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『X-Men2』(X-Men2) | |||||
監督 ブライアン・シンガー | |||||
前作でも決定的な部分では何ら働きを見せず、結局プロフェッサーXことエグゼビア教授(パトリック・スチュワート)の力で悪のミュータント軍団を阻止したような記憶があって、ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)の主人公たる面目や何処に、という感じだったのだが、今回の作品でも決定的な場面での活躍は、決して彼ではなかった。 今回は、頼みのエグゼビア教授が操られ、ウルヴァリンどころか、男連中は、サイクロップス(ジェームズ・マーズデン)にしても全く頼りにならない。近頃のアクション系の作品は、アニメをも含めて、強くて頼りになるのは、みんな女性キャラだ。この作品でも最もヒロイックにXメンをリードし、最後に身を挺して仲間を救うのは、ジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)だし、教授をマインド・コントロールから覚醒させるのは、ストーム(ハル・ベリー)だ。重要な機密を探り出すのもミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)であったり、ローグ(アンナ・パキン)であったりするわけで、男は総じて形なしである。敵側でも最強の戦士は、女性キャラなのだ。それでも両陣営とも頭目は男性であり、主人公はウルヴァリンであるといったことを含めて、映画は、まこと時代を映す鏡だという気がする。 それにしても、ハル・ベリーは格段に美しくなったような気がする。映画では出番の割に美味しいところをさらっていくが、文句を言わせない存在感がある。ミスティークの哀しみ、ジーンの揺らぎ、ローグの成長も含め、人物像の深みは総て女性キャラにのみあって、ウルヴァリンは、消された記憶を小出しに思い出し狼狽するだけで、実に心許ない。ダムからの脱出経路の誘導に役立ったくらいではなかったろうか。 異なる世界に住む者の共存を打ち出し、原稿棒読みの好戦的なお馬鹿大統領を揶揄する視線を盛り込んだことよりも、この女性像の描出のほうが遥かに印象深い作品だったように思う。 | |||||
by ヤマ '03. 5.23. 東宝1 | |||||
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