『ポチの告白』
監督 高橋玄

 警察組織がいかに犯罪と不祥事を生み出す体質を持っているかを、実直な警察官が警察犯罪の主役を担っていく過程とその顛末まで描いた気骨ある力作で、次第に彼が汚れていくプロセスの細部になかなかのリアリティが感じられる作品だったよう思う。たが、最も興味深くインパクトがあったのは、尋常ならざる鳴り物と共に上映された自主上映会だっただけに、イベント色のほうが強くなっていたところだった。

 高橋監督のみならず、原案協力のジャーナリスト寺澤有、現職警察官として愛媛県警の裏金問題を告発したことで懲罰異動になったと注目されたのち定年退職をしている仙波敏郎元巡査部長、元大阪高裁判事の生田暉雄弁護士が揃って登壇し、映画よりも現実はもっと酷いと証言するのだから、強烈極まりない。

 加えて、壇上から、ここには警察官が必ず来ているはずだから、勇気を持って手を挙げてごらんなさいと挑発する仙波氏の声に幾人もの観客が場内を見回し始めたし、広島県から駆けつけた弁護士だとの客席からの発言者が現在取り組んでいる警察犯罪の話をしたりもする。主催者によれば、この上映会に関心を寄せたイタリアのTV局が取材に来ているとの事で、確かに大きめのカメラを担いだ外国人が会場内にいた。

 それもこれも、単に警察犯罪に材を取った映画の上映会というだけではなく、最高裁まで争った末、判決が確定した高知白バイ事件で犯人とされ、先月満期出所となって出てきたばかりの元スクールバス運転手が登壇し、本事件が警察のでっち上げ事件であることを以って再審請求をしようとしているという現場ネタが揃っていたからなのだろう。

 高橋監督によれば、完成から公開まで三年遅れたが、それはお蔵入りにされていたというよりも、フィルムが外国のほうを先に回っていたからだとのことだった。成る程、映画のなかでも、日本の報道陣に黙殺されることから、(社)日本外国特派員協会で記者会見を行なう場面があったし、作り手がそのように運んできているのもありそうなことのように思った。

 この作品で、交番勤務から刑事を経て五年のうちに組織犯罪対策課長になっていたタケハチを演じた菅田俊は、本作が彼の代表作になるのは間違いないと思えるような熱演だった。また、タケハチを抜擢するとともに刑事課長から署長にまで昇進していた三枝刑事課長に、いかにもの品性の卑しさを漂わせていた出光元の好演も、なかなか印象深かった。

 上映会の翌日に会った主催者から聞いた話では、今回の高知での上映会に関連して高橋監督がブログに書いた高知白バイ事件にまつわることがアクセスの急上昇を招いて大変なことになっているとのことだった。

by ヤマ

'10. 3.13. あたご劇場



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