「あっという間だったね」
リビングの背の低い机に突っ伏し、みそかは言った。
「本当、労って欲しいね」
言ったのは、みそかの真向かいに座った少年だ。縁のある眼鏡をかけていて、見るからに不機嫌だ。
そこをとぼけた口調で、みそかは返す。
「あら、まあ、唯音ってばおかんむり?」
少年――
「アネキのそういうところ大っ嫌いだよ。俺」
唯音は机の上の小皿から、和菓子を一つ手に取った。花の形をしたそれを口に放り込み、しかめ面を一瞬緩ませる。
「今日は大当たりだね――ほら」
みそかは弟が顔をほころばせたのを見て、自分の取り分を押しやった。唯音はしばし目を瞬かせ、疑わしげに姉を見る。
そんなに信用がないか、自分は。
「お姉ちゃんダイエット中だから、食べても怒んないよ」
無論嘘である。
「え――」
「それとも何か、お前は姉の善意を疑うというのか?」
そこまでまくし立てれば、流石に唯音も反論できないらしい、不承不承みそかの小皿を受け取り、その中のまんじゅうをほおばると、至福の表情を浮かべた。
珍しい表情だ。どれくらい珍しいかと言えば、まず明日矢が降るかと我が目を疑い、次いでその表情を写真に納めて、両親に――ついでに親友の樹夏にも――見せてあげたいと思ったほどだ。
ともあれ、この騒動で一番頑張ったのは唯音だ。「姉だから」ひいき目に見ているのではなく、事実だ。
自分がキナコと動いている間も単独で動いて、「アヤシイ男」の正体を明かしたのが最も大きい。
A.m.の居場所を突き止め、しかも自分たちが辿り着くまで時間稼ぎをしてくれていたのもこの唯音――クロである。
樹夏との約束の時、みそかが定時に間に合うよう、急きたてたのも彼だ。
結局のところ、この騒動で一番苦労したのは唯音なんだろう。
――あ、ひいき目が入ったかも。
まあいいや。まんじゅうを食べ終え、読書を始めた弟をちらと見て、みそかは座椅子を枕に寝転んだ。あまり行儀はよくないが、他にすることがない。
おやつを食べていないせいで小腹が空くけど、そこは意地だ。
「アネキ、ほら」
滑るような音の直後、みそかの頭に何か異物が落ちてきた。
「何?」
飛び起きれば、それはカステラだった。
「さっきからなんか、獣がくうくう哀れだから」
咄嗟に腹に手を当てる。確かに唯音の言うとおり、獣の哀れな泣き声のような音が、さっきからしていた。
「アネキの胃袋は無駄にでかいんだから、太ることはないでしょ」
「唯音、なに殴られたいの?」
「別にぃ?」
唯音の慇懃な態度に、さすがのみそかも堪忍袋の緒を切らす。
「よし殴る! この不作法者め! 絶対に労ってやんない、『お疲れ様、唯音』なんて絶対に言ってやるもんか!」
「は? アネキに言われたってむしろ鳥肌が立つだけなんですけど。『ありがとう姉さん』なんて、死んでも言わねー!」
かくて、どうしても素直になれない彼ら姉弟の