『乱れ雲』['67]
監督 成瀬己喜男


ヤマのMixi日記 2013年11月17日21:09

 七年前の生誕100年記念の上映会のときに観逃していたので、今回の独立行政法人国立美術館による優秀映画鑑賞推進事業での四本立てのなかから成瀬の遺作となった本作だけを観てきた。

 「バハハ~イ」なる流行り言葉は当時9歳だった僕には同時代のものだが、その時点での未亡人と夫を死なせた男の恋愛模様を描いた部分は、当然ながら、僕にとっての同時代部分ではない。

 あの当時ですら、交通事故の過失責任すら問われない無罪となった三島(加山雄三)が妊娠三か月で未亡人となった由美子(司葉子)に月々1万5千円を慰謝料として支払う約定を結んだことを「奇特なことだ」と由美子の姉・文子(草笛光子)の夫(藤木悠)が零していたが、その支払いを一年余りで由美子が辞退するに至ることで大きく展開し始める物語などというのは、今どきならば、もう成立し得ないのかもしれないなどと思った。

 序盤に出て来ただけだったが、浜美枝が何だかとても魅力的だったなぁ。

 旅館の女将で未亡人の四戸勝子(森光子)と林田(加東大介)の不倫関係の在り様には、今どきの不倫には、すっかり無くなっているような昭和の香りを感じた。



コメント

2013年11月18日 12:01
(アリエルさん)
 2回くらい、昔見てます。ラスト、三島(加山雄三)が由美子(司葉子)を慕い、追いかけたか? 心中未遂だった? 記憶が曖昧です。
 当時、無罪で1万5千円、高いです。その頃から、三島は由美子を好きだった?(^o^)のかな~


2013年11月19日 00:39
ヤマ(管理人)
 ◎ようこそ、アリエルさん、

 最後に追いかけた形になったのは由美子のほうでした。別に彼らが心中したわけではありませんが、映画の中途に、十和田湖での心中遺体の引き上げエピソードが出てきます。

 罪責はないとはいえ、夫を自動車事故で死なせた男への想いに葛藤するなかで、三島がパキスタンに旅立つ前に、彼の想いに応え、自らの想いも解放して叶えようと、キスより先に進むべく宿を取ったときに、運命のもたらした試練かのように、山道での交通事故現場に遭遇したうえ、ちょうど二人が泊まった宿で車回しをするとともに、救急車に妻が乗り合わせる形で怪我人が搬送されるのを目撃して、由美子が変心し、二人は想いを遂げることが出来なくなるという顛末でした。

 当時の1万円が今のいくらに相当するかは一概には言えませんが、日本銀行の解説によれば、2~4倍ということらしいので、月3万円~6万円という計算になりそうです。約定では10年でしたから、180万円の2~4倍で、360万円~720万円です。その取り決めをした時点から、三島が未亡人に惹かれている風情はありましたよね。でも、下心なんていう生々しさではなく、少しでも助力をしたい思いという形に昇華されていたように思います。関わりを持つようになって次第に想いが募っていったという感じでした。

 それにしても、浜美枝の演じた淳子もそうでしたが、これで別れとなると、俄然、女性陣、果敢でしたねー。由美子は、追い返したはずの三島の下宿を訪ねて階段の下から見上げて見つめ、三島から求められた青森への同行を断った淳子は、黙って昼間の明るい部屋のカーテンを閉じあわせ、三島に身を寄せてました。

 でも、どちらの場面もそこから事には至らないで終わっていたのが、今どきならば、もう成立し得ない展開なのかもしれません(笑)。


2013年11月19日 10:32
(アリエルさん)
 詳しく書いて下さり、思い出しました。十和田湖、心中をみるなど、三島役の加山雄三は凛々しい男性として残っています。女性の果敢さ。成瀬映画は好きなものが多いですが、「女性が強い」は、かなりの作品で言えるかもしれないです。

 成瀬は、私生活でも女優と結婚・離婚で、女性に対する思いは複雑だったのでは~。キリッとした女性を上手く描いてますし、逆に、浮き雲のようなタイプの女も、なかなか他の監督では出せない感じを、きちんと撮れている気がします。

 浜美枝、出てましたね~、ヤマさん、お好みですか(^.^)


2013年11月20日 00:34
ヤマ(管理人)
 あの頃の加山雄三は、そういう役が定番だったような印象がありますよね。まぁでも男優はどうでもいいんですよ(笑)。キリッとした女性って、いいですよね~、観てる分には(笑)。

 浜美枝、あまり観る機会に恵まれない女優さんなんですが、むかし親しかった女性と面影が似ているもので、スクリーンで観るたびに、ちょっと特別な思いを誘われるんですよ、実は(たは)。





推薦テクスト:「帳場の山下さん、映画観てたら首が曲っちゃいました」より
http://yamasita-tyouba.sakura.ne.jp/cinemaindex/2005micinemaindex.html#anchor001346
編集採録 by ヤマ

'13.11.17. あたご劇場



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