モルトを発芽させる。

モルトが麦芽になるまでの工程
   ここから実際にウィスキー作りを記載していきます。   
   大麦は、発芽することで酵素が生成されます。この酵素が大麦のデンプン質を糖に タンパク質をアミノ酸に変化させます。
   これがウィスキーの大元となります。このような工程を得た大麦をモルトと呼び大麦をモルトに変える作業を
  モルティング
といいます。  

工程NO 工程名 役割
1 収穫 スコットランドでは春大麦を使用する。大体8月くらいでしょうか。
2 乾燥 収穫した大麦の含水率は16〜20%ほど。さらに水分が13%以下になる
まで乾燥する。
3 保管 品種によりますが通常大麦は収穫してすぐには発芽しないので
2〜3ヶ月休眠期間をおく。
4 選粒 粒の大きさによって2〜3段階により分け、大きさを均等にする。
発芽性能や寄生虫テストも行う。
5 浸麦 大麦を水に浸したのち空気にさらす。粒底部分に幼根が出るまで
30〜60時間これを繰り返す。
写真は巨大な浸麦槽

ここで大事な仕込み プロセスウォーターに浸します。
これはその土地で湧き出たミネラルたっぷりの水が良いと
言われていますね。ここでその土地(水)の風味が注入されます。
6 発芽 低温多湿の部屋の床に大麦を敷き詰め、攪拌し空気を与えながら5〜7日程度おいて発芽させる。
写真はフロアモルティングの様子です。 モルトスターと呼ばれる職人が
このように4〜6時間毎にひっくりかえして空気に触れさせます。
またこの作業では、麦の上下の温度差をなくす事と 根っこがからまないようにする事も
含まれています。
2/3程度芽を伸ばして乾燥作業へいきます。
現在この作業は委託化が進み自社でこの作業をやっているのは
ハイランドパーク・ボウモア・ラフロイグ・スプリングバンク・ハルバニーの5つのみです。

7 乾燥 大麦の芽の成長を止めさせる為、乾燥塔に移動し熱を加える。
この際の燻煙がウィスキーの香りとなります。
写真は、蒸留所のシンボルと呼ばれるキルンと呼ばれる所です。 キルンは三角錐の
頂点を延ばした形のパゴダ型屋根が特徴ですが1889年にダルウィニー蒸留所で建築家ドイグに
より考案されました。煙を屋外に逃がす煙突の役割もあります。

キルンの上部は、麦芽を敷く部屋があり中央部には燃料を焚く燃焼炉があります。
麦芽の酵素を壊さないように50度〜80度の適温を保ちながら加熱しなければなりません。
結構デリケートな工程でもあります。麦芽の間を通った煙はそのまま塔上から抜けます。
このキルンはウィスキー蒸留所のシンボルでありますが機械化が進み実際に
使用している蒸留所は年々減少しているそうです。
少々さびしい感がありますね。ここで燃料となるのがピート(泥炭)と呼ばれる物です。
ピートについては詳しく別ページで解説していますのでそちらを参照してください。
浸麦して発芽した麦芽は、芽の成長を止める為 一気に乾燥させて水分を4〜5%まで下げます。
ここで乾燥に使う燃料の燻煙を吸収し複雑で様々な香りがここで添加されます。
これがウィスキーの持ち味となります。香り付けを行うとても重要な工程です。
この乾燥工程では以下に述べる香りが麦芽に移ります。
その1
当然ピートに含まれるヒースの香り 1960年代まで ピートの上にヒースの枝を
乗せ燃やしたり 仕込み水にピート層を通過した物を使い香りを強くしていた時代もありました。
その2
海の香り スコッチの中には海の香りお持つ物もあります。
海岸線のピートを使う事だろうと言われています。
その3
スモーク香 乾燥時に焚く燃料の煙による物 乾燥工程ではピート100%ではなく
無煙炭と合わせて使うのがポピュラーだそうです。
ピートはアクセントとして焚く時間 タイミングによりピート香が強かったり 弱かったりします。
8 徐根 再度水分を吸収しないように大麦の根を取り除きます。
取り除いた根は、エコで家畜の餌にしてます。

以上の工程を得て麦芽となります。