最もメジャーな鯉の釣り方
鯉のぶっこみ釣り(ヨーロピアンスタイルを含む)
「鯉釣り」≒「ぶっこみ釣り」。なぜ、ぶっこみ釣りなのか?
鯉の釣り方には浮かせ釣り(パンプカ)、ウキ釣りなど様々な釣法があります。その中で最も主流なのが「ぶっこみ釣り」です。ぶっこみ釣りは、オモリで仕掛けを水底に固定して釣ります。海釣りでいう投釣りです。この釣り方は日本だけでなく、海外でも一般的です。では、なぜぶっこみ釣りが鯉釣りの主流なのでしょうか。
鯉は雑食性ですが、基本的に素早く動く魚は食べず、水底にある貝類、水生昆虫、植物の実などが主食です。そこで鯉は、底にある餌を効率よく食べるために、砂やゴミごと吸ったり吐いたり選別しながら、餌を探します。この食性から鯉を釣る最も適した方法は、仕掛けという「罠」を水底に仕掛けて釣る、ということになります。そして、これがぶっこみ釣りであり、鯉の食性上、釣り方がマッチしているから主流になっているというわけです。
ちなみに、ここでは「ぶっこみ釣り」という言葉を他の釣り方と区別するために使っています。現在ではあまり使われていません。鯉釣りの主流の釣法なので「鯉釣り」と言えばこれを指すか、海外の鯉釣りスタイルの場合はお洒落に「カープフィッシング」や「ヨーロピアンスタイル」と、言ったりします(「Carp=鯉、Fishing=釣り」という意味。)。また、海釣りでいう投釣りとほぼ同じなので、そちらをイメージもらっても問題ありません。
鯉釣り入門は他の釣り方からでも良い
釣り初心者の方は「鯉釣りの主流はぶっこみ釣りなのか。だったら、この釣法から鯉釣りに入門しよう!」と思われたかもしれません。
しかし、ちょっと待ってください。ぶっこみ釣りから挑戦するのは、少しハードルが高いかもしれません。
先ほど述べましたように、鯉のぶっこみ釣りは仕掛けという「罠」を仕掛けて釣る釣法です。つまり、鯉が餌を食べに来るであろう場所に仕掛けを設置します。設置するには、まず目では見えない水底を把握し、その地形からどこで鯉が餌を食べるのか、行動を予測することになります。この予測ができなければ、鯉は釣れません。もちろん、鯉釣り経験者でも予測を外して釣れないときもありますが、鯉釣りにハマっている自分達は釣れなくてもまた挑戦しますし、フィードバックもできます。しかし、初心者の方には水底・水中のイメージは難しく、ハードルが高いと飽きてしまう可能性があります。そこで、私からのオススメとして、釣り自体が全くの初心者という方は、鯉の動きがわかりやすい浮かせ釣りから入門してみてはどうでしょう。まずは、釣りの感覚や魚という生き物を理解した後に、挑戦したほうが心理的に楽です。
他にも、金銭的な面でも浮かせ釣りのほうが楽です。先ほど述べましたように、ぶっこみ釣りは、鯉の行動を予測して釣る釣法ですが、人のように鯉の行動パターンも何種類かあります。そして、その行動パターンの可能性が高いもの順に釣りを組み立てていくことになります。つまり、鯉の行動パターンごとに仕掛けを設置するので、「仕掛けの数×竿・リール」が必要というわけです。実際には、大体2~3ヵ所に仕掛けを設置しますので、竿も2~3本は必要になります。結果、単純に浮かせ釣りのコストよりも2~3倍することになります。
このように、ぶっこみ釣りはテクニック面と金銭面で若干のハードルがあります。これで敷居を高くするつもりもありませんし、これから鯉釣り初心者の方でもわかりやすい解説をしていきます。また、もちろん私もぶっこみ釣りにはぜひ挑戦していただきたいと思っています。しかし、あえて包み隠さずデメリットもここに記させていただきました。自分の釣り経験値、資金などを考慮して適した釣法から鯉釣りに挑戦してください。
ちなみに、特に学生さんを中心に金銭面はなかなか手痛いと思います。自分も小学生のときに竿1本で済むウキ釣りから鯉釣りへ入門しました。そこからさらに、他の釣りもやっていたのでバスロッドやシーバスロッドを寄せ集めてぶっこみ釣りをするようになり、その後、高校生くらいで何とか揃えた、という感じです。
まずは鯉を探して、釣り場を見つける
鯉釣りをするからには、まずは釣り場を探す必要があります。「釣り場=魚がいる場所」、つまり「鯉はどこにいるか?」というところから鯉釣りは始まります。
鯉はアユやアマゴのように鋭敏に泳ぎ回る魚ではないので、流れが緩やかな場所や流れのない場所を好みます。具体的には河川の中流域や下流域、またダム、湖、池といった止水域が挙げられます。そして、鯉自体珍しい魚ではなく、どこにでも生息しているので、特殊な環境でない限りそれらの場所なら釣り場になる可能性大です。しかし、鯉の魚影が濃いほうが釣れやすいので、初心者の方はもう少し絞り込みましょう。
鯉はとても環境適応能力が高い魚種です。例えば、アユは餌となる藻がなければいけませんし、堰で河川を遡上できなければ生息は不可能です。一方、鯉はパンなどの人工の餌でも学習して食べますし、産卵も水草がなければゴミなどを使う適応力があります。結果として、鯉は都市河川において優占種になりやすく、必然的に魚影が濃くなる傾向にあります。つまり、人の生活圏に近い河川や池が狙い目というわけです。
このようなことから、東京、大阪、名古屋と言った大都市のすぐ近くを流れる河川は、鯉釣りの一級ポイントになっています。まずは、通勤や通学のときに水面を覗いてみて鯉を探してみてはどうでしょうか。他にも、釣り場を決定する前に駐車場の有無やアクセス方法をGooglemapなどで確認しておくとよいでしょう。
しかし、このように説明されても初心者の方はなかなかイメージしにくいと思います。そこで、インターネットで「鯉釣り ポイント」等のワードで検索してしまうのもありです。検索でヒットした釣り場で、近場のところをピックアップして、そこで鯉釣りの感覚を覚えてから釣り場を自分で探す楽しさも見出していけば良いと思います。
釣りの観点からの釣り場選びは以上ですが、他にもそこが釣り禁止かどうかもインターネットで確認しましょう。インターネットに情報がなければ、実際に現地へ行き、釣り禁止の看板があるか確認することになります(Googleのストリートビューを使っても良いです。)。また、鯉が漁業権魚種に指定されている場合は、その漁業権を管理する内水面漁協から遊漁券を購入する必要があります。漁協のホームページか、直接漁協へ問い合わせて販売店等で遊漁券を購入しましょう。このような釣りにおけるルールもあるので、やはり最初はインターネットで釣り場を探してしまったほうが確実かもしれません。
ぶっこみ釣りの道具
ここで紹介する道具は私の装備であり、あくまで一例と思ってください。なぜなら、鯉釣りと言っても色々なスタイルがあり、それに伴って使う道具も変わります。そして、それらスタイルごとに道具を列挙していては混乱してしまいますし、またそれだけのパターンがありますから、率直なところ「一般的」なぶっこみ釣り道具とはどれを指すのか私にはわかりません。だからこそ、自分が実際に釣っている道具をご紹介するほうがお勧めできるのです。ちなみに、ここで紹介するのは、60~80cmクラスの鯉をメインに狙う装備で、どちらかと言えばライトな(手軽な)装備です。とは言っても、80cmクラスでも十分に対応できますから、普通に鯉釣りをする程度なら全く問題のない装備です。
竿
竿については、最近になって手に入りやすくなりました「カープロッド 3lb」をお勧めします。カープロッドは、ヨーロピアンスタイルの鯉釣りで使われる竿で、日本語に訳すとそのまま「鯉竿」という意味です(単に「鯉竿」と言うと、また違う「日本の鯉竿」のほうを指しますので、注意。)。対鯉用の竿なので、当然、鯉釣りに向いています。竿の強さは「lb」で表され、数字が大きくなるほど強く、小さくなるほど柔らかくなります。
カープロッド以外には投げ竿、磯竿3~4号が使えますので、すでにお持ちの方はそちらをとりあえず鯉釣りへ応用してしまうのもありです。また、ぶっこみ釣りの竿としては弱いですが、シーバスロッドも使えます。シーバスロッドは浮かせ釣りにも使えるので、私が学生のときはシーバスロッド(9ft)で鯉釣りをしていました。財布の事情が厳しい学生の方にはこういう選択肢もありだと思います。
余談です。ここでお勧めするのはカープロッドに変わりありません。ただ、他の釣りから見るとカープロッドはかなり変わっています。カープロッドは、鯉を釣るのに特化した竿です。しかし、特化させたということは、鯉以外の釣りでは弱点が目立つのです。簡単に言えば、持ち重りがして、竿先が鈍く、ガイドが少ない。正直、鯉釣り以外では使えたものではありません。また、手に入りやすくなったとはいえ、価格はそれなりにしますし、釣り具店にはまず並んでいないので、試しに手に取ることも難しいです。鯉釣りをするなら間違いなくカープロッドですが、鯉釣りにハマるかどうかわからない初心者や他の釣りにも浮気予定の方には、素直にお勧めできない、というのが本音です。
リール
ぶっこみ釣りで使用するリールの条件は、①スピニングリールであること、②ドラグ機能が備わっていること、③ラインが150m以上巻けること、これら3点を満たしているものを選びます。まず、リールには色々種類ありますが、鯉釣りではスピニングリールを選びます。竿を置くロッドポッドにしろ、センサーにしろスピニングリールを使うこと前提に作られていますので、他の道具との互換性を考えるとスピニングリールがベストです。また、ドラグ機能ですが、これはラインをある一定以上の負荷を掛けて引っ張ると自動的にリールが逆回転して糸切れを防ぐ機能のことです。鯉釣りに限らず大物釣りには、必須の機能です。次に、ラインが150m以上巻けるキャパシティが鯉釣りのリールには求められます。ここで使うラインは4号(16ポンド)なので、4号ラインが150m以上巻けるリールを選びましょう。メーカーのサイト、もしくはリールに直接何号ラインが何m巻けるか記載がありますので、そちらを確認します。また、リールには「〇〇〇〇番」という番号があり、それがリールの大きさを示しています。メーカーによって違いがあるので一概には言えませんが、私が使用しているSHIMANOであれば4000~5000番です。
竿立て
ぶっこみ釣りでは、鯉のアタリまで待ち時間がありますので、その間に竿を置いておく「竿立て」が必要になります。竿立てにも色々種類があるのですが、ここでは「三脚」をお勧めします。三脚をお勧めする理由は、折りたたみ可能なものがほとんどで非常にコンパクトであること、価格も数千円程度で手に入りやすいこと、三脚一つで何本か竿が置けるので鯉釣りの竿数もカバーできること、が挙げられます。一番良い竿立ては、実のところロッドポッドというヨーロピアンスタイルのものですが、価格が数万円しますので、本当に鯉釣りに熱中したときに候補に入れてください。他にも竿立てには一本刺し、ピトンなどありますが、最終的には三脚かロッドポッドの二択に落ち着くと思います。また「木などに適当に竿を置けばいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そういったところに竿を置くと当然傷が付きます。結果、竿が曲がった際にその傷から折れることがありますので、お勧めしません。
タモ網
鯉の場合、ブラックバスやシーバスのように口は手で持てませんし、重さもありますので、丈夫なタモ網が必要になります。玉枠(円形のもの)の場合、最低でも50cm枠以上で、できればワンフレーム(折りたたみでない)ものをお勧めします。ものによっては強度が十分かもしれませんが、折りたたみのタモ網はどうしても継ぎ目のところから破損しやすいです。また、網のほうは強度はもちろん必須ですが(網には強度を表す基準がないので具体的に伝えられませんが、ナイロン製で糸が太そうなものを。)、目が細かいほうが鯉のヒレなどが引っかかりにくいので扱いやすいです。鯉専用のランディングネットもありますが、手に入りにくく、高価なのでここでは挙げません。
注意点として、釣り道具の中にはボガグリップという口を掴む器具もありますが、鯉へは使用しないでください。口がシーバスのように硬くないこと、体高が高く体が重いことなどの理由で鯉の場合ボガグリップで掴み、持ち上げる行為は口への負担が大きすぎるため、鯉に深刻なダメージを与える可能性が高いです。
アンフッキングマット
釣り上げた鯉を傷付けないためのマットです。鯉の体表にダメージさえ与えなければ良いので、柔らかい草の上などに鯉を置いて対応できないこともないですが、アンフッキングマットがあったほうがリリースまでの動作がスムーズです。持っておいたほうが良いでしょう。
折りたたみ椅子
待ち時間があるので、あったほうが疲れません。
カメラセット
カメラと三脚があれば、釣り上げた鯉と記念撮影ができます。
仕掛けケース
仕掛けをロストしてしまうこともありますので、仕掛け予備等を入れるケースが必要です。
折りたたみバケツ
餌を入れておいたり、水を汲んだりするときに必要です。
メジャー
釣り上げた鯉を測定します。濡れてサビる可能性ありなので、100均のもので十分です。
ハサミ、ペンチ
糸を切ったり、鯉から針を外すときなどに使用します。
食料、水分
夏場は特に飲料をしっかり準備しましょう。
タオル
濡れた手を拭いたりしますので、必要です。
その他
上記の道具と餌があれば、最低限鯉釣りはできると思います。あとは個人的に挙げると、サングラスはあったほうが良いです。特に天気の良いときは水面からの反射もあり、裸眼だと結構目が疲れます。また帽子もあったほうが、個人的には疲れ方が全然違うので被っていきます。他には、早朝や夜は暗いのでヘッドライト、蚊対策に虫よけスプレー、食事時のためにティッシュや抗菌シート、長居するときはテント、冬場はホッカイロ、草むらや浅場に立ち入るためのウェーダー、必要な場所ならば遊漁券など。
ぶっこみ釣りの餌は、ボイリーがベスト
鯉釣りで使用する餌は、実に多様です。なぜなら、鯉は雑食性で、何でも食べるからです。よって、様々なものが釣り餌として利用できます。そして、鯉釣りの餌では自然にあるものを生き餌(タニシ、ミミズ、ザリガニなど)、人によって加工されたものを加工餌(ボイリー、パン、イモヨウカンなど)として分類しています。生き餌は自然にあるものなので鯉が警戒せずに食べる即効性がありますが、オイカワやフナなど他の魚にとっても好物であり(餌盗りが多い)、さらに生きているため管理や入手も大変です。一方、加工餌は手に入りやすく、ある程度加工されているため保存ができ、管理が楽です。また、基本的に鯉が口にすることがない餌なので生き餌ほどの即効性はありませんが、問題になるほどではありません。そのため、鯉釣りでは加工餌を使用することが一般的です。鯉が警戒心なく食べる生き餌は状況によっては初心者の方にもお勧めなのですが、ここでは手近な加工餌をお勧めします。
そして、加工餌にも色々な種類がありますが、ボイリーをお勧めします。ボイリーはパスタ麺の主原料であるセモリナ粉をベースに作られており、栄養価の高い餌です。よって、これ一つで十分に鯉釣りができます。また、ボイリーを使用する際には、ヘアーリグという特殊な仕掛けを用います。ボイリーはその栄養価から他の魚による捕食から耐えるためにボイル(名前の由来はここから。)された固い餌なのですが、固い餌を釣り針へ直接付けると魚が食いついても鈎が餌を貫通できず、針掛かりしません。そこで、鈎から余分に糸を垂らして、そこにボイリーを装着することでこの問題を解消しています(ボイリーの隣に釣り針が横たわる状態にする。)。つまり、ボイリーとヘアーリグの組み合わせは、鯉をピンポイントで釣るために特化した仕掛けなのです。ボイリーは海外で生まれた餌なので当初は手に入りづらかったですが、今ではネットショッピング(Amazonなど)で購入できるようになりました。仕掛けを作るのにヘアーリグ分の手間が発生しますので、初心者の方は仕掛け作りで多少難儀するかもしれませんが、誰でも鯉を専門的に狙うことができるので、ぜひボイリーを使用してみてください。
しかし、上記で述べたように栄養価が高い餌である分、良い材料が使われていますので、餌としては高価なほうです(私が使用しているボイリーだと約3000円/kg)。そこで、ちょっと足踏みしてしまった方にはコーンをお勧めします。スーパーなどで売られている缶詰コーンを使いますので、数百円で済みます。ただし、ボイリーほどの集魚力はないので、コーンとは別に撒き餌が必要です。とは言っても、撒き餌の用意もそこまでお金は掛からないので、やはりボイリーよりは安価で済むでしょう。また、確かにコーンはボイリーほどの集魚力はありませんが、野菜の中では比較的栄養価が高いほうです。さらに、鯉はどうやら白や黄色といった明るい色に興味を示す傾向があるようで、コーンの黄色がアピール力になります。ちなみに、コーンは固い餌ではないので、ヘアーリグは使用せず、直接鈎に付けます。また、鯉釣りでは生のトウモロコシではなく、ボイルされた缶詰コーンなどを使用するので、一応この場合は加工餌に分類されます。
上記で述べましたが、鯉釣りではフィーディング(撒き餌、寄せ餌とも言う。)を行う餌も必要になってきます。フィーディングとは餌付けのことで、もっとわかりやすく言うと鯉を仕掛けへ寄せるための餌を撒くことです。もちろん、鈎に付けた餌だけでも釣れないことはありませんが、ほとんどの釣り場ではそこまで簡単にピンポイントに狙って釣れません。また、撒き餌をしないということは、掛かる鯉以外の鯉は餌を口にしないということになります。鯉は基本的に群れで行動しますから、「ここには餌がある」ということをその群れに対して認識させることができないので、群れを足止めさせることができず、1尾釣ったら後が続かないという状況になりやすくなります。このように、撒き餌は釣れる釣り場を、釣り人自ら作ることで主導権を握るための大切なプロセスであり、鯉のコースが読めれば撒き餌によって鯉が自然と鈎に導かれる状況さえ作ることができてしまうのです。
以上のことから、フィーディングはほぼ必須と考えてください。そして、撒き餌には底に残ることで鯉に餌があるということを示し続ける餌(持続性)や粉状のもので遠くの鯉にも餌の存在を知らしめる餌(集魚性)など色々な意味合いを持って素材が配合されていることが必要です。どれかの性質に偏ってしまうと、撒き餌として機能しにくくなってしまいます。そこで、まず初心者の方はあらかじめバランス良く配合されている市販の鯉釣り餌を撒き餌に用いましょう。そして、鯉釣りに慣れてきたら「ここは餌盗りが多いからコーンを足そう。」とか「冬で食いが悪いからザルで底に残る餌を少し取り除こう。」とか工夫していけばいいと思います。また、集魚性が元々あるボイリーは割高にはなりますが、撒き餌にも使えます。ただし、ボイリーは水には溶けず撒き餌としては若干物足りませんので、本格的に鯉釣りをするなら、やはり別に撒き餌が必要だと思ってください。
ちなみに、先に述べた鈎に付ける餌を「食わせ餌」、撒き餌のことを「寄せ餌」と言い分ける場合があります。
ぶっこみ釣りの仕掛け
仕掛けについて、お話したいと思います。細かく分けていくと仕掛けの種類は結構な数になりますが、基本的な部分は同じです。具体的に説明します。最初に述べましたように、鯉は底の餌を探して食べる習性を持っています。鯉は砂などの餌以外のものも丸ごと吸い込み、鰓で餌とそれ以外のものを器用に分けて、餌のみを食べます。実は、この「餌以外のものも丸ごと吸い込み」というところが、肝です。つまり、鯉釣りの場合、鈎を餌の中に忍び込ませて掛けるのではなく、餌と鈎をまとめて吸い込ませて掛けるのです。だから、餌で鈎を隠す必要はなく、餌が鈎のすぐ隣にあれば鈎には餌が付いていなくても良いのです。そして、鯉に餌とともに吸い込まれた鈎は、口内のどこかに触れます。そして、鯉が鈎の違和感を感じて動き、オモリの重さが掛かって、自動的にフッキングが完了する、というシステムになっています。このシステムさえ機能すれば、鯉釣りの仕掛けとしては十分です。よって、鯉釣りを始めると色々な仕掛けを目にすることになりますが、この仕組みさえ押さえておけば色々工夫しても良いですし、反対に手広く仕掛けを持っておく必要もありません。これからご紹介する仕掛けは私が使っている仕掛けですが、このままでもオリジナリティを入れても構いません。
実際の仕掛けをご説明する前に、簡単に鯉釣りの仕掛け全般についてご紹介しておきます。
仕掛けの鈎数
仕掛けの鈎数ですが、1本鈎の仕掛けもあれば、4本鈎の仕掛けもあります。しかし、鈎数が多いとライントラブルや打ち返しに時間が掛かるため、現在では1本鈎の仕掛けがほとんどです。
ダンゴ餌を使用する仕掛け
仕掛けにセットする餌との関係です。食わせ餌だけをセットする仕掛けもあれば、食わせ餌と寄せ餌を一緒にセットしてしまう仕掛けもあります。吸い込み仕掛けやラセン仕掛けと呼ばれる仕掛けがそれで、糸やラセン(針金を釣鐘状に曲げたもの)で寄せ餌をセットできるようになっています。寄せ餌をセットする際、ダンゴ状に丸めてセットするので、このようなシーンではダンゴ餌とも言われます。これらの仕掛けの強みは、食わせ餌も寄せ餌もワンセットで鯉に提供できる点です。しかし、仕掛けを投入する度にダンゴ餌をセットしなければならないので手返しが悪く、また着水音も目立ちます。
オモリ
オモリには仕掛けを固定する役割もありますが、フッキングを完了させるという役割もあります。鈎先が鯉の口に触れ、鯉が違和感を感じて動くとオモリの重さが鈎に掛かり自動的にフッキングされるシステムなので、オモリが軽すぎると掛かるところまでいきません。よって、鯉釣りでは比較的重い10~25号あたりのオモリが使用されます。
鈎
鈎は、これでなければならないというものはなく、標準的な形をしていれば問題ありません。鈎のサイズは伊勢尼10~12号相当が一般的です。ただ、注意してほしいのは、鈎には鯉の口に触れたときに刺さる鋭利さが必要になります。これがないとオモリの重さが掛かる前に、鈎を吐き出されてしまいます。ちなみに、私のお勧めは「一刀チヌ 5号もしくは6号」です。
接続金具
サルカンやスイベルなどの接続金具は鯉の引きに耐えうるものであればどれでも構いません。私の場合は「スイベル サイズ4号」、「スナップスイベル サイズ3号」を使用しています。
糸(ライン)
道糸(リールに巻く糸)のラインは、最も安価なナイロンで十分です。仕掛けの糸には、比重があり仕掛けが落ち着きやすいフロロカーボンを使用します。私は、道糸にナイロン4号(16ポンド)、仕掛けにフロロカーボン3.5号(14ポンド)を使います。
以上のことを踏まえて、ここではヘアーリグ一本針仕掛けをお勧めします。一本針仕掛けは、最もシンプルな仕掛けです。初心者の方でも作りやすいです。また、シンプルであるからこそ、仕掛けのトラブルが少ないことも利点です。ヘアーリグやオモリ部分にも工夫を入れることは可能ですが、ここで紹介するのは最も標準形で、これで十分に通用します(現に私はこの仕掛けです。)。また、この仕掛けで使用する釣り具は釣具店で簡単に手に入ります。
下記に補足を列記しますが、初心者の方が仕掛け作成で少し手こずると思われるのは、ヘアーリグの部分です(鈎からクイックスナップの部分)。ヘアーリグの部分は、まず八の字結びで小さな輪を作ります。輪を作ったら、その糸に外掛け結びで鈎を付けて完成です。仕掛け作りに慣れるまでヘアーリグの長さが調節しにくいと思いますが、そこは何とか頑張ってください。
ちなみに、ボイリーを使用せず、コーンを食わせ餌にする方はヘアーリグ部分は不要です。単純に外掛け結びで糸に鈎を付けたら出来上がりです。
仕掛け作成の補足
スナップスイベルやスイベルへの結び方はクリンチノット、鈎と糸の結び方は外掛け結びが簡単です。
ヘアーリグ部分の小さな輪を作る際には、八の字結びを使います。
オモリには小さいスナップサルカンを付け、スナップサルカンは糸を通すだけにします。つまり、オモリはスナップスイベルからスイベルの間を自由に行き来できます。これを誘導式と言い、オモリの負荷が掛かるまでゆとりを持たせます。
オモリの両端には5mmほどのゴム管を通します。結び目を保護するためです。
釣り道具と仕掛けのまとめ
ここまでのことをまとめると、下記のセットができると思います。ヘアーリグ一本鈎仕掛けは、道糸に輪を作ることでワンタッチで脱着可能になります。
いざ釣り場へ!大、中、小の視点で論理的にポイントを絞る
上記の準備が整ったら、あとは鯉は釣るだけ。しかし、鯉のいるポイントへ仕掛けを投げ入れなければなりません。鯉は意味もなくあちこちにいるわけではなく、何かの理由に基づいてどこかにいます。つまり、その理由を当てることができれば、鯉がいる場所がわかる、そこへ投げれば釣れる、というわけです。しかし、それが難しいところです。なぜなら、鯉が考えていることを簡単には当てられないからです。もし魚の気持ちがわかったら、釣り人も漁師さんも苦労はしませんし、漁船には魚探が必要ないかもしれません。
よって、ポイント決定は確実な理由を順に選んでいき、選定します。つまり、鯉釣りの場合は「広い視点」、「中間の視点」、「小さな視点」へと順に理由を積み上げることで絞り込み、ポイントを決めます。
なぜ、順番に、かつ丁寧にポイント選びをしなければならないのか。例えば、バス釣りのようにボート等でポイントをいくつも回れるような小回りが利く「動」の釣りであれば、小さな視点から大きな視点の順で釣りを組み立てても良いかもしれません。しかし、鯉釣りは罠を仕掛ける釣りなので、ポイントは基本的に動かせません。予想を「外せない」のです。最初に小さな視点からの理由でポイントを選定して釣りを開始すると、大きな視点の理由が揺らいだ途端に一気に論理崩壊します。仕掛けの届く範囲で投入したポイントが正解でも、そもそもそのエリアに鯉がいなければ、気付いたときにはノーヒットで一日の釣りが終わってしまうことになります。鯉釣りでは鯉の行動を外側から一つずつ紐解いていくことで、初めて広大な水底にポツンと置かれたあなたの鈎を鯉が口にするシナリオが完成するのです。
では、実際のポイント選定の流れを述べていきます。まずは、「大きな視点」です。上記のところで鯉釣りをする河川や池は決まっていると思います。そこをまず「季節」で絞り込みます。季節ごとのキーワードは春「産卵」、夏「涼しいところ」、秋「水温変化」、冬「暖かいところ」です。このキーワードを念頭にGoogleマップ等を使って地図からポイントを探します。例えば、春は鯉にとって産卵という重要なイベントがあるシーズンです。具体的に鯉がとる行動は、水温上昇が早い支流を遡上して、水草などに卵を産み付けます。しかし、産卵が始まってしまうと餌は食べないので、狙うのは支流に遡上してくる鯉です。つまり、河川では本流と支流の合流点、また池では流れ込みなどがポイントになるので、そのようなところを地図で見つけるのです。他の季節はまた違うページでご説明します。
次は「中間の視点」です。ここで大切になるのは、釣り場の「変化」です。先ほどの春の例からいくと、鯉は支流へ入ってくるわけですが、縦横無尽に泳いで入ってくるわけではありません。必ず遡上するコースがあります。そのコースの中継地点となる釣り場の変化を見つけるのです。例えば、本流から支流へ通ずるカケアガリ、テトラポッドやゴロタ石等で岬上になっているところ、などこのような変化を探します。これら変化は鯉にとって餌場になっていたり、休息場所になっていたりします。何もない路上よりもコンビニや道の駅に人が集まることと同じと考えてください。ちなみに、私はここまでGoogleマップの衛星画像などで探していくつか候補を挙げておき、あとは実際に釣り場についてから変化を確認して釣り座(釣りをするスペースと荷物等を置いておくベースキャンプの確保。)を構えます。
最後に、「小さな視点」です。ここで実際に仕掛けを投入する地点を決めます。小さな視点で大切になるのは「底」です。最初に述べたように鯉が餌を食べるのは底になります。よって、鯉が食べられる底に仕掛けを投げ入れる必要があるのです。まず、底質としては砂地(小石くらいは混じっても良い。)を探します。理由としては、岩盤や水草などの上では仕掛けが転がってしまったり、沈み込んでしまう、など安定しないためです。さらに、砂地は鯉の食性にも合っています。ゴロタ石や水草などの変化にはエビや小魚などが潜みやすく集まっており、鯉はそれらを狙うこともありますが、生きている(活発に動く)エビや小魚を追うことはあまりありません。そのことは口の構造を見れば明らかで、鯉には貝などを砕くための咽頭歯はありますが、ピラニアやシーバスのような捕らえるための歯はありません。よって、ゴロタ石や水草などのど真ん中に仕掛けを打っても釣れる可能性は低いのです。しかし、ゴロタ石や水草などの周辺には鯉の餌となる生き物の死骸や有機物が溜まりやすいので、それら変化と砂地の境目は良いポイントになります。
このような底の情報は陸から見ただけではわかりません。そこで鯉釣りでは「底探り」と言って、オモリを投げて引きずってくる感触から底を判断します。例えば、底が砂地ならオモリは滑らかに引きずれますし、カケアガリになっているところは坂なので抵抗があり、また岩盤や石が多い場所ではコツコツとした感触が糸を通して伝わってきます。これで底の変化を読み取っていくのです。最初は陸で砂地や草むらの上を引いてみて伝わる感触を覚えましょう。この底探りは、他にも携帯型魚群探知機「deeper」を使うなどの方法がありますが、このオモリを引く方法でも十分通用しますので、初心者の方はまずこの方法で挑戦してみましょう。
また、ここまで水深について触れてきませんでしたが、攻める水深はあまり深く考えないでください。一般的には水温が高いときは浅場、低いときは深場という傾向はありますが、それよりは上記の視点で選んだポイントが的確かどうかのほうがずっと重要です。なぜなら、ポイントが合っていれば真冬でも水深1m程度の浅いところでもコンスタントに釣れますし、反対に湧き水など鯉にとって魅力的な変化が深いところにあればそこがポイントになります。つまり、攻める水深はポイント次第で簡単に左右されてしまうのです。ただ注意点としては、深いところのポイントは当然見つけにくいので、ダム湖など水深のある釣り場は難易度が高くなります。また、鯉は大型魚なので、群れでポイントへ侵入してくるには最低限の水深(1m以上)は必要です。よって、底探りの際には、大体で構いませんので、オモリが着水したらカウントを数えて水深を測ります。
以上長々と述べさせていただきました。このボリュームになるのはそれだけポイント選びが重要だからです。魚さえいればあとは餌と仕掛けが機能して掛かるだけなので、ここで釣果はほぼ決まります。そして、ここが鯉釣りで最も難しいところです。セオリーに基づいてポイントを絞るわけですが、ポイントは天気など様々な事象を勘案して見極める必要があるので、とても難解です。20年以上鯉釣りをやっている自分でもよく見誤ります。初心者の方はなおさら、こんなことを説明されてもなかなかイメージしにくいと思います。可能であれば、最初はネットや鯉釣り雑誌等で公開されているポイントへ入釣したり、経験者と同行することで経験を積むほうが近道です。
撒き餌の「集約力」を使いこなす
ポイントが決まったところで、鯉釣りでは釣りをする前にフィーディング(撒き餌)を行います。撒き餌で最も重要になってくるキーワードは「集約力」です。鯉釣りは、罠を仕掛けて釣る釣りです。しかし、仕掛けに付けた食わせ餌だけを広大な水底に置いたところで、その怪しげな餌だけをピンポイントで鯉に食べさせることは難しいことだと想像が付くと思います。その罠に掛かる確率を上げる必要があります。そこで、撒き餌の集約力を上手く活用します。具体的には、撒き餌によって鯉に餌の存在を知らせて、寄せて、口を使わせ、餌を食べ続けさせ、気付いた時には仕掛けの餌も吸い込んでいた、というシナリオを作ります。つまり、撒き餌自体も壮大な罠なのです。
撒き餌の使い方を説明する前に、鯉は撒き餌をどう食べるか、というところをまず押さえておきましょう。河川のほうがイメージしやすいので河川での例でいくと、上流から下流への流れがあるわけですから、撒き餌を投入すると下流方向へ餌の細かな粒子や匂いが拡散していきます。まず、それに鯉が反応して寄ってきます。そして、撒き餌を投入したところは流されにくい粒の大きなコーンや麦、ボイリー等が残っている状態になりますが、基本的に寄った鯉はこれらの餌を下流側にある餌から順に食べていきます。つまり、鯉は餌を発見すると撒き餌を投入した中心部へいきなり食べに行くのではなく、撒き餌を投入した外側(下流側)の細かな餌から順に食べるのです。細かな餌のほうが消化吸収が良いからなのか理由はわかりませんが、まずはこの習性を念頭に置いてください。
このことを踏まえて、どうすれば望むシナリオになるのかというと、答えは仕掛けの投入ポイントよりも少し先(上流)のコースに撒き餌を打つのです。先ほどポイントで述べたように、鯉にはそのポイントへ入ってくるコースがあります。要は、撒き餌を使って小さな視点で決めた仕掛けの投入ポイントへできるだけそのコースを集約したいわけです。悪い例を挙げます。仕掛けの投入ポイントと同地点へ撒き餌を打つと、鯉は拡散した(外側の)撒き餌を完食してから仕掛けの食わせ餌を食べることになりますので、鯉が掛かるまで多くの時間を要します。反対に、仕掛けの投入ポイントから離れすぎたところへ撒き餌を打つと最悪そちらがコースになり仕掛けの食わせ餌が置き去りになってしまう、つまりは強みである集約力が裏目に出るケースが出てきます。よって、遠からず近からず、撒き餌の外側に仕掛けが設置されるように撒き餌を打つ必要があるのです。
では、具体的に仕掛けと撒き餌の距離感は一体どれくらい保てばいいのか述べたいところですが、これについてはケースバイケースなので一概に言えません。例えば、河川と野池では流れの強さが違うので、撒き餌の拡散する範囲も変わってきます。また、撒き餌の投入量についてもその場その場の状況を見て判断しなければなりません。なぜなら、鯉の活性や魚影の濃さ、またジャミ(餌盗り)に撒き餌を食べられる分も考慮する必要があるからです。例えば、冬場で鯉を含めた魚の活性が低ければ撒き餌を少量に、逆に夏場で活性が高ければ多めに調整しなくてはなりません。そこで初心者の方はまず、市販の鯉釣り餌なら野球ボール小サイズを3投、もしくはボイリーならば大きく一掴み程度を仕掛けの投入ポイントよりコース先(上流)2~3mのところへ投入しましょう。この量は撒き餌としては少ないほうです。撒き餌が多くてアタリがなかった場合、撒き餌が多すぎて仕掛けに到達できないのか、そもそも鯉のコースを外しているのか、または鯉自体の魚影が薄すぎるだけなのか、など釣れない要因を絞ることが難しくなってしまい、その後の釣りが組み立てにくくなってしまいます。よって、撒き餌は少な目から始めたほうが無難なのです。この量から釣りをスタートしてアタリがあるようなら増やしても良いですし、反対に冬場で活性が低そうならば撒き餌の量を減らし、仕掛けの投入ポイントと撒き餌の距離も1mくらいに変更してタイトに攻めたほうが良いです。鯉のストックや活性もある程度予想が付くならば、最初から撒き餌を多めに撒いても構いません。
このように鯉釣りでは、撒き餌を使うことでコースに入ってきた鯉を次々に仕掛けへ導くことができます。しかし、使い方を誤るとアタリが遠くなってしまうので、注意しましょう。また、撒き餌が効くまでに多少の時間を要するので、私の場合は底探りをして仕掛けの投入ポイントを決めた後に撒き餌を行っています。そうすると仕掛け等の準備をして投げ入れる頃には十分に拡散しています。また、市販の鯉釣り餌は、乾燥された状態で売られているため釣り場で水を加えてから使用しますが、作り方は商品裏面等に記載されているので心配ありません。恐らく記載されていると思いますが、作り方のコツは、練らずに水を均一に行き渡らせることです(練ってしまうと粘りが出て、拡散しにくくなります。)。
イメージをチューニングしながら鯉を釣り攻める
ここまでで撒き餌を投入し、仕掛け投入ポイントも決定しているはずです。あとは餌を付けた仕掛けを投入ポイントへ投げ入れるだけになります。
餌のセット方法ですが、ボイリーの場合はヘアーリグの部分にボイリーを通し、ストッパーで抜け落ちないようにして完了です(ニードルという道具を使います。)。また、コーンの場合は鈎に直接2~3粒ほど付けます。
キャストして仕掛けをポイントへ投入します。糸を張った状態で竿立てに竿をセットし、スピニングリールのドラグを緩めて(糸が出るようにして)そのまま竿は動かさずに待つだけです。また、仕掛けを投げ入れてからの待ち時間は、フィールド等によって変わるため決まったものはありませんが、私の場合は1時間半としています。経験上、仕掛け投入から30~40分で鯉の警戒心は解けますので、鯉の魚影がそこそこあれば十分に余裕を持った時間設定です。また、コーンやボイリーは溶けないので、鯉が掛かるまで放置しても良いのではないかと思われるかもしれませんが、仕掛けが絡まっていたり、亀などに餌を盗られていることもありますので、釣れなくとも1時間半経ったらチェックのために一度回収することをお勧めします。しかし、ポイントが合っており、撒き餌も効いていると投げてからすぐに掛かることもあるので、油断はしないようにしてください。
以上のやり方で、何かの理由に基づいてポイントを決定し、仕掛けを投入しているので、釣れる可能性は十分にあります。しかし、自分の狙うポイントが必中するとは限りません。魚の気持ち(動き)を予想することは難しいです。よって、ポイントを外してしまい釣れないかもしれませんし、釣りこぼす鯉も出てきます。そこで、竿と仕掛けをもう一式用意して、自分の予想よりもう一歩先を見据えたポイントへ仕掛けを追加で投入します。鯉のぶっこみ釣りの竿数が1本で済まないのはこのためです。この竿のことを鯉釣りでは「捨て竿」と言います。ただし、一般的に「捨て竿」とは、目的なくキャストをして放置し、単発の大物を狙う竿のことを指すので注意してください。
では、もう一歩先を見据えたポイントとはどこを指すのか。自分の狙うポイントが正解とは限りません。そこで狙うポイントよりもう一つ手前(浅場)か、沖側(深場)のポイントへ捨て竿の仕掛けを打っておきます。鯉の回遊ルートは意外と規則的なのですが、活性により行動範囲が変わります。例えば、鯉の活性が高ければ行動範囲は広くなり(浅場に来やすくなり)、反対に低ければ行動範囲は狭くなります(深場に行きやすくなる)。つまり、浅場か深場かのポイント選択は、言い換えれば鯉の活性が高いか低いか、ということを問うているわけです。だから、自分の予想よりも鯉の活性が高い可能性がある場合は(夏場の早朝・夕方、雨の後、秋に暖かい日が続いたとき、初春に暖かい日が続いたときなど)、もう一つ手前(浅場)のポイントに捨て竿の仕掛けを打っておくと良い結果が得られるかもしれません。もちろん、捨て竿にアタリが続くようであれば、そちらをメインのポイントにしても構いません。
このように「保険」的な意味合いの捨て竿の使い方もありますが、単発で入ってきた鯉を狙い撃つこともできます。鯉釣りをしているとポイントよりも手前で鯉が跳ねたり、足元を泳いでいくことがあります。狙っているポイントで釣れていても、こうした釣りこぼす鯉も当然います。そこで、このような目撃がある場合は、鯉がよく通っていく場所へ撒き餌を1投し、捨て竿の仕掛けを投入しておくと、こういった鯉を釣ることができます。浅場に群れで入ってくることは珍しいので、メインのポイントよりはアタリの頻度が少ないですが、さらに釣果を伸ばす要因になります。また、目視だけで釣ることができますので、初心者の方は積極的に狙ってほしいです。
捨て竿の采配で、釣果にも差が出てきます。最初から狙ったポイントで釣れることはそれはそれで楽しいですが、捨て竿でその日の鯉釣りのピースを一つ一つ埋めていくことも楽しみの一つになると思います。
待望のアタリ、そして鯉の取り込み
ポイントを決め、撒き餌をし、仕掛けを投入したら、あとは鯉が自動的に掛かって(アタリがあり)釣り上げます。こちらからアワセ(魚が鈎をくわえた瞬間に糸を引いて、掛けること)を行う必要はありません。鯉は鈎を餌もろとも吸い込みますので、異物である鈎に気付き、吐き出そうとしたときにオモリの重さが加わり、自動的に鯉が掛かる仕組みになっています。そして、鯉が掛かると泳ぎ出し、糸が引っ張られますので(リールから糸が出ていくので)、やり取りに入ります(リールのドラグを緩めて竿立てにセットしておくのはこのため。ドラグを締めておくと竿が持って行かれます。)。また、竿先を見ていると、竿先が小さく揺れることがあります。これを前アタリと言い、鯉が仕掛けに接近して糸が触れたり、また鈎をくわえるも器用に吐き出すことで起こるアタリの前段階のようなものです(前アタリがないときもあります。)。基本的にはそのまま待っておけば掛かりますが、掛からなければ何らかの問題があります。例えば、鈎掛かりを完了させるためのオモリの重さが加わっていないというケースが考えられますが、これは上記通りに仕掛けを作成していれば問題はないはずです。また、次に注意してほしいのは、竿先から出ている糸の方向です。河川の場合、仕掛けに対して下流側から鯉が入ってきます。しかし、糸が流れで下流側へなびいていると、仕掛けへ向かっていった鯉が糸に触れて、警戒します。鯉は餌を食べたいのだけど糸に触れては離れ、再び下流側から泳いできて糸に触れては離れを繰り返しますので、結果として竿先が何度も揺れるということになります。この事態を避けるために、待ちの間は糸を張っておきましょう。ピンピンに一直線になるまで張っておく必要はありませんが、あまりに糸が弧を描く場合はもう少し上流側から仕掛けを投げ入れて糸が受ける流れの抵抗を低減しましょう。
下の動画はぶっこみ釣りにおける鯉のアタリです。このように鯉は自動的に掛かります。リールから糸が出たところで竿を持ち、やり取りに入ります。少し見づらいですが、竿先をよく見ていると前アタリも映っています。鯉の掛かり方については、別のページでさらに詳しく説明します。
鯉が掛かったら、竿を持ってドラグを締めます。大物釣りである鯉釣りでは、ドラグ調節が非常に重要です。竿と糸のバランスを考えドラグを締めすぎず、緩めすぎず調節し、鯉の引きに対応しなければなりません。ドラグを締めたら、鯉の様子を見ます。まだ走るようなら無理にリールを巻いてはいけません。反対に、もうあまり引かないようでしたら鯉を寄せにかかります。鯉を寄せるにはポンピングと呼ばれる技が使われます。これは大物釣りでは大体使われる技術です。ポンピングは、竿を持ち上げて、その粘り(反発)を利用して相手を引き寄せ、再び竿を倒した時に生じるラインの余裕を巻き取ることです。これを繰り返す事で鯉を引き寄せます。そして、鯉が近くに寄ってきたら手前で少し引き合い、空気を吸わせて鯉を疲れさせます。
タモ入れは慎重にいきましょう。鯉がまだ元気なうちにタモ網へ入れようとすると驚いて、再び走られ糸を切られてしまうことがあるからです。鯉があまり抵抗しなくなったら、タモ網に入れます。こちらから掬いにいくのではなく、頭から誘導して網へ入れるのがコツです。網に魚体が収まったら、網の枠を持ち、陸に上げます(柄で持ち上げようとすると折れますので、ご注意)。これでフィニッシュです。
ランディング後の余韻
鯉を釣り上げたら、傷がつかないような柔らかい場所においてあげてください。鯉を保護するアンフッキングマットという専用のマットやシートを利用したり、草の上に置きましょう。とにかく鯉の体表を傷つけず、粘液を落とさないことが重要です。鯉は生命力のある魚ですが、ここからの作業はできるだけ早く、そして丁寧に扱ってあげてください。まず、鈎を外します(鈎が口の奥のほうで掛かっていたら、ペンチか鈎外しで外します。)。ここでリリースしてもいいですが、写真やメジャーで大きさを測り、記録としてに残しておくと良い思い出になります。
鯉を横たわらせて写真を撮る場合、鯉の隣に竿やペットボトルなど比較対象を置くと大きさが良くわかります。また、持って撮る場合は腹周辺は内臓がありますので避け、基本的には頭と尻鰭の辺りを持ち撮影します。
リリースするときは、まず鯉を水中に入れ、しばらく支えてやります。鯉が尾を振りだしたら軽く沖へ押し出してやります。
最後に
以上、ぶっこみ釣りの基本的な流れを紹介しました。ボリュームとしては多くなってしまいましたが、鯉を釣っていただくにはこれだけは覚えてほしい最小限の内容です。正直なところ、ここまでのボリュームになるとは思っていませんでしたが、読み返してみるとそれだけ最初のハードルが高い釣りである表れなのかもしれません。また、思った以上に論理的な釣りであるとも思いました。しっかり押さえるべき点を押さえれば、簡単に釣ることが可能です。初心者の方は一見難しいなと思ったかもしれませんが、まずは一つ一つクリアしていき、釣りを組み立て慣れるところから始めていただければ思います。ここでは主に文字で鯉釣りを伝えることしかできませんが、ぜひチャレンジしてみてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。