フィールドによっては数・型とも出る攻めの鯉釣り
鯉の浮かせ釣り(パンプカ)
都会の中で鯉釣りを楽しむ、「攻め」の釣り
水面で魚を掛ける釣りは、フライでもルアーでも最高です。捕食シーンが見えるからです。捕食という強烈な野生を見せられた後に、釣り人との勝負が始まります。食いつく瞬間に心臓の鼓動が早くなるのは、むしろ当たり前とも言えるシチュエーションです。
そんな釣りが、実は鯉釣りにもあります。それが「鯉の浮かせ釣り」です。鯉釣りはぶっこみ釣りであろうと、ウキ釣りであろうと、基本的に底で鯉に餌を食わせます。しかし、この釣り方はかなり特殊で、主に都市河川で浮いたパンを鯉に食わせる釣法です。
最初に、なぜ都市河川なのか、また浮いたパンを使った鯉釣りがなぜ可能なのか、ご説明します。鯉の口の向きが下になっていることからもわかるように、鯉は本来、底の餌を食べる生き物です。しかし、鯉は浮く餌も食べることがあります。例えば、ダムや池の端っこに浮いている溜まったゴミを漁る、落ちた虫を食べる、などといった具合です。この浮く餌を食べる習性は、都市化が進んだ河川などではより強くなります。鯉は人間が出したゴミや残飯が上流から流れてくることを学習しているからです。そのため、パンに対して反応は早く、そして何ら躊躇いもなく食べます。この状況を利用して釣るのが、パンの浮かせ釣りなのです。
また、パンを仕掛けで固定しないことが、この釣り方の良いところです。パンを流れに乗せて鯉の近くまで送り込むことができるので、積極的なアプローチが可能です。つまり、パンという餌を使ってはいますが、フライフィッシングやルアーフィッシングに近い「攻め」の釣り方です。
このようなことから、都市河川におけるパンの浮かせ釣りは最強と言っても過言ではありません。また、水面でパンを鯉に食わせるので、バイトする瞬間を見ることができ、スリル満点です。揃える釣り道具も少なく、餌もコンビニでパンを買ってくるだけなので、初心者の方はぜひともチャレンジしてみてください(ここではパンの浮かせ釣りと紹介していますが、パンプカ釣りやパックン釣りなど様々な呼び方があります。)。
パン(人工の餌)に慣れた鯉を探す
都市河川など人間の生活に近い場所がパンの浮かせ釣りのポイントになります。理由は、上記で述べたように残飯などの人工の餌が上流から流れてくることを知っている鯉がターゲットだからです。都市の中を流れ、生活排水が入り込むような河川をGooglemap等で探しましょう。イメージとしては、東京方面では多摩川や鶴見川が挙げられます。候補となる都市河川が見つかったら、その河川の川幅が狭い上流部や支流、水路が浮かせ釣りのポイントになります。あまりに川幅が広いと、鯉が散りやすく、またパンが届きにくいです。
ちなみに、都市河川以外でも浮かせ釣りで鯉は釣れます。しかし、パンを認識させるまで時間が掛かるので避けましょう。
ポイントの候補が挙がったら、実際にポイントへ行き、鯉を探します(ポイント候補時には釣り禁止かどうか、駐車場はあるか、足場は良いか、なども可能な限り確認し、選定。)。そして、鯉を目視で見つけたら、1cm×1cmくらいにカットしたパンを5mほど上流から流します(軽すぎてパンが届かなければ、大きく千切って撒くのもあり。)。最初は5個くらい、その後は定期的に3個くらいパンを流れに乗せて鯉のそばを通過させてみましょう。そして、その流したパンを鯉が食べたなら、ポイントになり得ます。
道具の準備
竿
パンの浮かせ釣りで使う竿は、2.7m(=9ft)くらいのシーバスロッドがベストです。浮かせ釣りでは、オモリを付けず、パンのみをキャストします。パンは軽いため、これより短いバスロッドなどの長さだとパンを投げたときに飛距離が出ません。もちろん、鯉の引きにも耐える強度が必要です。反対に4m以上の磯竿などの場合、パンは遠投しやすくなりますが、都市河川ではそう釣り場は広くなく、長すぎて取り回しに何かと不便です。
リール
餌(パン)が軽いので、スピニングリールを使用します。糸の操作がしやすい小型のもの(2000〜3000番台)が扱いやすく、腕が疲れにくいです。ドラグ機能は必須。しかし、それさえ付いていれば、特に高価なリールである必要はありません。
糸
パンを流れに乗せて釣りますので、細い糸を使用します。糸が細ければ細いほどパンが流れに馴染むので鯉が警戒せずに食ってきますが、相手は大型魚ですから最低限の強度も必要です。よって、糸は太くてもナイロン3号(12ポンド)程度までで、余裕があるなら2号(8ポンド)まで細くしましょう。リーダーは不要です。
糸の種類は、ナイロンを選びましょう。パンを浮かすため、水より比重のあるフロロは不適です。PEラインは使えますが、繊細なアタリを取るわけではないので、わざわざ高価なラインを選ぶメリットがありません。
タモ網
タモ網は、鯉を陸に上げるために必要になります。移動する釣りなので、45〜55cm枠の折りたたみができるタモ網がお勧めです。ただし、鯉自体かなり重量がありますので、できるだけしっかりしたものを購入しましょう。
また、釣り道具の中にはボガグリップという口を掴む器具もありますが、鯉へは絶対に使用しないでください。口がシーバスのように硬くないこと、体高が高く体が重いことなどの理由で鯉の場合ボガグリップで掴み、持ち上げる行為は口への負担が大きすぎるため、鯉に深刻なダメージを与える可能性が高いです。
メガネ、コンタクトレンズ(あれば偏光グラス)
浮かせ釣りでは、鯉がパンを食べたか目視で判断することになりますので、見えなければアタリが取れません(汚れますのでメガネ拭きも必要かも?)。また、偏光グラスをお持ちの方はぜひ使用しましょう。見つけて釣るサイトフィッシングの浮かせ釣りでは圧倒的に有利です。
仕掛けは、鈎のみ
浮かせ釣りの仕掛けは鈎だけになります。道糸から鈎に直結するだけです。餌であるパンを浮かせるため、オモリは必要ありません。
一点だけ、注意することがあります。パンを浮かせるために鈎は極力軽く、かつホールドできるフトコロが広いものを選んでください。よって、通常の針よりも大きいながらも軸が細めの鈎がお勧めです。大きさは伊勢尼10〜12号あたりが標準です。形は特に問いませんが、流線など特殊な形はパンが付けにくいので避けてください。
基本的には仕掛けは鈎だけですが、針の1mほど上に小さ目の玉ウキを付けると便利なときがあります。鯉が浮いた餌を食べたことを目視で必ず確認できるとは限りません。特に、水面に来て飛沫を上げながら反転されると「あれ、今食べたか?」と餌を見失ってしまうことがあります。そのような時に玉ウキを目印にアタリを判断するのです。玉ウキが動けばアタリ、玉ウキが動かなければ鯉はパンを吐いてるので水面のどこかにパンは浮いているはずです。また、玉ウキの重さで多少飛距離も伸びますので、初心者の方は試してみても良いかもしれません。
餌はパン一択
餌にはパンがベストです。コンビニやスーパーなどで簡単に手に入り、またパンは白いので鯉が見つけやすいです。パンはフランスパンなどのようなパサパサしたものではなく、もっちりした食パンが向いています。理由は、パサパサしたパンだと水を吸うと、すぐに鈎から外れてしまうからです。これでは、鯉のいる場所まで餌を流すことができませんし、投げることも難しいです。反対に、食パンだともっちりしているため、鈎に残りやすいです。
また、食パンの中でも餌持ちが良いもの悪いものがありますが、とりあえず普通の食パンなら問題なく釣りができます。釣りに慣れてきたら、浮かせ釣りにベストなパンを探してみるのも良いかもしれません(鯉もグルメなのか、超熟を使っている方が多いです。私のお勧めはファミリーマートの食パン。)。
パン以外でも浮くものであれば十分餌となり得ますので、パンでなければいけないというわけではありません(例えば、お麩。)。しかしながら、手に入りやすいさや価格などで、結局はパンに落ち着くことになります。
釣り場に着いたら、まずは鯉の状態を見る
道具を揃えて、調べた釣り場に着いたら、いよいよ釣り開始!といきたいところですが、竿を出す前にパンを撒いて鯉の状態を見ましょう。パンの白い部分は鈎に付ける餌として使いやすいので、パンのミミだけハサミで1cmくらいにカットして撒きます。まずは、5個くらい撒いてみてください。パンのミミを撒くことで、鯉の注意を水面に向けさせます(浮いた餌が流れてきていると認識させる)。パンのミミを撒いて鯉の状態はどうでしょうか?もし、鯉がパクパクとパンを食べ始めたなら、今はその場所で釣れる可能性大です。しかし、パンミミを食べに来ない場合は、濁りがキツすぎる、警戒している、時間帯が悪い、など何か問題点があります。問題を解消するか、解消できない場合は場所を移動することをお勧めします。
鈎に餌を付ける
準備が整いましたら、鈎にパンを付けます。決まった付け方はないので、ご自由に鈎に付けてもらって構いません。ただ理想的には、強く握りすぎず、弱く握りすぎない、ちょうど良い握り加減が必要です。パンを強く握りすぎると、フッキングしても針先が貫通せずスッポ抜ける、パンの浮力が失われて沈む、ことになります。一方で、弱く握りすぎると、キャストしたときにパンが鈎から外れる、パンが水を吸ったときに鈎が脱落してしまう、ことになります。
例として、下記でパンの付け方を紹介します。少々大きめにパンを付ける方法です。大きい理由は、キャストがしやすくなるからです。パンが小さいと軽いと投げにくく、また鈎から外れやすくなります。結果、強引に投げようと竿を振ればパンが鈎から外れ、反対にゆっくり振れば軽いためパンは全く飛びません。繊細なキャスティングが要求されるのです。そこで初心者の方はこれくらいのボリュームで挑戦し、釣りに慣れて軽いパンでも投げられるようになったら少し小さめにカットしましょう。また、投げる直前にチョンと水につけると少し重たくなり投げやすくなります。
鯉を釣る
ここまで来たら、後は鯉を釣るだけです。
撒き餌としてパンを撒いておけば、鯉がパンを食べる位置は大体把握できていると思います。そこから約10〜20m上流にパンを投げます。投入点は、鯉の反応があった場所までパンを運んでくれる流れを選びます。キャストしてパンが着水したら、リールはフリー(糸が出る状態)にして流していきます。この時、糸を張ってしまうとパンが不自然に動いて、鯉が警戒します。手で糸を出しながら、テンションを掛けずに流します。鯉に糸が付いていないように思わせることが重要です。しかし、だからといって余分に糸を出しすぎると、いざ鯉がパンを食ったときにフッキングが間に合わず失敗しますので、糸を弛ませすぎるのも問題です。
しばらく流すと、鯉がパンを食べに来るのが波紋で確認できるかもしれません。ゆっくりと近寄り、パンを吸い込もうとします。フッキングに関しては、それほど神経質にならなくても構いません。鯉がパンを吸い込んだことを確認したらリールの糸の出を止め、フッキングしてください。
もし、フッキングが失敗して空振りしてしまっても、再度パンを流してみてください。鈎に掛かっていなければ、もう一度アタックしてくる可能性があります。
鯉が掛かった方はリールのドラグを調節し、寄せに入ります。とは言っても、鯉の引きは強いので、すぐには寄せられないと思います。しばらくは糸を渋るように出し、鯉を走らせ、疲れさせましょう。人と同じく、魚も走り続けることはできません。鯉に勢いがなくなってきたら、糸を巻いていきます。近寄ってきたら手前でもう少し遊ばせ、タモ網へ入れるのが理想的です。
次の鯉に備える
鯉を釣り上げ、撮影と大きさを計ったら、リリースします。すぐにもう一匹といきたいところですが、鯉が暴れたために場が荒れます(鯉の警戒心が上がる)。そこで、パンを少々撒いて、再び様子を見ます。撒いたパンを鯉が再び食べ始めたら、釣れる可能性はあります。そのフィールドにもよりますが、次の鯉の反応が得られるかどうかは、釣る前にしっかり撒き餌ができていたかどうか、にかかっています。反応がないようであれば、場所を移動することをお勧めします。同じ場所でもう一度やりたい場合は2〜3日、間をあけると警戒心も解けて釣れる状態に戻ると思います。
ちょっとしたテクニックの余談ですが、鯉に警戒されてもなお、同じ場所でさらに釣り続けたい場合は、パンを握って空気を抜き、パンを沈めることで警戒された鯉に口を使わせることが可能です。要はクロダイ釣りでの「前打ち」という釣法を使って、釣ることができます。この場合、いかに自然にパンを鯉の手前まで落とし込めるかがカギとなります。
以上、パンの浮かせ釣りの基本的な流れを紹介しました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。