『死ぬまでにしたい10のこと』をめぐって
神戸美食研究所」:(タンミノワさん)
La Dolce vita」:(グロリアさん)
(TAOさん)
ヤマ(管理人)


  No.4396から(2004/05/04 02:07)

(タンミノワさん)
 ヤマさん、こんばんわ。
 更新されてた『死ぬまでにしたい10のこと』って、映画的にはちょっと不足が多いんですけど、個人的には割とナットクできる映画でした。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、タンミノワさん。
 あの説明不足を好もしく受け取るか、不満と感じるかは、受け手次第ですね。饒舌に語るのが似つかわしいことではありませんし、説明過多によって損なわれるものが多々生じると思われる一方で、もう少し心境を語ってもらいたいと思わずにいられないくらいの惹き付けられ方をするキャラクターでしたから。

(タンミノワさん)
 うむ、なるほど。確かに饒舌すぎると効果半減ってケース多いですよね。そこまで語らんでええ!こっちはアホとちゃうで!と言いたくなるというか。まあ、あまり説明不足でも「?」感が残ってしまうので、そのへんの余韻の残し方にワザが光るわけですが。

ヤマ(管理人)
 過ぎたるは猶及ばざるが如しって言葉もありますが、「程々狙って、帯に短し襷に長しって言われてもツライし」で、作り手側からは難題となるものでしょうね。

(タンミノワさん)
 まあこうして終わった後、ああなんじゃないのこうなんじゃと話し合える余地を残してくれるという意味では、説明不足のほうがいいかな、とも思いますが。

ヤマ(管理人)
 あは。そういう効用もありますね(笑)。

ヤマ(管理人)
 受け手からすれば、要は相性って一言で済んじゃいますけどね(笑)。言わば、服のSMLサイズみたいなもんで、それぞれの体型によって、ぴったりサイズって異なっているとしたもんですよ。

(タンミノワさん)
 ヤマさんのレビュー読んで、「おお そうかああ」って、なんかようできた奴やったんや、あやつ(ヒロイン)は・・って見直しましたわ。

ヤマ(管理人)
 これは恐縮です。得心いただけたなら、とっても嬉しいですね。そこんとこ、映画が有無を言わせない形で説明してないのが、観てて気持ちのいいとこでしたよ、僕には。

(タンミノワさん)
 結構いい死にっぷりを見せたところが、彼女の大物なところを(笑)表現してますよね。

ヤマ(管理人)
 そーなんですよ。でも、それだけに知らされぬままに生き残った男は、ぼーっと海を眺めて、そのことに思いを馳せたりしてましたね。

(タンミノワさん)
 置き土産、置き土産。別の見方で言うと、ああして男に追憶されることが彼女の望みの一つでもあったんではないかと。

ヤマ(管理人)
 僕はね、追憶してるというよりも、語らずに逝かれたことを噛みしめているように見えたんですよ。ある意味で、それが次のアンへの割合スムースな移行にも繋がってるような気がしました。
 でも、そういうドンの吹っ切りやすさを仕込むことも含めて、彼女の目論見だったとまでいうのは作為が過ぎる感じで、ドンにはあくまで「最後のプレゼント」としてのみ語らなかったのが、結果的にそういうことに繋がったと観ているんですけどね。


-------三ヶ月余りして-------No.4778 (2004/08/22 13:12)

(グロリアさん)
 ヤマさん、こんにちは。『死ぬまでにしたい10のこと』観ました。久々にやっとヤマさんところに書き込めます(笑)。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、グロリアさん。

(グロリアさん)
 わたしもヤマさん同様、最初、アンが死の宣告にあまりにもタフで取り乱さないことがちょっと疑問でした。

ヤマ(管理人)
 僕は、むしろ「奇異にも不自然にも見えない説得力」をサラ・ポーリーの存在感に覚えて感心してましたよ。

(グロリアさん)
 あの運命の残酷さには、17歳でできちゃった結婚した23歳の女性よりも、32〜3歳で一般的な仕事や恋愛という人生経験を経た女性のほうがいいのでは、と思ったんですが、むしろ人生経験の希薄な23歳のアンだからこそ、突然の死の宣告にあんな反応だったのだろうなと納得したんですよ。

ヤマ(管理人)
 確かに「23歳のアンだからこそ」という面もあるかもしれませんね。

(グロリアさん)
 でも、夫に隠したままってのがわたしにはどうも違和感がありましたねぇ…彼女に逝かれた後の彼の気持ちを考えなさすぎ!

ヤマ(管理人)
 彼女としては、後の彼の気持ちよりも、さなかの彼の気持ちのほうを汲み取ったということなんでしょうね。

(グロリアさん)
 それに夫よりも娘のことばかりというのも…

ヤマ(管理人)
 まだまだ幼かった分、心配と申し訳なさが募ったんでしょう。

(グロリアさん)
 子供のいる人はよく「だんなより子供が大事」とあからさまに言い切って、わたしはそのたび驚きますが、そうなってしまうんでしょうか…

ヤマ(管理人)
 もちろん人にもよるのでしょうが、傾向的には、特に女性のほうにそれが強いような気がしますね。近頃の児童虐待や子殺し事件なんかでは、全く逆ですが。

(グロリアさん)
 夫のドンは「君のためにがんばるよ」と言ってたのに…

ヤマ(管理人)
 男にも妻子の優先度では両者いるように思いますが、男の傾向的な感じがどっちなのかは、掴みかねてますね(笑)。

(グロリアさん)
 あの夫、若くして子持ちになったのに健気でいい夫でしたね〜

ヤマ(管理人)
 「よき母・可愛い妻をしっかりと果たしていた」アンゆえだとも思ったんですよね〜(笑)。

(TAOさん)
 ヤマさん、グロリアさん、こんにちは。以前、タンミノワさんの書き込みやヤマさんの日誌を拝見して、ずっと気になってた『死ぬまでにしたい10のこと』を私もWOWOWで見ました。

ヤマ(管理人)
 おぉ〜、TAOさんも御覧になりましたか。

(TAOさん)
 サラ・ポーリーの存在感は、たいへんなものでしたねえ。

ヤマ(管理人)
 ホントにね。

(TAOさん)
 『スウィート・ヒア・アフター』でも不気味なほどに巧い子役で、末恐ろしい奴と思ってましたが。

ヤマ(管理人)
 目が、何かとても印象深かったように思います。

(TAOさん)
 アンはきっと子供の頃から取り乱さない子供だったんでしょう。不甲斐ない夫と結婚したことを後悔し続ける母親を見て、自分はぜったいにそうなるまいと固く決めたのではないかな。

ヤマ(管理人)
 これは、とってもありそうな線ですね(流石)。

(TAOさん)
 あの聡明さであれば、将来の夢や可能性も多々あったはずなのに、早すぎる妊娠も、子育ても、すべて我が運命として受け入れ、気難しい母とやりあうこともなく、夫にも子供にも八つ当たりせず、いっさいの愚痴をこぼさずに生きてきたわけで、

ヤマ(管理人)
 そうなんです。「気丈な姿が奇異にも不自然にも見えない説得力」なんてのは、一朝一夕で身に着くはずもないことで、またそれを演技者として体現するのも生半可ではないわけで、やっぱ両方とも大したもんです。

(TAOさん)
 あんなにエゴを出さずに生きてたら、そりゃガンにもなるだろう、と思いましたよ。

ヤマ(管理人)
 そう言っちゃ、ちょっと酷なんですが(笑)、でも、その哀れっぽさ切なさがあるから、断固「有閑マダムの気晴らしとは根本的に異なるものだ」との思いが、観ている側に湧いてくるんですよね。

(TAOさん)
 良き母良き妻良き娘としての“My Life Without Me”を、最期に少しだけ逸脱したことで、私は大いに安心しました。

ヤマ(管理人)
 「気丈に頑張った彼女への御褒美として悪くはないな」と思えるくらい、彼女は「ジョブに追われて“自分のない人生”」を生き抜いてきてたんですものね。

(TAOさん)
 『八月のクリスマス』(また出ました!)の主人公が恋人に死を隠して死んでいくのは、かっこつけすぎ!とムッとした私ですが、

ヤマ(管理人)
 あれはナルシズムの入った演出でしたね、確かに(笑)。でも、僕にとっては許容範囲内だったようで、「一歩間違えば、陳腐以外の何物でもないクサい演出になりかねないのだが、それが不思議としみじみ心に染みて」きたもんでした(笑)。

(TAOさん)
 アンが家族に話さずに逝ったのは、長い間の“My Life Without Me”の習性であり、

ヤマ(管理人)
 なるほど、習性か。これは鋭いご指摘ですね。

(TAOさん)
 恋人に話さなかったのは、自覚的にわがままを自分に許したのであって、うんうんそのくらいはいいよーと許したくなるのでした(笑)。

ヤマ(管理人)
 夫に話さないことにした分、恋人に吐き出すなんてのは、アンにはまるで似合いませんよね。キャラが壊れちゃいます(笑)。

(TAOさん)
 グロリアさんとの「 >>あの夫、若くして子持ちになったのに、健気でいい夫でしたね〜 >よき母・可愛い妻をしっかりと果たしていたアンゆえだとも思ったんですよね〜(笑)。」とのやりとりをみて思ったんですが、いやほんと、アンが母親のようにいつもため息をついているような女だったら、夫も立つ瀬がなかったでしょうねえ。

ヤマ(管理人)
 男は女次第、女は男次第って、昔からそうしたもんでしょう(笑)。

(TAOさん)
 My Life Without Me もしんどいけど、Me ばかりの人生では、良き伴侶は得られませんね。

ヤマ(管理人)
 全く以ってそういうもんですよね。

(TAOさん)
 でも、ときにはエゴも出さないとなー(笑)。

ヤマ(管理人)
 この「塩梅」ってのが、人生の何事においても肝要なんですが、こいつがなかなか難しい(苦笑)。

(タンミノワさん)
 『死ぬまでにしたい10のこと』ですが、私もTAOさまの見方に近い見え方がしましたね〜。私はとにかくアンという女性が大物なんだな〜と思いました。

ヤマ(管理人)
 大物ですよぉ〜。なかなか、ああはいきませんって。

(タンミノワさん)
 「とにかく自分」という自意識の肥大したこの世の中で、自分以外の人間のためだけに時間を費やす人生を、後ろ向きでなく受け入れるというのは、なかなかできない事で、なかなかできない事をやってのけたために、病気になってしまったんじゃないかと私も思ってしまいました。

ヤマ(管理人)
 昔の人というのは、そういう点でやっぱり偉いと思いますねー。

(タンミノワさん)
 家族という倫理からすると、自分が死ぬという事実を話さないのはルール違反に見えますが、

ヤマ(管理人)
 少し淋しい思いはするでしょうが、それ以上に、エライ奴だったな〜って思いのほうが強いんじゃないでしょうかね。

(タンミノワさん)
 あれは、彼女が、夫を愛してはいるんですが事実に耐えうるような人物ではないという冷静な判断をしたからのようにも見えるし、

ヤマ(管理人)
 むろんそうですね。耐えられないだろうという以上に「愛する夫に告げても、何の助力も果たせない無力さへの自覚を促すだけで、彼を苦しめることにしかならないことが分かっていればこそ」だと思います。

(タンミノワさん)
 闘病の余地があるんならまだしも、もう確実にダメとわかっているものを、自分の残された時間を相手にも知らせて絶望の中で家族の時間をすごすのがイヤだったんじゃないかと思いました。

ヤマ(管理人)
 同感ですね。

(タンミノワさん)
 それならば、自分だけが引き受けて、最後まで楽しく、その代わり少しだけ「自分」を実行しようという。

ヤマ(管理人)
 ええ、ええ。

(タンミノワさん)
 人生って最後の最後につじつまが合うのか、合わせるようにするのか、私には、アンが人生の最後に責任を果たしながらも、自分のためのヴァカンスをまっとうしてるように見えて、実に立派だなあと見えました。

ヤマ(管理人)
 それが天の配剤というものでもあったのでしょう。

(タンミノワさん)
 私には到底できません(笑)。きっと、みっともなく死んでいくことでしょう…

ヤマ(管理人)
 大概の人は、そういうもんですよ、多分。でも、その一方で、どこか人間の根本のところにある力の潜在性を少し広がりのある形でも感じさせてくれるような気がしたところが、僕にとって気持ちのいいとこでした。

(グロリアさん)
 アンの役、サラ・ポーリーでなかったらあの説得力はなかったでしょうね。

ヤマ(管理人)
 衆目の一致するところですね。

(グロリアさん)
 自分ちの掲示板でタンミノワさんへのレスにも書いたんですが、アンは夫よりうんと精神的に大人になってしまっていて、夫・ドンは彼女にとって頼れる存在ではなかったんでしょうね。

ヤマ(管理人)
 夫の役割って「頼り」だけでもないんでしょうが、確かにそういう感じはありましたね。

(グロリアさん)
 愛情はあるけど子供が3人いるのと変わりないような感覚だったのかな・・・・

ヤマ(管理人)
 そうそう(苦笑)。大袈裟に言えば、そういう感じだったろうと思います。

(グロリアさん)
 でも、あんなに知性があるアンが17歳でできちゃった結婚、

ヤマ(管理人)
 まぁ、それが若さっていうもんですよ(笑)。僕もそうだったし(苦笑)。

(グロリアさん)
 しかも生活苦しいのに2人目まで作っている無計画さだけは、アンだからこそよけい納得いかないんですけどねぇ…

ヤマ(管理人)
 これも僕も同じで、3人ですからねぇ(たはは)。アンでなく、僕なら納得してもらえます?(笑)

(グロリアさん)
 ヤマさんってば(笑)、理想的なご家庭のくせに!
 あえてこれ以上言いませ〜ん(^.^)

ヤマ(管理人)
 そんなふうに見えますか? ありがとうございます(笑)。あえてこれ以上言いませ〜ん(^.^)
by ヤマ(編集採録)



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