『イーグル・アイ』(Eagle Eye)
監督 D.J.カルーソー


ヤマのMixi日記 2008年10月19日22:55

 またまた何なんだコレ?ってな展開で始まるアクションものだったが、実は!ってなスーパーヒーローものや夢オチになんぞしていないところがリアリズムとは違う地平にある娯楽作品として潔く、加えて、思い掛けない志のようなものが窺え、好感を持った。世界の基軸通貨の地位を得、東西冷戦に勝ち残り、国連なんぞ歯牙にも掛けないお山の大将気取りだったアメリカも、さすがに迷いと悩みが濃くなってきているようだ。まぁ、それも当然の状況ではあるけど。それにしても、さすがドリームワークス、金に飽かせて派手な作りだったなー。
 しかし、公開の順番が違ってやしないか?ってな気になったのが、昨日観た『ゲット・スマート』との公開時期の後先だ。パロディ系の映画のほうで先に観たばかりのネタを直後にシリアス系の作品で観ると、笑うわけにもいかない(苦笑)。


*「チネチッタ高知」:お茶屋さんとの往復書簡編集採録
2008年10月19日 23:37

(お茶屋さん)
 双子のニイちゃんは・・・・・エドワード・ノートンより、ジョン・キューザックに似ていると帰りの車で気がつきました。←これ、言わんと寝られない(笑)。

(ヤマ)
 寝られないほどのことか?って気もするけど(笑)、映画狂というのは、そうしたもんだ。大物感からの遠さ加減において、よりキューザックっていうのは、同感だね。そういえば、お茶屋さんは、『さよなら。いつかわかること』を観てたっけ? 前からファンだと言ってたような気が。

(お茶屋さん)
 残念ながら見てないです。キーザックはファンと言うほどではないけど、見ると可愛いな〜と思います。特におちょぼ口とつぶらな瞳。


-------ジェリーの特質とは-------

(ヤマ)
 それはそうと、CPアリアがジェリーを評して、何もかもに勝っていた兄ちゃんにはないジェリーの特質が一つあるって言ってたよね。それって、何だと思う?

(お茶屋さん)
 あれ? 「何もかも異なっている二人に共通のことが一つある」じゃなかったっけ?

(ヤマ)
 うひょ、そうだっけ? 真逆じゃん(笑)。

(お茶屋さん)
 で、そのときは、愛国心とかそんなものかと思ったけど、今は互いへの愛情だろうと思っています。だから、ジェリーも兄ちゃんのためにという気持ちがふつふつと湧いてきたんだろうし、その方が断然私好み(^_^)。

(ヤマ)
 うん。そうだよねー。

(お茶屋さん)
 ついでのことながら、ジェリーが死んで終わったほうが私好み。

(ヤマ)
 あらま(笑)。ま、でも、古典的にはそうなるとこだよね。もっとも随分前から、その約束事は破られるようになっているから、そう古典的とも言えなくなってる気がするけど。

(お茶屋さん)
 ジェリー、可愛かったな〜。レイチェルとは何とかシンドロームで愛が芽生えたみたいだけど、尻に敷かれてうまくいくかもしれないですねー(笑)。あのラストでもいいかな。

(ヤマ)
 尻に敷かれるなら、いいんだ!(笑)

(お茶屋さん)
 そうそう(笑)。
 はて、兄ちゃんに勝るジェリーの特質は何でしょう? ヤマちゃんは何と思っていたの?

(ヤマ)
 最初は、お茶屋さん御指摘の愛情とか優しさだと思ったのね。真逆のくせに(苦笑)。ほら、父親に対してぶつけてた言葉とかあったしね。でも、そう言えば、兄貴はいつも僕を助けてくれてたとか言ってたなぁって。
 で、考えて思い直したのが、しぶとさと運の強さみたいなことかな。彼は、兄ちゃんと比べると見劣りがしたのかもしれないけど、そういうことでの落伍者ではなかったよね。おそらくは父親から、兄との比較のなかでダメ出しされ続けてたであろうに、スタンフォード大学にまで行ってたようだし、なかなかしぶといよね(笑)。その大学を中退して、コピー屋勤めになって、貧乏ではあったかもしれないけど。
 で、エリート街道を歩んでいても、アリアにあっさり始末されちゃう兄貴と違って、あれだけ危ない橋を渡りながら生き延び続け、アリアの裏をかき、出し抜くしぶとさと幸運は、それを見込んだアリア以上のものだったのかなってね(笑)。

(お茶屋さん)
 なるほどねぇ。主人公ならではのしぶとさと幸運でもありますね。

(ヤマ)
 だから、彼が主人公に選ばれたとも言えるけど、確かに主人公だからとも言えるよね(笑)。

(お茶屋さん)
 もともと出来は悪くないのに(←本人も出来が悪いと思い込んでいたみたいですね)出来の良すぎる兄ちゃんと比べられてつらかったろうから、そういうのを耐え、自信のないまま世界中を放浪して獲得したしぶとさかもしれませんね。あの父ちゃんに潰されず自立できてよかったですよ。そんなに悪い親ではないと思うけど。

(ヤマ)
 僕もそう思う。でも、客観的にはそうであっても、子供の主観においては必ずしもそれがそうはならないとこが親子関係の難しさだったりするよね。


-------この映画の感心すべき点-------

(ヤマ)
 あと、観終わったとき、けっこう感心してたみたいだけど、どのへんが響いてきたの?

(お茶屋さん)
 やっぱり、合衆国憲法を法を守るアリアですね。コンピューターも女性は真面目やなあ(笑)。って、

(ヤマ)
 合衆国憲法に最も忠実なればこそ、アメリカに危機をもたらしている張本人を攻撃するのが、憲法を守ることになるわけだよね。憲法が守ろうとしているのは、国であって権力者じゃないってとこなわけだね。

(お茶屋さん)
 コンピューターを褒めるっていうのは半分本気の冗談で、この映画で一番気に入っているところは、ブッシュ大統領を始めとするアメリカの現政権の幹部をストレートに批判しているところです。すんごい気持ちよかった(笑)。

(ヤマ)
 うん。僕も快哉をあげたよ(笑)。やるじゃないかって。

(お茶屋さん)
 いきすぎた監視社会に疑問を呈しているのより、ずっと響いてきましたよ。

(ヤマ)
 ここんとこは、主題的な部分じゃなくて、手段的な扱いだったからね。特にテクノロジーによる監視社会として描かれていたわけだけど、手段として巧みに使われるテクノロジー社会の部分が前に出ていた気がする。もっともテクノロジーが巧み使われるから、付随的にそういうメッセージを帯びてくるのは必然でもあるわけだけどね。


-------映画に込められていた志とは-------

(お茶屋さん)
 ヤマちゃんが感じた「志」はどんなとこ?

(ヤマ)
 あのテクノロジーの水準からしても、誤爆は絶対に誤爆ではないと明確に主張しているところと、合衆国憲法に忠実なるアリアの行動様式が“目の前の目的のためには手段を選ばない、犠牲を厭わない”という点でも、そのまま例の“誤爆”にあった極めて合衆国的なものを容赦なく表していた部分だねー。アリアは、これこそがアメリカの精神の体現というわけだもの。

(お茶屋さん)
 現実社会の誤爆も誤爆ではなくて、そこにテロリストがいる又はそこが拠点であると判断して狙い撃ちしているとこの映画が主張しているという訳ですか?

(ヤマ)
 はい。

(お茶屋さん)
 一般市民の可能性も捨てきれないまま狙い撃ちしていると。

(ヤマ)
 僕は、そう言っていると受け止めたよ。

(お茶屋さん)
 私の頭の中では、B29が焼夷弾をばらまく程度のテクノロジーから一歩も進んでないので、そりゃ、意図しないところへ落っこちることもあるわなと思っていました(^_^;。認識を改めますわ。

(ヤマ)
 事実がどうなのかは、僕には断定できないけどね。

(お茶屋さん)
 合衆国憲法の「人民のための政府でなければ転覆させよ」を守るため、要人暗殺という暴力に走るようインプットされているのは、アメリカ(映画)らしいですね。

(ヤマ)
 それが、アメリカン・ウェイだもんねー。
 でもって、この映画が興味深いのは、そのアリアの実力行使の仕方が単に暴力的であるばかりか、目的達成(成果獲得)のためには手段を選ばないってとこで、ジェリーにしてもレイチェルにしても、是非もなく巻き込まれるし、アリアは監視カメラシステムやら銀行のオンラインシステム、携帯電話・メール、電飾広告塔のシステムにさえ、勝手に侵入し、操作するわけでしょ。その我が物顔ぶりってのも、なんかいかにもって感じでしょ(笑)。

(お茶屋さん)
 一方、アリアが地道に選挙運動をするというコメディにもできそうですが(笑)。

(ヤマ)
 そういうコメディセンスってのも、どこかアメリカ的だね。そっちは、かなり好感度の高い部分だよね。アメリカ的であることの全てがネガティヴでは決してないからねー。


-------再びジェリーの見覚えについて-------

(お茶屋さん)
 ところで、今日の夕刊で見たけど、ジェリーはインディ・ジョーンズの息子だってね!
 あのバイクを乗り回していた。

(ヤマ)
 ほぅ、そーなの。『クリスタル・スカルの王国』は観てないから、よく分かんないけど(たは)。

(お茶屋さん)
 どっかで見た顔と思ったら、エドワード・ノートンやジョン・キューザックに似ているからでなく、ご本人でしたか!って思いました(まだ名前、よう覚えん。)。

(ヤマ)
 最近、本人を見てるんだったら、そりゃ見覚えがあるはずだ!(笑)
編集採録 by ヤマ

'08.10.19. TOHOシネマズ6



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