| |||||
『裏切りのサーカス』(Tinker Tailor Soldier Spy) | |||||
監督 トーマス・アルフレッドソン | |||||
ヤマのMixi日記 2013年03月28日21:10 そーか、“もぐら”はもう一匹いたっていうオチの話か、などと思いながら、KGBのカーラがジム・ブリドー(マーク・ストロング)を生かして帰したことに意外を覚えるだけで、何の手も打ってなかったジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)が最も不審というか、妙に今いちピンと来ない物語だったなぁ、雰囲気はあったけど…。 いきなり2発の銃声で3人の人間が倒れたから、何かあるとは思っていたのだが、赤ん坊を抱いたまま巻き添えを食った母親の死亡は間違いないとして、生き残っていたジムが銃弾も受けていたのなら、あの亡命希望将軍の繋ぎ役は、なぜ倒れる必要があったのだろう? 映画の観客の目を欺くためだけの場面なの? それって、なんか安過ぎないか?(苦笑) まさか、びっくりして腰を抜かしてひっくり返ったんだってなことじゃなかろうね?(笑) どうやらジムがジョージに語った話は、全部嘘っぱちだったっていうことのようだから、それなら、あのブダペストでの銃撃場面を客観カメラのように映し出すのは反則だよな。 また、優秀なジョージの弱点は妻アンだとカーラから聞いていたから、彼の目を曇らせるためにアンの愛人になっていたのだという“もぐら”の告白も意味不明だ。そもそもジョージって、まぁ命令は受けているから調査はするのだけれど、何も手を打たないノーガード戦法だから、リッキー・ター(トム・ハーディ)も、ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)も、好き勝手に動いている感じだった。とても腕利きには見えない。 おまけにアンは何だかカーラともかつて何かがあったような風情で、ジョージには得体の知れない倒錯感が付きまとっているような味付けがされていたように思う。よもや妻の不貞をスパイすることで捩れた刺激を得ていた変態男というのではあるまいな(笑)。 イリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)は、ちょいと魅力的だったが、窓越しに覗き見るリッキーの気を引く暴行を受ける顛末が意味不明だった。 二重スパイというのが、カーラの仕掛けた撹乱なのか本ネタなのかってとこが、物語の見せ場というか肝心の点だったのではないかと思うが、映画作品では、やたら懐旧的で且つ、同性愛も含めたスパイの色恋ものに味付けられているところが、妙にヘンな感じだった。そう言えば、ジョージと“コントロール”(ジョン・ハート)の関係も、かなり倒錯的だよなぁ〜(笑)。 コメント 2013年03月28日 22:50 (ケイケイさん) B下とは意外だなぁ。 私は昨年、大変気に入った作品です。事前に相関図を頭に入れて観たので、結構わかりやすかったんですが、ヤマさんはどうされました? もうだいぶ前なので、見直さないとお話出来ませんが、 >彼の目を曇らせるためにアンの愛人になっていたのだという告白も意味不明だ。 妻が不倫したら、日常にその気配が出る→ジョージ不信に思う→結果仕事に支障が出る、と言う計算では? >何も手を打たないノーガード戦法だから、リッキー(トム・ハーディ)も、ピーター(ベネディクト・カンバーバッチ)も、好き勝手に動いている感じだった。 結構指示出してませんでしたっけ?この辺は記憶が曖昧です。 >イリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)は、ちょいと魅力的だったが、窓越しに覗き見るリッキーの気を引く暴行を受ける顛末が意味不明だった。 これは単に、愛のない相手が恋人?で、DV受けてたんじゃないですかね? >やたら懐旧的で且つ、同性愛も含めたスパイの色恋ものに味付けられているところが、妙にヘンな感じだった。 そうそう。同性愛は原作にはないんですって。なので監督がゲイで、スパイの身を切る辛さを、こちらで表現したのかな?と思いました。 2013年03月29日 23:24 ヤマ(管理人) ◎ようこそ、ケイケイさん。 意外でしたか?(笑) 日記に“反則”と書いた部分が気に障ったんです(たは)。 ジョージの妻を寝盗っていた“もぐら”の計算はそうなんでしょうけど、そんなことしたら、むしろ目を付けられるとは考えないんですかね? 何だか随分と一方的な思い込み計算だという気がしたんですよ。実は本当に愛していたんだということのほうがまだしもです。スパイの人間味を出そうとした物語としては、そう向かうべきでは? 指示出しの度合いは、僕的には具体のものが殆ど何も残ってないんで、“何も手を打たない”という印象になっているんでしょうね。もっぱら聴取活動に徹しているような気がしました。 イリーナと暴行男って、恋人関係だったんですか? 個人的な関係を持っていることを装った工作員同士なのだろうと思ってました。マジでDVを受けていたのか、ふーむ…。ますますもって何もかも“スパイの色恋もの”味付けってことなんですねー。 原作にはない同性愛色を込めたとしたら、ますますもって、スパイをアクションものとして描くのでも、サスペンスものとして描くのでもなく、特異な色恋ものとして描こうとしてたんだなって得心がいきました(礼)。でも、成功しているようには思えないなぁ、その意匠って。 2013年03月30日 09:18 (TAOさん) やや、私もこの映画がとても好きだったので、ヤマさんの酷評にタジタジ・・・(笑) >妙に今いちピンと来ない物語だったなぁ、雰囲気はあったけど…。 そう、雰囲気が気に入ったんですよねえ。 ケイケイ2013年03月30日 10:06 (ケイケイさん) >マジでDVを受けていたのか、ふーむ…。 この辺の記憶は曖昧ですけど、女性が暴行受けていた、それも美人。 その人に一目惚れしていたら、やっぱり気になったり助けたいと思うものだと、感じたんですが。 トム・ハーディの「全然彼女はタイプじゃないはずなのに」と言う自嘲的な愛のセリフが、とても心に残っているので、確かにヤマさんご指摘の >ますますもって何もかも“スパイの色恋もの”味付けってことなんですねー。 と言うのは、当たっているような気がしてきた(笑)。 この作品、女性に人気があるんですよ。渋い英国俳優大集合だったので、そのせいかな?と思っていましたが、その側面で女性は気に入ったのかも。でも親愛の気持ちを込めて(に感じた)、ソ連の国家を歌うスパイたちは哀愁に満ちてませんでした? このシーンも好きです。 2013年03月30日 12:57 ヤマ(管理人) ◎ようこそ、TAOさん、 タジタジですか、どうも失礼しました(笑)。そちらの日記には「濃密で緊迫感があり、ものがなしく、情感たっぷり!」とお書きですね。うん、その雰囲気は、とっても出ていたように思います。チラシの“一度目、あなたを欺く。二度目、真実が見える。”なんて惹句に乗せられて、謎解きもの的に臨んだ僕が失敗でした(たは)。 あくまで情緒、雰囲気を楽しむべき作品なんですよね。損したなー(反省)。 「スマイリーは回想に耽るばかりでちっとも活動しているようには見えない」と書いておいでのところにはニンマリさせていただきましたが、それでも「やたら人間くさい部分がなんともわびしくてたまらん」と共感的でしたねー(羨)。 ◎ようこそ、ケイケイさん、 日記、拝読しました。 “1800円どころか、2000円で観ても値打ちがある”との作品を酷評しちまって…(詫)。 >事前に相関図を頭に入れて観たので、結構わかりやすかったんですが、ヤマさんはどうされました? 相関図は見ないままに観賞しましたが、人物関係はそんなに分りにくくはなかったです。ただ、あまりに意味不明な言動が多く、そっちのほうが分かりにくかったな(たは)。 ケイケイさんの映画日記には >「スパイ」も、血の通った人間で、観客である私たちと違いはないのだと理解出来ます。違うのは常に死と隣合せであると言う事。その緊張感は終始持続されて描かれます。 とお書きで、TAOさんがお書きの“やたら人間くさい部分”とも通じ、そこんとこを味わうべき作品だったということなんでしょうねー。 >>マジでDVを受けていたのか、ふーむ…。 >この辺の記憶は曖昧ですけど、女性が暴行受けていた、それも美人。 暴行を受けていたのは間違いありません。それも拙日記に「窓越しに覗き見るリッキーの気を引く暴行を受ける顛末」と書いたように、いかにもこれみよがしだったので、マジDVではなく、罠っぽく感じました。でも、罠にしては余りにもあざといんですよねー。暴行の前にはカーテン全開で騎乗位で女に腰を使わせている様子を覗かせてて、その部屋に真っ直ぐイリーナが入ってきて隣室に抜けたのを追ってきての暴行だったように思うのですが、なんじゃいな、それ?って感じで…(笑)。 あまつさえ監視していたはずのリッキーが、それを目撃して訪ねていくなんてのは、彼らがスパイであろうがなかろうが、かなりエキセントリックな感じがしたなぁ。 >この作品、女性に人気があるんですよ。 そのようですね。上に書いておいでのようにTAOさんもそうですし、高知のお茶屋さんも「ちょー面白い!!!」って書いてるし。みなさん、共通しておいでなのは「何に感動したかというと、スパイも人間だということ」 やっぱり謎解きもの的に臨んだ僕の失敗のようです(苦笑)。 >渋い英国俳優大集合だったので、そのせいかな?と思っていましたが、その側面で女性は気に入ったのかも。 これは大いにあろうかと思います。でも、女性だけが支持してるわけじゃないし、米国アカデミーでも脚色賞、本国アカデミーに至っては11部門ノミネートだったらしいし、ケチ付けているほうがむしろ少数派なんじゃないでしょうか(たは)。 >でも親愛の気持ちを込めて(に感じた)、ソ連の国家を歌うスパイたちは哀愁に満ちてませんでした? ええ、それは僕も感じましたよ。でもって、ふと思ったのが政治家連中のことでした。 時にえげつないほどの確執で権力争いをするし、TV番組の政治討論では対立するけど、プライヴェートでは、政治家同士としての親愛のほうが一般国民に馳せる思いよりも、遥かに強いような気がかねがねしています。ちょうどスパイたちが、自国の権力者達よりも敵国の“同じ”スパイに心情的にはコミットしているように見えるのと、同じことなんだろうなと思いました。 | |||||
編集採録 by ヤマ '13. 3.28. あたご劇場 | |||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
|