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『英二』 | |||||
監督 黒土 三男 | |||||
市の文化祭執行委員を委嘱されてなければ、観にも行かなかった作品だが、案の定というか、何とも冴えない映画であった。こういう幼稚でダサいカッコよさを本気で支持しているのだろうかと情けなくなってくる。観る側を随分となめているというか、高を括っているとしか思えないような、安直で独り善がりのご都合主義が、物語にも場面づくりにも演出にも台詞にも目立ってしようがない。いくら長渕剛のワンマン映画だと割り切っているにしても、あまりにも作り手のテンションというものが伝わってこない。そのくせ変にナルシスティックな凝り方というのが散見されて、見苦しい。 一番の見せ場となるべきラストの襲撃場面の不自然さなど眼を覆いたくなるありさまだった。銃撃戦では、英二に負傷をさせたうえで撃ち返され、殺されることを待っているだけのヤクザたち。いくらそんな相手だとしても、あまりに隙だらけで無防備で、格好ばかりつけたオーバーアクションに何の凄みも迫力もない英二。その間延び加減をぼやかすように使われるスローモーションの陳腐さ。 登場人物たちの関係性の捉え方や描き方にしても、情けないほどに味わいがない。英二と梅花、英二と村川、村川と梅花、といった最も重要な部分がお粗末なのだ。物語のなかで与えられた役割としての人物像ではなく、生きた人間としてのキャラクター造形というものがほとんど感じられなかった。ちょっと良かったのは、英二と空手使いの若衆の男の部分くらいだ。英二と松次郎、英二とあずさ、英二と常吉が、まあ何とかといったところ。しかし、最も重要な人物たちの部分がお粗末だとやっぱりお話にならない。 | |||||
by ヤマ '99. 5. 9. 高知東映 | |||||
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