私のアンプのグレードアップ
窪田登司/MJ誌との決別
 
 長い間、私のアンプを信頼し、支持し、グレードアップに貢献してきてくれた読者の皆様に心より感謝申し上げます。
既に発展的廃刊となっておりますNHK出版「電波科学」で三十数年以上前に発表したV−FETアンプを製作された読者が現在でも稼働しているとお便りを頂戴することがあります。本当に嬉しい限りです。
 
 その後、音楽之友社ほかいくつかの雑誌や単行本で、過去何十台と設計、製作し発表してきた半導体アンプですが、現在は次の5モデルが最も読者に人気のあるもので、私は、もうこれ以上のものは作れないと考えているアンプです。
これらは世界に類を見ない新型回路であり、私の考案したものです。
 本ホームページでは、若干の変更と注意をまとめますので、参考にしてください。
 
 ちなみに、最も人気の無かったワーストベスト1は例の「終段NO−NFBパワーアンプ」です。私の発想は「スピーカーの逆起電力を電圧増幅段に注入させない」 事であり、そのこと自体は成功だったのですが、しかし、この終段部を駆動する信号インピーダンスは低くないといけないし、ファイナル段のアイドリング電流は充分に流してA級動作させたいし、AC100V電源の変動はもろに中点電位に影響は出るなど、内容的にはかなりの “通” でなければ使いこなしの難しいアンプでした。
 アメリカのカウンターポイント社が採用してくれたし、日本ではパイオニア(株)もNON−NFBアンプ(回路は私のものとは異なる)の素晴らしいものを発売した事がありますが、やはり流行の一端だったのかも知れません。懐かしいアンプの一つです。
 
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推奨モデル1 定インピーダンスATT内蔵正相型MOS−FETプリアンプ(96年1月号)
 
 
※1 初段と2段目のトランジスタをパラにして動作電流を大きくしました。
※2 位相補正回路にも若干の改良を加えました。
※3 初段側に挿入していた電源インピーダンスを下げるケミコンは、ファイナル段側に変更しました。
   そして470μFや1000μFなど多数のケミコンを並列に接続します。
※4 20kΩ定インピーダンス型ATTを使用しない場合は、初段のゲートリーク抵抗は20kΩではなく、680kΩにし、VRは100kΩ〜250kΩ(B型)にします。B型(直線型)の方が良いです。
 
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推奨モデル2 位相反転増幅型MOS−FETプリアンプ(03年10月号)
 
 
※1 初段と2段目のトランジスタをパラにして動作電流を大きくしました。04年2月号に変更回路を発表しましたが、その後、上図のように入力インピーダンスを100kΩにし、入力回路のインピーダンス補正を取りました。このアンプ回路は通常の正相型と異なり、電流入力&カレントフィードバック型であるため、VRのミラー容量の影響が少ないメリットがあります。
※2 スイッチング電源を使用しないで、通常のアナログ電源(私のFET定電圧電源推奨)でもよろしいので、ご自分の持っているレギュレータを有効に生かしてください。
 このプリアンプは入出力が逆位相であるため、発振の心配がなく、きわめて安定な動作をします。
 注意としては、高インピーダンス回路であるため、周囲の静電ノイズの影響を受けやすいので、シールドは厳重にしてください。
 
※3 なお、同号112ページ図6は極めてヘンな図ですが、私は編集部に、こんなヘンな図は提出はしなかったです。これはアルバイトのM氏が勝手にこういう図に改ざんして掲載したものです。同誌はこれ以外にも私の原稿を改ざんし、しかも内容が私の述べている事とは異なる間違った言い方をする事がたびたびありました。図面でも間違いを平気で載せていました。関連メーカーの担当者や読者諸氏は、筆者の私が間違えたと思ったでしょう。そうではないのだから、ここではっきり明言しておきます。
 
 例をお話すると山ほどありますが、さすがの私もキレた例を述べておきましょう。
オランダのコンセルトヘボウを取材して記事にしたものです。コンセルトヘボウは築100年以上経て地盤沈下のため建物全体が傾いてきたので、1998年に大改造しました。鉄筋コンクリートの打ち込みから楽団員の食堂やシャワー室まで、それこそ「大改造」、「改造」だったのです。それらは記事をよく読むと分かります。通訳の方も「大改造」、「改造」と言いました。
 ところがです。この「大改造」、「改造」がことごとく、「大改装」、「改装」に改ざんされていたのです。
ちなみに編集長は文系だから「電圧動作」と「電流動作」の違いが分からないのはともかく (ある記事でそれを証明する “事件” がありました)、「改造」を「改装」に変えてしまうとは、いささか私もキレにキレました。しかしK編集長はヘラヘラ。
 さらに私を誹謗中傷する記事を他の筆者が書くと、それをそのまま同じ号に載せるというK編集長の心無さ。
 
 もう一件、関連メーカーに多大の迷惑をかけた事件を書いておきます。その関連メーカー全社に次の手紙を送りました。
 
『・・・社 広報部 ・・・様 前略 MJ誌月号で重大な懸案事項がありますので、お知らせしておきます。小生の担当したプリアンプ特集で、方形波を使った波形が載っていますが、あれは編集部のK氏が勝手に抜き打ちで測定して掲載したもので、私は一切関わっていません。あんな50kHzという方形波でレスポンスを獲るなどもってのほかです。ところがまるで私が測定して掲載したようなコメントやキャプションがありますが、全くもって私は関与してないので、怒っています。どうもK氏は私の原稿や図面を勝手に変えたり、そしてメーカーを陥れるような事を平気でやるので、私は怒りが収まらない状態です。
 以上、“MJ誌7月号の抜き打ち測定されて怒っているメーカー” が私に矛先を向けたので、「私ではない。K氏が勝手にやったのだ」ということをお知らせしておきます。窪田登司 草々』
 
 追伸:おかしな一篇。ある読者が私への質問の手紙を編集部に送りました(表記にはきちっと窪田登司先生宛とありました)。当時の編集長N氏はそれを開封して、私へ転送してきました。中の手紙の最後に「些少ですが、ご教授料として千円同封しておきます」とありました。しかし、千円は入っていませんでした。
 日頃懇意にさせて戴いていた日本のオーディオ界の大御所であられた故若林駿介先生に、これらの話をしたら、「何と非常識な!不愉快極まりないことです」と憤慨されていました。
 
 ついでですので、もう一件、私の歴史の1ページとして述べておきましょう。
 
上記編集長になったK氏は編集の仕方のイロハのイの字も知らなかった件です。雑誌(書籍も同様)を開いてみましょう。どの雑誌も人物を載せる時は、左のページでは顔は右ページ側に向いています。右側のページに顔を載せる場合は左ページ側に向いています。つまり必ず顔は内側に向けるのです。新聞では友好国の首脳の場合、互いに向き合ったようなアングルですし、意見の違う仲の悪い首脳の場合、そっぽを向いた方向に顔を向けて載っています。これ常識。
 ところがです。毎年私を含めて3人、某特集の審査員として顔写真が掲載されるのですが、3人の顔の向きが無茶苦茶。あさっての方を向いているのです。それが何年も続きました。私は我慢の限界を超えましたので編集長に「顔の向きが違いますね」と優しく言ったのですが、まだピンとこなかった様子だったので、もう少し詳しく上記の “常識” を説明しました。その時の編集長の態度はヘラヘラ笑っただけです。
 その後も、次の年の特集でもM氏とK.氏があさっての方を向いていた。そして私の顔だけは毎回一番下ページ底になっていました。
せめて私の記事のタイトルの所にしてくれればいいのに。
 
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 NHK出版の編集部の方々は本当に頭の良い人々で編集の仕方を心得ていたし、相互信頼の深いお付き合いをしていました。また音楽之友社も見開きカラーの目玉ページを全面的に私に任せてくれて連載させて戴きました。懐かしく、そして嬉しく思い出されます。
 
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推奨モデル3 位相反転増幅型MOS−FET 50Wパワーアンプ(04月号)
※1 ファイナル段のアイドリング電流の調整はVRで行いますが、調整範囲が狭い場合は、プリドライバー段の電流を少し下げてください。3.9V3.5Vくらいにすれば、電流は約5.7mAから約5.1mAくらいとなり、調整範囲が広くなります。
※2 プリアンプを使用しないで、CDプレーヤなどからダイレクトに本機に入力する場合は、入力回路は上記プリアンプの入力回路のように電流入力としてB型VRを付けます。
※3 微分位相補償回路10Ω0.047μF はSWの後部(スピーカー側)ではなく、前部(パワーMOSのソース側)に入れてください。その方が電源スイッチを入れた瞬間の安定度が向上します。なお、0.047μF6800pF〜0.01μFでも本機の安定度に変わりありません。私の実験でも読者のご報告でも同じでした。
※4 電源は、スイッチングレギュレータが圧倒的に良いという読者の報告を頂戴しています。スイッチングレギュレータは定電圧電源ですので、従来の非安定アナログ電源よりも有利となりますね。月号発表のレギュレータを推奨します。
(従来の非安定アナログ電源ではリップルが大きいので、本機のような高インピーダンス回路ではハムノイズが大きくなり不利でしょうね。ただ、お一人「大丈夫です。窪田アンプは全段上下対称型プッシュプルなのでリップルノイズはキャンセルされるので気になりません」というお便りを頂戴した事があります)
 
※5 余計な話ですが、本機にまつわる嫌〜な思い出を書いておきます。アンプ完成後、写真を撮るために自宅から編集部まで移送するため、編集部では宅急便を使わないで赤帽の軽トラックをよく使っていました。本機もその赤帽さんでした。で、その後私が編集部に出向いてびっくりしたのです。内部の放熱器や、何個も並列にして接着剤で固定していたフィルムコンデンサなどがガタガタに外れて、無惨な様相を呈していました。編集長は「放熱器をL金具を使って固定したんですか!L金具なんか外れて無くなっていましたヨ」と吐き捨てるように言って私から離れて行きました。
 あの大きな放熱器を小さなL金具で留めるようなヤワな作り方をするわけはないです。きちっと私はシャーシーの下から所定の固定ネジやワッシャーなどで固く留めてありました。しかし、あの赤帽運転手が雑な運転をして、荷台の上で本機が転げ回ったに違いないのです。
 
 結局、本機は私が自家用車で持って帰りました。電源を入れる時、怖かったです。どこかがショートしたり、外れて故障してはいないかと。大丈夫だったのでホッとし、もと通りがっちりと各部を固定しました。
 
 なお、その後、MJ主催のオーディオフェアーがお茶の水で開催されたのですが、本機は私がタクシーで持参し、帰りまで、(時間〜時間ほどでしたか)、そのタクシーに待ってもらい、帰宅したのでした。註:多摩のタクシーだったので都内では営業出来ないので、待ってくれました。待ち時間の料金は無料にしてくれました。もちろん往復の料金は支払いましたし、その領収書を編集部K氏に渡しました。現金の支払いがある事になっていましたが、忘れたのでしょうか、私への現金支払いはなかった。
 
 もう一件、このフェアーで悪どい思い出があります。誠文堂新光社刊の書籍の直売コーナーがあったのですが、多くのオーディオ関連書籍があるのに、私の本は冊もなかった。「僕の本がないですね」、「忘れてた」。これがM氏との会話。「忘れてた」のではなく、わざと持って来なかったのでしょう。そむけた顔と態度を見れば<バカ>でも分かる。
 このアルバイトM氏は以前から私に対して偉そうな口の利き方をする人だった。最も激しかったのは、記事を入れたフロッピーディスクを持参した時だった。あまりにも態度が悪く私を小馬鹿にするので、腹が立ち、一瞬フロッピーを真っ二つに割ってごみ箱に放り込み、図面も引きちぎって、写真も引き破って捨てようかと思った。しかし、手が震えるほど我慢して「ダメだ、ここでそういう事をすると二度と原稿依頼は来なくなる。我慢しろ!」と自分に言い聞かせて、無言で帰路についたことがあります。昔の事を思い出して書きましたが、もちろん彼は、私が腹が立つほど、私をなじったとは思ってないでしょう。そういう男だから。このM氏は私と同年配。
 
 なお、編集部全員がなぜ私をバカにするのか、私は知っているので、ここで、それをお話しします。それは私が自分のアンプの事を
「窪田アンプ」と言ったからです。N編集長が存命中(その後、発病後1週間の突然死だった)、私に、その事を言いました。「窪田アンプというのは他人が言うもので、自分から窪田アンプと言うのはおかしい」と。その通りですね。だから記事の中では一言も「今回の窪田アンプは」などバカげた書き方はしていません。常識ですよ。
 例えば物理学部門でも同じです。私はc’=c−Vcosθの発見によって「相対論は間違っている」と声高々に挑戦してきましたが、拙著の中で「窪田理論によれば」なんて馬鹿な書き方は一切していません。常〜識です。
 なぜMJ編集部内で「窪田アンプ」と自分で言ったかといいますと、競争相手が二人いたからです。金田アンプと安井アンプです。
それぞれ独自の回路を工夫していました。だから「自分のアンプは」という代わりに「窪田アンプ」と言ったのです。ただそれだけです。ここから派生したのが、編集部全員(当時3人、うちアルバイト1人M氏)、が「窪田はバカだ」としたのです。
 
 話せば長くなりますが、まだあります。あるアンプを製作して発表した時でしたが、プリント基板に取り付けていた電解コンデンサーの容量を2倍にしたかったので、基板の裏に、もう一個同じコンデンサーを並列に取り付けていたら、アルバイトM氏が強引に基板を外して裏を見たのです。「なんだ、こんな事をしているのか」だった。「やってはいけないのですか」と言いたかったが、我慢して何も言わなかった。基板を見れば分かるはず。基板上では狭くて2倍の容量の電解コンデンサーは付けられない。だからこうなったくらい理解して下さいよ。記事本文にも、そう書いていた。
 
 思い出したので、もう一件書いておきましょう。これは私のミス大です。隠しておけばよかったと思う。K氏が拙宅に来た時です。二階に案内したときの事。ある実験をするため大型の電解コンデンサーをシャーシーから取り外す途中だったのを、そのままにしていたのをK氏が見たのです。「大きな電解コンデンサーを、こんなブラブラでいいのですか」、「いや、ちょっと実験のため・・・」。
ちゃんと説明すれば良かっただろうが、内容を金田さんや安井さんに知られては困る、という私の欲による失敗です。雑誌掲載は早い方が著作権保護で守られます。遅いと真似をした事になります。
 なお、赤帽の軽トラック事件を先に述べましたが、あれは、この電解コンデンサーブラブラ事件後の事です。
 
 まあ、そんなこんなでMJとの付き合いは尋常ではなかった。一番信頼できるのは読者とメーカーです。
 
 読者の知らないトピックをお知らせしておきましょう(2023年5月29日記)。私が2005年以降、MJ誌で書かなくなったのは、私から辞退したのではありません。編集長K氏が私を首にしたのです。首にした事を知ったのは、なんと某社の高級アンプを取材していた最中でした。
 K編集長から、その広報部担当者に電話があり、戻ってきて:「窪田さん、先生クビになりましたよ。いまK編集長から電話がありました。MJ誌と何かあったんですか?」、窪田:「いや別に。そうですか。クビになっちゃったですか」、担当者:「いま取材されているのも無駄になりましたね」、窪田:「ですね」、担当者:「でも、今後とも宜しくお願いします」、窪田:「もちろんです」
 
 この頃、すでにパワーアンプの素晴らしいのが完成していて、特性、音質とも満足の立派なものになり、製作途中の写真もあり、原稿も書き終わり、ホッとしていた時だった。帰宅後、速攻でSDカードに格納していた原稿も写真も回路図も特性図も削除。アンプだけは最後の作品として持っている。日の目を見なかった幻の位相反転型パワーアンプはこれです。 
幻の位相反転型パワーアンプ
 
シャーシー裏の電源部:スイッチング電源
 
 このHPのタイトルが「窪田アンプのバージョンアップ」となっていましたが、バカっぽいので「私のアンプのグレードアップ」に変更しました。
 
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推奨モデル4 位相反転増幅型MC専用フォノEQアンプ(04年7月号)
 回路変更や定数変更などはありません。このアンプは高インピーダンス電流出力となっているので、負荷抵抗は100kΩ以上必要です。
 もし、低音が出過ぎたり(出なかったり)、あるいは高音が出過ぎたり(出なかったり)するようであれば、ご自分の装置全体のバランスを考えてRIAA定数を少し(ほんの少しだけ)変えてみてください。タイムコンスタントの取り方は同号をご覧ください。
 なお、スイッチング電源を使用しないで、通常のアナログ電源(窪田式いや私の発表したFET定電圧電源推奨)でもよろしいので、ご自分の持っているレギュレータを有効に生かしてください。
 この世界初・逆相EQアンプはレベルVRを上げたままMCカートリッジの脱着をしても、ショックノイズが出ません。オーディオ仲間に実演をして見せてあげてください。「えっ!」と、びっくりする事、請け合いです。
 なぜノイズを発生しないのか。これは信号に対しては所定の設計値インピーダンスで動作しますが、直流に対してはほぼ0オームとなっているからです。
 
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追記:知人でもある同業者(オーディオ評論家)が、「位相を反転して音が良くなるというのは、間違い。良くなるはずはない。位相反転出力を装備していたCDプレーヤが最近は見られなくなったのは、そのためだ」という内容の事を述べていたようですが、氏はアコースティックな位相の反転と、私の位相反転型増幅形式の相違を勘違いしておられるようです。
 氏の述べておられる事柄は一面で正しいです。それは、スピーカから出てくる音波の位相を反転しても音質そのものが良くなるはずはないのです。部屋のアコースティックな影響で変わるだけです。
 私の位相反転型アンプは、増幅形式が入出力逆位相であるものです。位相を反転して増幅した理由は、入出力が逆位相であるため、発振の心配がなく、きわめて安定な動作をすることと、従来の正相型アンプとは異なるサウンドで、遠近感のある“ワーッと眼前に迫ってくる再生音”になる事を見出したからです。読者の皆様がもし何らかの誌上で上記のような記述を見かけたら、アンプの増幅形式そのものの違いをご理解ください。
 
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追記(06年2月10日)
推奨モデル5 オールFETプリアンプ(99年3月号)
 99年3月号132ページ図6の「オールFETプリアンプ」も根強い人気のある正相型プリアンプです。これも世界初、筆者考案の回路です。
 逆相型(位相反転型)とは再生音の質は違いますが、低音のあまり出ないスピーカー或いは固めのサウンドのスピーカーの場合には、本機はバスブーストによって快適な低音を得る事ができます。
 
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 多くの読者から、私が自宅で個人的に使用しているCDプレーヤーとスピーカーは何でしょうか、という問い合わせがよくきます。公開しておきましょう。
 
 デノンのDCD−SA1(¥約55万)です。低音の重量感から高域の美しさまで、きわめて優れた描写力のあるCDプレーヤーです。
 デノンのCDプレーヤーは日本コロムビアの “音楽のわかる” 技術陣およびその歴史あるPCM技術が投入されたもので、普及タイプから高級モデルまで、一貫した “音楽性” が息づいています。またPMA−SA11などのアンプもUHC−MOSがファイナル段に使用されている優れたものです。
 
 スピーカーは英B&Wの旧マトリクス801です。ビートルズの録音で有名なアビーロードスタジオでも使われていたモニタースピーカーです。“音楽の再生力” に関しても文句なし。陶酔状態に陥ります。
 最新のB&Wはわが国ではマランツが輸入販売の総元締めとなっています。お問い合わせは(株)マランツコンシューマーマーケティング お客様相談センターTEL03−3719−3481まで。
 マランツのWebサイトは http://www.marantz.jp  
 
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 日本ビクター(株)の系列にある『ドリーム21』というCDブランドをご存じでしょうか。プロデューサーは所 忠男氏で、この方はビリー・ヴォーンやニニ・ロッソなど、多くの著名なアーチストの録音を手掛けた日本を代表するレコーディングエンジニアです。
 先日、このドリーム21の「ビリー・ヴォーン・ライブ・イン東京」(DRCD1681/¥2,500)を買ってきました。のっけから“浪路はるかに”で感動、感動!
 この録音は1972年5月28日東京新宿厚生年金会館大ホールでのライブです(観に、聴きに行きました!)が、素晴らしい臨場感と空気感の溢れる音楽空間がリスニングルームいっぱいに拡がるアルバムになっています。もともとのマスターがサラウンドCD−4用の臨場感を記録しているので、それを現代に生かした所 忠男氏の手腕は見事というほかありません。音楽ファンはもちろんハードマニアのあなた、ぜひ聴いてみてください。
 またこの『ドリーム21』のシリーズには、1973年7月にビクター第1スタジオで録音したペレス・プラード楽団の「栄光のマンボ」(PRCD−1672/¥2,500)などもありますが、シリーズのカタログ請求はTel.03−3253−2170、
Fax.03−3253−2175まで。
  DREAM21のWebサイトは http://www.dream21.co.jp
 
1972年〜1973年というと、私がNHK出版「電波科学」から評論家としてデビューしたばかりの駆け出し新参者だった頃です。
・・・私を育ててくれた当時の編集長・谷 明さん(私の生涯の恩人です)、そして香月さん、秦さん(のちのエレクトロニクスライフ誌の編集長)、富田さん、宇佐さんなど優秀な編集スタッフの皆さんに改めて、ここで心より感謝、御礼申し上げます。/窪田登司)
 
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音質と音楽再生力について
 
 たびたび私は “音質” と “音楽の再生力” とは異なるものだという事を述べています。ここで簡単にそれを説明しておきましょう。スピーカー、アンプ、CDプレーヤーなど共通の話です。
 
 最近の高額オーディオ商品(えッ?と思うべらぼうな値段の付いている、まさに “高額商品” )には、残念ながら “音楽の再生力” に優れた製品はあまりありません。それなのになぜ “高額” なのかは後述するとして、製品開発者が「音楽そのものの理解に乏しい」のが最も大きな原因です。
 分かりやすい説明をしますと、
※1「もの凄くクリアで、音の立ち上がりと粒立ちがシャープで、ヌケが良く、スカッとして、ベールを何枚も剥いだようなサウンドだ」と評するのと、
※2「コントラバスの弦の粘りとバイオリンの弦の艶が素晴らしいディテールの表現を奏でる。伴奏が生き生きと波打つようにメインのソロ楽器を浮かび上がらせている。音楽にのめり込む」とは、明らかに違いがあるでしょう。
 前者※1が “音質” だけを追求している “高額商品” です。森の木々の葉っぱを全部落として、まるでレントゲンで骨組みだけを見ているような、見通し抜群の、まさにベールを何枚も剥いだようなクリアなサウンドです。短調の暗いドロッとした粘りのある曲を、演奏者もそのように演奏し、録音もしているのに、再生音たるや、「低音の制動力抜群、スカッとして立ち上がりと粒立ちの良いクリアな中音、高音域のピシッと出る明るいサウンド」になっています。
 つまりベールに描かれた模様までも剥いでしまっているわけです。これでは作曲者やアーチスト、録音エンジニアの訴えは出てこないです。
 森の木々には様々な大きさの葉っぱがあり、そして風に揺られているそれらの葉っぱが、ベールに描かれた模様の向こうに見える、そういう(※2)再生力のあるオーディオでありたいのですが、最近は音楽の感動を伝える製品がめっきり少なくなりました。
 
 “高額” となる理由ですが、ベールを何枚も剥いだような見通しの良いシャープなキレの良いサウンドにするパーツが高価だからです。音質偏重主義が「シャープな立ち上がりで、キレが良ければ良いはずだ」と思い込ませているのです。
 
 講師として務めている音響芸術専門学校の学生が先日、拙宅に遊びに来てくれまして、オーディオの神髄をデジカメの画質にたとえて説明しました。こうです。
 本当に良いデジカメの画像は自然な色合いであることは言うまでもない事で、且つ、受光面積が大きいほど、そして画素数が多いほど、滑らかな画質なのに細部はシャープに描写されています。“なめらか” と “シャープ” は一見して相反する表現ですが、これを実現しようと努力しているのがデジカメのメーカーです。
 ところが最近の高額オーディオ商品は、そういう努力をする事なく、シャープ一点張の “音作り” をしているのです。いわば、
( 極端な言い方ですが )“面積の小さいCCDで画素数の少ない画像をシャープネスをかけてチラチラキラキラにしている” のが最近の高額オーディオ商品です。線が細く冷たく無機的で固いのを “これがデジタル時代の高音質だ” と宣伝しているのです。
 
 この学生は、位相反転型アンプの滑らかな深みのあるサウンドを堪能してくれました。そして「何時間聴いても耳が疲れない。音の遠近感が目の前に見えるようです」と語ったのが印象的でした。
 
 ちなみに、私のアンプのファイナル段は、トランジスタでも真空管でもありません。MOS型という日立製のパワーFETです。これが最も音楽再生に適していると言うつもりはありません。回路の特徴だからです。
 もっと良いデバイスでは、ヤマハのFETがあります。しかし、このFETを使いこなしているのはヤマハだけです。しかもプロ用だけで、コンシューマーでは存在しません。
 ちなみに真空管は “柔らかな音だ” とよく言われるが、そんな事はない。ヒーターが赤く光っていて大きな電力を食っているので、そう感じるだけで、ひずみを分析器で見てご覧。奇数次高調波が物凄く多い。そのため耳が刺激を受けて尖った音、つまりシャープな音になっています。決して “柔らかな音” ではありません。ただしオーディオ用3極管は低音のダンピングが良好で、高域は軟らかさが出て聴きやすいです。
 送信管はオーディオには不向きです。高周波を変調するためのものですから。似て非なるものというのがあるでしょう。それです。
製作した読者が「聴いてみてください」と言うので、ご自宅に伺ったことがあります。豪華な食事付きで、お土産まで頂戴しましたが、残念ながら歪み発生器でした。<(_ _)>
 
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心よりご冥福をお祈り致します
 
 06年6月23日、今田智憲さんが肺炎でお亡くなりになられました。82歳でした。東映動画の元社長で、会長であられた今田さんは、「銀河鉄道999」や「ドクタースランプアラレちゃん」などヒットを飛ばし、日本のアニメ界を牽引された方です。
 私の自伝§18にも掲載しましたので、ご覧になると光栄です。
 
 お付き合いをさせて頂いていたのは、言うまでもなく “オーディオ仲間” であり、何度もご自宅にお邪魔し、オールホーン型の超特大コンクリートホーンウーハーに魅せられての “オーディオ談義” をいたしました。私が講師として勤めている音響芸術専門学校の学生も何人か連れて行って聴かせたものです。
 長い間、バッテリー駆動のパワーアンプを使用されていたのですが、この10年ほどは整流電源にされていました。私の高周波電源(スイッチングレギュレーター)によるアンプを聴きたいと申されていたのですが、とうとうその機会もなく逝かれてしまいました。
 書棚には、私の著書も数冊置いておられます。行くたびに嬉しく見ていたのですが、寂しい限りです。また、ご使用の大型テレビは私がお世話したものです。最近の数年間はBS・Bモードで録画したライブやスタジオ演奏のライブラリーをDVDに整理されるなど、楽しみを最期まで音楽に求められていた今田さんを思い出すにつけ、涙が出てやみません。
ご冥福をお祈り致します。窪田登司
 
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 お名前は分らないのですが、美しい写真入りで素晴らしいアンプの製作記事が
 
 
に掲載されています。多くの自作ハードマニアが参考にされています。ご覧ください。
 この「CR−NF型」というのは昔からある方式でして、私が特に考案したものではございません。製作者が「窪田アンプ」と呼んでくださっているのは、アンプ回路の初段が私の考案した「抵抗1本で上下のFETのバイアスを同時に掛けることの出来る対称回路」であるために呼称されているのです。
 このサイトは写真に見る通り、非常に精密なパーツが使われています。私が製作したオリジナルより優れたアンプになっていると思いますよ。
 
 愛知県の酒井泰雄さんのブログ
 
 
に、小生のオールFETプリアンプと電源もオールFETにして、特性図が載っています。
これに至る経緯も多くの関連サイトに披露されていて、ハイエンドマニアは参考にされると良いと思います。ご覧ください。
 
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