鯉釣りを紹介するサイトLightBlue

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鯉釣りの疑問No.2

鯉はどれくらい見えているのか?

近眼だが、色の認識は長けている

釣り人にとって、魚からどれくらい見られているのか、気になるところです。仕掛けに気付いているのか、糸が見えているのか、ましてや釣り場に立った時点で「あ~あ、アイツまた来てるよ。」なんて思われていたら堪ったもんじゃありません。そこで、鯉の視覚はどれほどのものなのか、調べてみました。

まず、鯉の視力は、錐体(※1)密度から組織学的に求めたところ、0.07だそうです(※2)。他に、鯉に特定の訓練をさせて視力を測定したところ、0.11との報告もあります(※3)。

論文に多少の差はあるものの、鯉はド近眼であることに間違いなさそうです。確かに、糸に触れてからその存在に気付いたり、釣り人の足元に来てようやくこちらの存在に気付いたり、近眼らしい行動が見受けられます。また、鯉が主に生息する河川下流部や湖等は透明度が高くないため、視界が悪いです。近眼という形質にたどり着くのも、納得できます。

次に、遠近調節です。人の視覚の遠近調整は、水晶体の厚みを毛様体筋によって変化させ、ピントを合わせています。一方、魚は水晶体の厚みを変化させることはできず、遠近調整は水晶体筋による水晶体の眼球内移動によって行っています。

論文(※4)によれば、39種の魚類について、水晶体の眼球内移動を観察したところ、鯉の眼球内移動は極めてわずかだったそうです。また、移動が明確に記録された31種は、体長とほぼ同じくらい離れたところから、無限遠までの遠近調節が可能であることがわかったそうです。

このことから、鯉はピント合わせも上手くないことがわかりました。浮かせ釣り(パンプカ)でも、よくパンを食い損ねます。ルアーを食い損ねるのはわかりますが、ゆっくり流されているだけで動いていないパンを食い損ねるのは、ピントが合わないから距離感がわかっていないのでしょうか。また、移動が明確に記録された31種の中には、オオクチバスやマダイが含まれていました。釣り人としては、納得です。ちなみに、移動が全く認められなかった魚種は4種で、ナマズが含まれていました。ナマズはルアーを食べ損ねることがよくありますが、なるほど、遠近調整できずピンボケでルアーを見ているようです。確かに、夜行性で濁りのある環境に生息する彼らにとっては、視覚はあまり頼りにならず、音とか匂いのほうが重要なのでしょう。

では、色はどれくらい見えているのか。論文(※5)によれば、鯉の網膜には,赤色(600nm)、緑色(532nm)、青色(458nm)、紫外線(377nm)に最大感度を持つ錐体、そして緑色(525nm)付近に最大感度を示す桿体が存在するそうです。

視力は悪いのに、鯉は色をしっかり感知できるようです。三原色だけでなく、紫外線まで見えてるとは驚きです。釣り人は、色には気を使う必要がありそうです。例えば、オモリの色。オモリは仕掛けの中でも大きいパーツなので、近眼な鯉でもオモリの色と底の色が異なれば違和感を覚えるかもしれません。底には色とりどりな小石も転がっていますから、完全に同化させる必要はないと思いますが、あまりに底の色とかけ離れていたり、スレた鯉を相手にする場合は要注意でしょう。他には、餌のカラー。色の違いを見分けることができるのならば、目立たせて興味を引くこともできれば、反対に警戒される可能性もあります。鯉の活性や、釣り人のプレッシャーを考えて選ぶべきなのでしょう。また、紫外線で何を見ているのか不明ですが、モンシロチョウのようにオス・メスの区別に使っていたりするのでしょうか。

ここで注意すべきは、水中は陸上より色鮮やかに見えにくいということです。水は光を吸収するためです。論文(※6)によれば、純水、澄んだ湖水及び澄んだ海水で測定された消散係数(※7)には顕著な差は認められず、また各種の水中で測定された消散係数は400~500 nmまでは小さいものの500nmを超えると顕著に増大し、波長600nm以上のオレンジ色から赤色は水深10mになると、極端に減衰して殆ど透過しないそうです。他に、青森県の観光スポット「十二湖青池」における光の減衰に関する報告もありました。3色カラーセンサーを水深 2.5mまで沈め、赤色光強度比が深さとともに減衰する結果が得られ、その結果を解析したところ、光路長10~20mでは赤色光がほとんど消失し、透過光は青色及びその半分程度の強度の緑色光となることが示された、とのことです(※8)。

どちらの報告でも水深10m以上では赤色はほとんど消失してしまう、ということです。赤い餌は水深10m以上ではもはや赤くなく、水深10m未満でも陸上より薄く見えるはずです。釣り人が陸上で見るより、赤は目立っていないのです。

まとめると、鯉は近眼で、遠近調節も得意ではありませんが、色を見分ける能力がある魚のようです。私が気になったことは、2点。まず、(私が知らないだけかもしれませんが)青色や緑色のボイリーがないことです。鯉は認識することができ、また水中を透過しやすい色なので発色も良いと思うのですが、なぜでしょう。バス釣りのワームでは、緑色は定番のカラーなので、選択肢としてあっても構わないと思うのですが・・・。今ある中では、黄色は水中でも減衰しにくく、自然にはあまりない色と明度なので、非常に目立って良いと思います。ボイリー以外では、よく使われるコーンも黄色です。次に、野ゴイ(日本在来ゴイ)も同じ視覚なのか、ということです。野ゴイのほうが肉食性が強く、遊泳性の動物を捕食している可能性があることから(※9)、遠近調節はもっと優れているかもしれません。野ゴイと養殖ゴイの視覚を比較してみると面白い結果になりそうです。

※1:視細胞の一種。

※2:高橋(2021) 魚眼の構造と機能

※3:Matsuike,K., Shimizu,Y. and Nakamura,Y.(1981) Relationship between turbidity of water and visual acuity of fish (1)

※4:Somiya,H. and Tamura,T.(1973) Studies on the visual accommodation in fishes

※5:Hanaoka,T. and Fujimoto,K.(1957) Absorption spectrum of a single cone in the carp retina

※6:高橋(2021) 魚類の生息環境と色覚

※7:減衰の程度を示す係数。

※8:青森県環境保健センター(2017) 十二湖青池の呈色機構に関する研究(第三報)

※9:DNAが語る日本のコイの物語 / 国立研究開発法人国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/kanko/news/36/36-5/36-5-03.html

鯉の顔
鯉は一体どのような世界を見ているのでしょうか。言葉が通じないからこそ、色々と想像してしまいます。