『イコライザー』(The Equalizer)
監督 アントワーン・フークア


 王道のハリウッド・エンタの爽快さが感じられる作品だ。今やオーソドックスなヒーローを演じるスターはめっきり減っているのだが、そのなかでも、例えばヒュー・ジャックマンやブラッド・ピット、ダニエル・クレイグ、マット・デイモンなどには愛嬌があるから、こういうクラシカルな“朴念仁ヒーロー”を演じられるのは、もうデンゼル・ワシントンしかいないように思えるくらい実に嵌り役だった。

 メル・ギブソンが嘗て“リーサル・ウェポン”との異名をとる刑事を演じたが、デンゼルの演じるロバート・マッコールこそ、真にリーサル・ウェポンだ。いや全く笑ってしまうほどに強くてタフなのだが、スティーヴン・セガールと違って失笑させないところが凄い。やっていることは殆ど同じだったりするのに、立派なものだ。敵役のテディ(マートン・ソーカス)がまた、いい。こういう作品は、強烈な敵役のキャラ立ちがあってこそなので、マートン・ソーカスの果たした役割は、とても大きいように思う。

 そして、お約束とも言えるラルフィ(ジョニー・スカーティス)やテリー(クロエ・グレース・モレッツ)の配置と役回りも、実にクラシカルで申し分ない。クロエ・グレース・モレッツの上唇が、相変わらずというか実にいい感じだ。また、きっちり本国の大ボスまで片を付けていたことにも感心した。コロンビア映画だから、出てくるノート型パソコンが今なお「VAIO」であることはともかく、ハリウッド・エンタたるもの須らく、かくあってほしいものだ。

 CIAを引退するどころか存在自体をこの世から消し、別人となってひっそりと生きてきたはずの元凄腕エージェントが、昔取った杵柄の今なお錆び衰えぬ切れ味に、妻の死が眠らせ葬っていたはずのものを目覚めさせてしまった顛末は、観方によってはブレイブ・ワンのエリカを思わせる部分も感じたが、王道のハリウッド・エンタに対して、そのような野暮は言うまいとも思った。




推薦テクスト:「映画通信」より
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20141107
推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-a92d.html
by ヤマ

'14.10.26. TOHOシネマズ9



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