『ザ・コンサルタント』(The Accountant)
監督 ギャヴィン・オコナー

ヤマのMixi日記 2017年02月06日00:48

 まぁ、言ってみれば、座頭市のようなものかもしれないが、クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)のキャラと生育の設定をよく思い付いたものだ。というか、思いつきはしても実際に拵えてみるには至らなさそうなのだが、思いの外、よく練られていたなぁと感心してしまった。

 トータルには実に荒唐無稽なのだが、細部が意外ときっちり詰められているから奇妙な納得感があって心地よい。贅沢なのやら質素なのやら分からないウルフの隠れ家の風情が実に良かった。

 結局、キング局長(J・K・シモンズ)は会計士の正体をよくご存じだったようだし、犯人は6100万ドルをすぐに返すことができたってことからも、捜査と不正の両方ともが自作自演だったってことのようだが、じゃあ何のためにって考えると、キング局長は、見込んだメディナ分析官(シンシア・アダイ=ロビンソン)が後継者の任に堪えるかどうかを見極めるための試験問題として仕掛けたってことなんだろうな。

 それにしても、繰り返される回想場面を観ながら、あの弟はどうしたのだろうと思っていたら、なんとまぁ、唖然(笑)。おまけに謎の女性助手の正体が判明したときには、会計士ならぬモハメド・アリの心臓というか胸の部分のピースが見つかったときのように、あまりにも鮮やかな嵌まり方に、すっかりしてやられた。しかし、不思議と反則とも思わせず興醒めもさせない造りは天晴れだ。他で同じようなことを真似したら、きっと失敗するに違いない荒業のてんこ盛りが、なぜかアリのジグソーのごとくピタピタピタっと嵌まっていったような快感があった。

 近頃の日本映画のように、何もかもを台詞やショットでくどくどと説明してしまわないところが粋だ。実は最も気に入ったのは、その部分だったのかもしれない。


コメント談義:2017年02月06日 12:35~2017年02月13日 23:45

(つぶ。さん)
 助手してたんですね! 誰からの電話かなあと思ってました。
 「机に足をのせないで」【うれしい顔】。


ヤマ(管理人)
◎ようこそ、つぶ。さん

 テーブルのうえで無地のジグソーパズルを組んでいた幼いウルフが、1個ピースが見つからず完成できなくてパニックを起こしてましたよね。あのときに在り処を教えてくれた少女のおかげで完成させたパズルの絵柄が、不屈の伝説的ボクサーのアリであることをガラステーブルの下から透けて見えるように映してました。

 そのジグソーパズルが長じた彼女の部屋に掛けてあって、喋れない彼女がICT端末を操作して、かつてのウルフを偲ばせる少年に「チャットしようか」と話しかけましたからねー。ウルフの隠れ家にいたキング局長に「足をのせないで」と掛けてきた、ときおりウルフに対しても対等な立場で助言や指示を出す助手は、彼女をおいて他にはないと思いました。

 そしたら、ウルフと同じ高機能自閉症らしい彼女は、その施設を開いた精神科医の娘だということが判り、“会計士”がなぜ命を危険に晒してまでして資金洗浄して得た報酬をせっせと施設に寄付するのか分からないと言っていたメディナ分析官の言葉の意味が、アリの心臓部分のピースのようにピタッと嵌ってパズルが完成したのでした(笑)。


(つぶ。さん)
 もいっかい見たくなりますー (*゚▽゚*)


ヤマ(管理人)
 クリスチャン・ウルフ≒モハメド・アリ、いや、アリの如きウルフってことかと思って、“不屈の伝説的ボクサー”と書いてみた(笑)。

 作り手がジグソーパズルのような映画を企図していたのは間違いないと思うよ。もっぺん観て!観て! でもって、僕が間違ってたら、教えてくださいね。


(TAKUMIさん)
 いろいろなことがラストまできてピッタリ嵌って、本当にすっきりしました。やっぱりあの助手のオチが1番「やられた~」って思い、ヤマさんおっしゃる「粋」という言葉がとてもしっくりくる映画でした。細かい所はかなり見落としている部分もありましたが、相変わらず冴えているヤマさんの解説を読み理解も深まりました。

 私的には、最近興味を持って調べていたアスペルガー症候群の特徴がウルフの行動に全て盛り込まれていてその辺が面白かったです。続編も見たいな~と思いましたよ。

 ヤマさん、一つ質問していいですか? 運転席から入れないように車をつけられて、助手席から乗ってウルフの弟に殴られた男は誰ですか? 殺されましたっけ?
と、主人が聞いていますので、教えてください。


ヤマ(管理人)
◎ようこそ、TAKUMIさん、

 ありがとうございます。粋な映画でしたよね~。冴えてますか? 恐れ入ります。

 ちょうどアスペルガー症候群について調べておいでで、それで違和感がなく、むしろすべて盛り込まれていたとすれば、非常に丁寧な映画作りのされた作品だったようですね。本作を上回る続編を作るのは大変でしょうが、やっぱり気になりますよね、続編。分析官から捜査官になったメディナとの関係は、どのようになっていくでしょうね。

 御主人の質問の件は、すみません、覚えてません。


(TAKUMIさん)
 私も覚えてないんですよ! でも、主人がとてもしつこいので(笑)。失礼しました。


ヤマ(管理人)
 とんでもありません。ご丁寧に、恐れ入ります。





推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-2aed.html
編集採録 by ヤマ

'17. 2. 5. TOHOシネマズ1



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