『マイティ・ジョー』(Mighty Joe Young)
監督 ロン・アンダーウッド


 市の文化祭執行委員に委嘱されなかったら、敢えて観には行かなかった作品だが、思いのほか面白かった。見覚えのあるRKOピクチャーズのロゴが初めて見るカラーで登場したので、やはりキングコングと縁のある映画なのかなと思ったら、まさしく『キングコング』のドラマとしてのエッセンスを忠実に汲み取り、現在の時点で読み直したような作品だった。

 そうしたとき、人間に尊重されずに受け入れられないで滅びゆく自然の側の悲劇としての結末を迎えた『キングコング』が、この作品では、アメリカに連れて来ること自体が金儲けのための見せ物にするからではなく、巨大ゴリラを安全に保護するためであったり、そのことが現実の人間社会ではなかなか困難なことであることが描かれても、最終的に受け入れられずに滅びゆく悲劇とはならずに、大勢の人の善意の金で生まれ故郷に自然公園を確保するというハッピーエンドの結末を迎えたりするところが興味深かった。

 ディズニーの映画だからという観方もあるかもしれないが、それ以上に、現在の時点で『キングコング』を読み直すと、人間の思い上がりを批判的に眺める視線を提示する程度ではおさまらず、人間に対する希望と可能性を勇気づける形の結末を明示しないではいられないくらい、環境や自然の問題が差し迫ったものになってきているという観方もできるのではないかと思う。

 シーンとしては、ヒロインのジルが巨大ゴリラ、ジョーの腕のなかに抱かれて子守歌を口ずさみながらジョーをなだめている場面が官能性と母性を同時に豊かに感じさせて秀逸であった。ジョーのお披露目のパーティの席で初めて純白のドレスを身につけて現れたジル(シャーリーズ・セロン)の清楚で華のある姿にも思わず眼を奪われた。

by ヤマ

'99. 5. 9. あたご劇場



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