『共犯者』
監督 きうち かずひろ


 第51回高知市文化祭執行委員として参加映画の鑑賞をした最初の作品である。思いの外、シャープで切れ味よく緊張感の持続するなかなかの作品であった。編集の上手さが印象深い。エンド・クレジットの際に映し出されていた花火のシーンなどは、なかなかいい場面なのだが、本篇に取り込んでしまうと、情緒的な緩みが作品の基調を乱したかもしれない。それを潔くカットして作品全体の基調を引き締めたのは立派だ。最も大事にすべきハードボイルドなトーンを貫き通すことで、スタイリッシュなカッコよさを表現できているように思う。
 最初のナレーションが小泉今日子の回想で始まることもあって、てっきり竹中直人も内田祐也もみんな死んでしまって、彼女だけが一億円とともに残されるのだろうと高を括っていたら、実に呆気なく、さらりと殺されて、なかなかやるじゃないかと思った。
 彼女にまつわるシーンで印象づけられるのが、ずっと足ということで一貫しているところもスタイリッシュだ。出会いのシーンでは、脱げた木のサンダル。裸足でついていく彼女。次に新しく買ってもらったサンダルを履く前に、公園の水飲み場で足を洗い流すシーンが念入りに映し出される。そして、クライマックスの戦闘シーンに臨む前。音を立てないように素足になって、そっと脱いだ靴を壁ぎわに寄せてきちんと揃えて置き直す。暴力的なヒモに脅えながら逃れることもできない弱い女だった彼女が、何の躊躇もなく車中からヤクザに拳銃を撃ち放ち、クールに射殺するくらいに劇的な変貌を遂げた出会いと経験の後も、一貫して崩れず保っているものがあることをさりげなく描きだし、それでもって雄弁に人物描写をしているわけで、なかなか達者なものだ。
 群れない一匹狼の男気と誇りといったテーマは、新しくも何ともないものだけれど、こんなふうに作品としてのカッコよさを実現して見せてくれるとテーマにうんざりするだけには終わらないのだなと妙な感心の仕方をした。
by ヤマ

'99. 4.29. 高知東映



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