| ||||||||||
自主制作映画上映会“the 映画野郎”
| ||||||||||
愛媛と高知の自主制作映画の合同上映会というちょっと珍しいイベントに出向いた。『あずさと茂』は高知大学映画制作サークル21.によるもので、『ラスボス』は社会人サークルのFILMGARAGEによる作品だ。『光がここにないだけ』と『けんけんぱ』は、愛媛のハンサムレーベルによるものらしい。この順番で観たのだが、「何を撮りたいのか」と「何(どこ)を見せたいのか」についての作り手の思いが垣間見え、いろいろと触発されるなかなか興味深いイベントだった。ちょうど観た順に従って面白さが増していたように思う。 自主制作映画といえば、七年前に“桃まつりpresents 真夜中の宴”を観たときの映画日誌に「自主制作の枠組みのもたらす端的な特徴は、低予算と極小スタッフという物理的な不自由さの代わりに付与されている精神的な自由度の高さで、ある意味で何をやっても咎められない“絶対的自由”だというイメージが僕のなかにはある」と記しているが、そういう意味では、今回の作品群も妙にある種のまとまりを指向していて「伸びやかで自由闊達なエネルギーとアイデアの放射」には乏しかった気がする。 そんななかで作り手の「何を撮りたいのか」が最も率直に伝わってくるように感じたのは、高校生スパイの作戦行動を描いた『ラスボス』だった。ただ「何(どこ)を見せたいのか」という点では、ストーリーもアクションも少々貧弱で、どっちつかずのコミカルでお茶を濁したようなところがあったような気がするが、最も楽しそうな感じがあった。愛媛の2作品は「何(どこ)を見せたいのか」ということについての意識が明確で、なかなかまとまりがよかったように思う。 シーンの繋がりに安定感のあった『光がここにないだけ』は、フォトジェニックな風景カットが少々無駄に多いような気もした。実体験をもとに制作したとのチラシコメントから、それが三年前からの妻の裏切りの宣告のほうか百円拾いのほうか気になったが、上映後の監督の話では、離婚のほうではないとのことだった。それなら、何だか取って付けたような離婚話のようにも思ったが、リストラやバイトでの出直しも含め「人生なにが起こるか分らない」転機に隣り合わせていて、落とすことも拾うことも想定外のなかで起こると言いたかったのだろう。「千円札に込めていた嫌味というか恨み言が実体験のほうでなくて良かったね」と監督の話を聞きながら思った。 そのヤマウチ監督が助監督に入っていた『けんけんぱ』は、妙にヘンというか何とも不思議なキャラクターの造形になかなか妙味があって、醸し出している雰囲気というか空気感が個性的で面白かった。人間は推理の生き物ではなく妄想の生き物だと改めて思う。最後に付けていた諜報員にまつわる“すっとぼけた落ち”が洒落ていて気に入った。 愛媛の2作品は、それぞれ愛媛ヌーベルバーグ2014,2015のグランプリ作品なのだそうだが、愛媛ヌーベルバーグというのは、いつから始まっていて、いったい何作品ぐらいのエントリーがあるものなのだろうか。自主制作映画の盛んな地域だという認識が特にはなかったので、いささか驚いた。 | ||||||||||
by ヤマ '16. 5. 8. 蛸蔵 | ||||||||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
|