツの政策転換にしても、アイスランドの地熱発電にしても、その他もろもろ初めて見聞することではなかったのだが、取り残されていると思っていた日本における各地での取り組みがこれほどたくさんあるとは驚いた。何故そのことが諸外国の取り組み状況以上に知らされずにあるのかを思うと、なんだか情けなくて仕方がなくなってくる。旧来からの電力会社を大口スポンサーにしていない大手商業メディアはないということなのだろうか。例によって、事件事故でもない限り厄介なフィールドには立ち入りたくないとの上層部に対する忖度が働いているのかもしれないなどと勘繰りたくなる思いが湧いた。

 しかし、日本各地世界各国を旅して、各地の自然エネルギーへの転換に取り組んでいる人々にインタビューしている河合弁護士は、実に生き生きとしていて快活この上ない。いずれ向かう道はこちらのほうに間違いないはずだという未来への確信があるのだろう。

 そして、そのことを実感させてくれる現場の人々の顔を見て、話を聴くことで、ますますその思いを強くしてもらえるのが嬉しく愉しいのだろう。さまざまな自然エネルギー事業の運営者、管理者、責任者、出資者、政策担当者、各国各地の各層の当事者たちが明るく力強く語っている姿を見るにつけ、原子力発電の必要性を説いたり、自然エネルギー事業を揶揄している人々の言質との違いについて思わずにいられなかった。ものいう人の表情というものは、言葉以上に雄弁だ。ドキュメンタリーの真骨頂でもあると思った。

 とても強く響いてきたのは、欧州の誰の発言だったか失念したが、「最も決定的なのは、政府の行う政策転換だ」との言葉だった。自民党と民主党のどっちが政権を担っていたにしても、エネルギー政策を見直し、脱原発を打ち出さないではいられなかったであろう国情を招いた福島原発被災時に、たまたま民主党政権であったがために、民主党政権下での政策転換として政権交代後、掌を返すことに歯止めが利かせにくい状況になっていることの不幸を思わずにいられない。

 だが、“最も決定的なのは、政府の行う政策転換”であって、民主党政権下で弾みのついた自然エネルギー事業の取り組みが国のエネルギー政策の逆コース化によって勢いを失っているにしても、そのことが全てではないからこそ、本作で取り上げられた人々の活動が現にあるのだろうし、原発利権が未来永劫続くとも思えない。

 民主党政権アレルギーというものによってエネルギー政策の転換を評価するような本末転倒をすべきではないと改めて思った。上映会場で配布されていた「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」のリーフレットには、本作の製作・監督を担った河合弁護士の名前が幹事長・事務局長として記されているが、会長は、本作にも事業推進支援者として登場していた城南信用金庫における相談役を肩書としている人物であり、副会長は元自民党幹事長ほか2名、顧問は小泉純一郎と細川護熙となっていて、民主党色は欠片もない。協賛企業に二つの生協連合会の名が挙がっていることも目を引いた。




推薦テクスト:「眺めのいい部屋」より
http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/50627929.html
 
by ヤマ

'17. 8.24. 美術館ホール



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