鯉釣りを紹介するサイトLightBlue

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この先、どう鯉を繋いでいくか

野ゴイと養殖ゴイについて

鯉釣りにおける環境問題

釣りをしていると必ず目の当たりにするのが、環境問題です。環境問題は、「ゴミのポイ捨て」から「地球温暖化」まで様々なものがありますが、鯉釣り師として、考えていかなければならない問題があります。いわゆる「野ゴイ」の存在です。

野ゴイとは

DNA解析により、日本古来より生息するコイの存在が証明されました(※1)。鯉釣りでは、この日本在来のコイを野ゴイと言います(野生にいる鯉を野ゴイと言う場合もあります)。

野ゴイは、腹や背が出ておらず、吻(目から口先までの間)が短い形態的特徴があります(※2)。

(ここでは、日本在来コイを発見するに至った経緯や、DNA解析等の詳細は述べません。ご興味のある方は、下記の参考文献をご覧ください。)

養殖ゴイとは

一方、ユーラシア大陸より渡来したコイを、鯉釣りでは「養殖ゴイ」と言います。

養殖ゴイは、頭から後ろが盛り上がるため、体高があります。

野ゴイと養殖ゴイでは形態的な特徴が異なりますが、個体差がありますし、交雑した個体の可能性もあるため、形態だけで区別することは難しいです。

野ゴイ系の鯉
私が今まで釣った中では、最も野ゴイ寄りの鯉です。しかし、形態的な特徴だけでは、個体差がありますし、交雑した個体の可能性もあるため、野ゴイと言い切ることはできません(釣れた場所から考えて、野ゴイではないと思います。)。
養殖ゴイ系の鯉
野ゴイ系と比較して、養殖ゴイは頭から後ろが盛り上がるため、胴の肉付きが明らかに異なります。基本的に釣れる鯉は養殖ゴイだと思ってください。それほど野ゴイと出会える確率は低く、場所も限られています。

何が問題か

私たちが見るコイは、基本的に養殖ゴイです。養殖ゴイは、放流により日本各地に生息範囲を拡げました。日本在来コイが生息していたところに養殖ゴイが入ると、生息環境や餌の競合、また交雑により遺伝子汚染(※3)が起こります。結果として、日本在来コイという系統が消失する可能性があります。

防疫上の観点からも、コイを他の水域へ移動させることは基本的にやめましょう。

※3:地理的に隔離され,出会うことのなかった近縁種どうしが人為的要因による移動によって出会い,交雑することで在来種の遺伝子構成が変化すること。

釣り人として考える

ここで「今後、こうするべき」とか、私の意見を述べるつもりはありません。このサイトは鯉釣りを紹介するところなので、こういう問題があるのだと知っていただければ、十分です。

釣り人は、釣りを通して自然や環境問題を感じ、知り、考えます。釣りは魚を欺くものであり、欺くために魚を含めた生き物や、その場所を理解する必要があります。自ずと、自然や環境問題が見えてきます。だから私は、環境問題に対しての釣り人の意見はリアリティがあり、より真剣に、かつ深く考えていると思っています。そうして、ある意味「自然と対話」をしている釣り人、一人一人が意見を持つことが、大事です。だから、一方的に池の水を抜いて、コイを殺処分する行為に疑問を持つのです。それで理想の自然は戻るのか、と。考えた結果、「池の水を抜いて、コイを殺処分すべき」という意見にたどり着いても、もちろん構いません。ただ、環境問題を見過ごさないで、釣り人として考えた答えに意義があると思っています。

そこで疑問を持てる釣り人の考えを、私は信じたいです。

参考文献

※1:DNAが語る日本のコイの物語 / 国立研究開発法人国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/kanko/news/36/36-5/36-5-03.html

※2:鯉釣りMagazine春号 p83−89