愚者の黄金




函館市の東から七飯岳方面を望む。
4月初旬というベストな時期を狙っての探索だ。
ところが実は前年到達に至らず、年度越えの再訪なのである。 七飯岳

湯の川から松倉川に沿って登る。
やがて道はグラベルとなるが、
民家は点在する。 松倉川

かなりの時間登り、小さな廃橋のような小橋を渡る。
この付近に鉱山事務所があったらしい。
このまま更に北上すると三盛鉱山だ。 三盛鉱山

鉱山事務所付近は笹薮の荒れ地で、
辛うじて獣道が見える。
前方の山へ分け入るしかない。 マウス on

コンパスもセットし、遭難に備えつつ廃道を進む。
方向だけを頼りに少しでも歩き易い場所を探す。
積雪に押された激藪がおとなしいこの時期にアタックできなければ、他の季節は絶望だろう。 廃道

藪に埋もれた名も無い沢がある。
まずは谷を巻いて東に進み、
旧精錬所を目指す。 小川


少し開けた谷沿いに、巨大な岩場が現れた。
そこだけ木々が無く、明らかに付近と異なる地帯だ。
近づいてみよう。 ズリ山



これはもしやズリ山ではないか。
付近に落ちている岩石も、
一度溶解し、冷却して固まったような形状だ。 マウス on


抜き勾配の付いた壺に溶解した銅の鉱石を入れ、
冷え固まったズリを捨てたようなものが多数ある。
これは鉱山跡の証人だ。 ズリ


現れた岩場は溶岩のようで、
植生が無く、明らかに自然の地形ではない。
冶金ハ(=matte)かスラグのような形状だ。 坑内


ズリ山を登る。
この地点にズリ山があることは鉱床図では語られていない。
この上部の風景はどうなのだろうか・・・。 登攀


その崖の上部は夥しいズリが広がる台地であった。
残念ながら期待したレールも施設も無かった。
しかしこの付近が鉱山跡の最下流であることは間違いない。 ズリ


ズリに混じり、文字の描かれたレンガが落ちている。
かつて岩雄登鉱山で発見した煉瓦に酷似している。
焼取釜のような精錬施設があったのだろう。 マウス on


ズリ山から再び廃道を登る。
事務所跡から東に進み、ズリ山から谷を南東に進む。
相変わらず廃道だが、辛うじて鉱山道路のような切通しがある。 マウス on


かなり登ってようやく遺構である。
RC造の基台が折り重なる、
かなり大規模な廃祉だ。 マウス on


深い溝と苔むしたコンクリート。
これは鉱床図の語る旧精錬所跡だ。
恐らく硫化鉄時代の名残だと思われる。(製錬所が正しいかもしれない) 精錬所跡


RCの塊にはアンカーボルトが等ピッチで埋め込まれ、
ここにはロッドミルやブレーキクラッシャーが備えられていたのだろう。
精錬所の存在で鉱山跡の確証が得られたこととなる。 精錬所


精錬所からは急激な斜面のため一旦下る。
そこには埋もれたレールが残存した。
12Kgf級のか細いレールに苔が纏わりつく。 レール


続いて斜面から生える配管である。
口径は65A程度で、著しく腐食している。
いよいよ坑口が近いのかもしれない。 マウス on


女岳川の支流はいつの間にか遥か下を流れる。
この先に存在するはずの坑口。
ここからは沢と谷を探し、その最上流を探索する。 女岳川


標高で鉱山事務所から70m程度遡行した斜面で到達した坑口跡。
これは「坑道3号」で間違いないだろう。
残念ながら激しく埋没している。 マウス on


この付近は平場が多く、鉱山跡の雰囲気が十分だ。
しかし、坑口を探索するのは非常に困難だ。
どの斜面も土手も坑口のように見えるし、ひたすら登ったり下ったりの連続だ。 平場


そして到達したのは沢の染み出る斜面である。
位置的にも「坑道4号」付近だ。
足元に留意しながら、進んでみよう。 坑口


坑道4号は3号と同じく埋没していたが、
沢の最上流となっていることが異なる。
足元は結構深い汚泥だ。 マウス on


すこし西にトラバースすると、再び小さな沢を発見した。
これを遡上してみよう。
ここからは一種の賭けの部分もある。 沢


沢がいよいよ痕跡を消す頃に、
到達した斜面に坑口らしき跡を発見した。
GPSで現在地を確認するとどうやら「女岳坑」のようだ。 マウス on


「女岳坑」も3坑・4坑と同様に崩れて埋没している。
閉山後、60年の経過でも他の鉱山跡には残存する坑口があるというのに、
今回は鉱床のせいか、ことごとく埋没してしまっている。 女岳坑


坑口群から離れて、
等高線をトレースするように南東へ向かう。
次のターゲットは旧選鉱所だ。 トレース


再び怪しい平場が現れた。
このかなり上部に選鉱所があったはずだ。
「抜合坑」「1番坑」などの坑口群も集中している。 平場


すこし進むと斜面と垂直に交差する遺構が現れた。
20度近い斜面に崩れた塀のように残存している。
これはなんなのか。 遺構


斜面の上方に向かって遺構は直線で伸び、
まるで道路の縁石のように続く。
これはインクラインの廃墟ではないか。 マウス on


斜面の頂上まで一直線で続く軌道敷は紛れもなくインクラインだ。
レールこそ撤去されているが、
選鉱施設へ鉱石を運んだ遺構だ。 マウス on


頂の上部には平場があり、
巨大なRCの塊が転がる。
建造物こそ無かったが、選鉱所の遺構だ。
そして付近の坑口の探索は徒労に終わってしまった。 選鉱所


インクラインに沿って下ると、
そこはもう一つのズリ捨て場であった。
インクラインの下部もまた棄てられた施設だった。 ズリ山


坑口の3割の発見に至ったが、
それらはすべて埋没していた。
しかし、精錬所、選鉱所、インクラインと充実した探索であった。 鉱区図











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ズリ山
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