『ECフィルム~世界の貴重映像~』高知上映会
エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ

  1951年、ドイツで始まったエンサイクロペディア・シネマトグラフィカによる数々の記録映像から、主催者のゴトゴトシネマが「祭り、歌、踊り」に焦点を当てたセレクションを観て来た。

 アフリカ、ブラジル、インドネシア、欧州中部、ニューギニアの各地で撮られた9編を観ながら、芸と遊び、習俗と神事の境界は文化的にはどこにあるとしたものなんだろうと思った。アフリカ、南米、アジア、欧州、南太平洋とグローバルに跨っている目配せを好もしく感じた。そして、9編中8編が僕が生まれ出てから後の時代の記録ばかりであることに、ある種の感銘を受けた。いま各地の実情は、どうなっているのだろうと思わずにいられない。

 そんななか、唯一僕が生まれる前の1949年に撮影された「丸太を持っての儀礼的駅伝競走」に関して、ネットで拾ってきた画像だからどういう位置づけでのものかは不明と付言したうえで、現代の写真画像が映し出されたのが目を惹いた。主催者が付言した趣旨はおそらく、その画像が今なおブラジル、トカンティンス地方のクラホ族における習俗として続いているものなのか、観光イベントのようなものとして行われているものなのか、定かでないといった意味合いなのだろうが、70年の時を経て変化している衣装と殆ど変わらぬ刺青文様との対照に、大いに触発されるものがあった。

 ゴトゴトシネマセレクションと銘打っていることに応えて、各フィルムについてコメントを添えながらの上映だったのが、実に好もしくまた興味深かった。それによって触発される観方、引き出される興味というものがいろいろあったように思う。県立美術館でもセレクション上映をよくやっていることに対し、単に上映したり外部講師による講演やゲストトークをするだけでなく、主催者として発するものがほしいとかねがね思っていたので、まさにこういったコメントがほしかったのだと改めて思った。公立文化施設の事業として行っているのだから、ある種、当然の責務とも言えるように思う。

 今回の9編のセレクションのうち、とりわけ目を惹いたのは、ゴトゴトシネマが“ブルースの誕生”と添えた1968年撮影のコートジボワール、バウレ族の「打楽器の演奏」と、“大地を揺るがすバリトン!”と添えた1979年撮影の西ニューギニア、アイポ族の「男たちの歌「ディト」」だった。我々の社会でなら大道芸という形で披露されるに違いない前者は、一体どういう状況で行われるものだったのだろう。また、日本で言えば、バブル期を目前にした1979年に撮影された後者に映し出されていた男たちの耳朶を裂き伸長していた習俗は、何の証だったのだろうかと気になった。


 ①「打楽器の演奏」(1968年)西アフリカ/象牙海岸 パウレ族
 ②「子どもの踊り」(1964年)中央スーダン/南ワダイ ダンガリート族
 ③「ビャンクウマの若者の踊り「グア」」(1968年)西アフリカ/象牙海岸 ダン族
 ④「アルアナ仮面舞踊」(1959年)ブラジル/アラグアイア地方 ヤバヘ族
 ⑤「コクリト仮面舞踊」(1959年)ブラジル/トカンティンス地方 クラホ族
 ⑥「丸太を持っての儀礼的駅伝競走」(1949年)ブラジル/トカンティンス地方 クラホ族
 ⑦「バリ音楽のリズム型」(1973年)バリ島/カランガセム地区
 ⑧「クラウバウフ行進の巨大な仮面」(1966年)欧州中部/チロル
 ⑨「男たちの歌「ディト」」(1979年)西ニューギニア/中央高地 アイポ族


 
by ヤマ

'17.10. 8. 喫茶メフィストフェレス2Fホール



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>