『将軍の娘 エリザベス・キャンベル』(The General's Daughter)
監督 サイモン・ウェスト


 監督デビュー作『コン・エア』でも、ちょっと危ない人間の精神世界に向ける眼差しと関心というものに自分と触れる部分があって気になっていた監督だったが、この作品では、そのあたりがもっとストレートに出てきたという感じだ。だが、前作ではアクション映画、今回はミステリーと、あくまでも商業映画としてのベースは忘れずに貫いている。
 それにしても、容赦なく凄まじい物語である。別名“レイプ社会”とも言われているらしいアメリカの本領発揮で、なかなかに壮絶なシーンであった。ムーア大佐(ジェームズ・ウッズ) が口にした、レイプよりも悪いことが何だったのかは最も気になるところだったのだが、それが判明しても拍子抜けするどころか説得力に満ちていたのは、そのレイプの凄まじさが半端じゃなかったからだろうという気がする。エリザベスの家の地下室で、軍の犯罪捜査官ポール(ジョン・トラボルタ) が見付けた、SMプレイに耽るための奥の隠し部屋の入り口に掛けてあったのが、七年前の事件が起こった、士官学校時代の夜間大演習に臨むときの迷彩服に身を包み、顔に墨を塗った自分の写真をポスター大に引き伸ばしたものだったなんて、何とも強烈な凄みだ。
 でも、だからこそ事件の謎解き以上に、察するに余りあるエリザベス自身の内面の物語や彼女に惹かれ救おうとした男たちの物語を彼ら自身の言葉と行動で描いて見せて欲しかったのだが、製作者の企画趣旨とは異なることなんだろうなとも思う。
 エリザベスを演じたレスリー・ステファンソンが強烈な印象を残してサラ役のマデリーン・ストゥを圧倒していた。オープニングの颯爽としたコケットリーと殺される直前に「行かないで、パパ、戻ってきて」と叫ぶ姿の痛切さが焼き付いている。
by ヤマ

'99.12. 4. 松竹ピカデリー3



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