バケットエレベーターの痕跡


常盤付近の廃道から入山する。
かつての夕張鉄道 若菜駅東方2q、
海抜426mの冷水山麓に存在した炭鉱である。 アプローチ


古い鉄塔の脇を抜ける。
鉱区内の石炭は良質の瀝青炭で水分・灰分が少なく、
製鉄、ガス、コークス原料用、そしてセメント、汽艦燃料用として使用された。


やがて道は二股となる。
どちらに進んでも炭鉱の鉱区となる。
いつもの決め事で右手に進む。 二股


笹薮の向こうに人工的な雰囲気がある。
採掘の坑道としては、
本斜坑及び三尺層斜坑口が存在したという。 遺構


藪の中には水槽が眠っていた。
特粉と呼ばれる粉炭の生産のために、
水洗選別機が使用されたのだ。 水槽


水槽はイギリス積みによる煉瓦製だ。
原炭を水で洗浄するとともに圧縮空気による比重選鉱により、
比重の大きなズリは沈み粉炭が浮上する。 煉瓦


二手に分かれた道は標高を上げる。
左の道は斜面下の平場に到達するようだ。
帰路は下の道で戻る予定だ。 斜面


更に進むとコンクリート製の遺構がある。
連絡坑に集められた原炭は新潟鉄工製4.5t内燃機関車により、
坑外選炭ポケットに搬出される。 廃祉


搬出された原炭は固定網(25o)によりそれ以上の塊と粒に分離される。
25o以上の塊炭は手選でズリとより分けられ、
インペラルブレーカにより破砕後水洗される。 廃墟


粉炭の用途は固めて練炭になる原料であったり、
活性炭や浄化の用途もある。
更に奥の区域に進む。 ブレーカ


奥にも平場が続くが、遺構は見られない。
昭和35年5月からは、 北炭平和鉱へ 納炭することで、
総合的な合理化を図った。 平場title=


藪の一画に水槽の様な遺構がある。
しかし選炭用にしては規模が小さすぎる。
周囲には何もなく、これ単体の遺構のようだ。


周辺は事務所などが犇めいていた場所のようで、
選炭施設とは少し離れた場所のようだ。
周囲も含めて確認してみる。 コンクリート遺構


正面らしき場所に回ると、
細かなタイルが敷設してある。
これはどうやら浴場のようだ。 浴場


標高を上げると広大な平場がある。

微粉炭の回収率を上げるために採用されたのが、
『弧状ふるい』である。 平場


ズリが散らばる選炭場跡だ。

『弧状ふるい』は くさび型断面の細い鋼線(ウエッジバー)を
一定の間隙幅で敷き、円弧上のスクリーンにしたものだ。 ズリ


付近は人工的な雰囲気が色濃く残る。
周辺を隈なく歩いたが、
残念ながら坑口などの発見には至らなかった。 選炭場跡


弧状ふるい上方から微粒子を含むスラリー(泥漿)を流し込むと、
スクリーンの曲面を高速で流下することでスクリーン面に押し付けられ、
ウエッジバーの切削作用により、網目の1/2 程度までの微粒子が分級される。 鉱区


下りかけた斜面には長大な遺構がある。
斜面の角度に沿ったコンクリート製の構造物だ。
かなり急な傾斜で下っている。 バケットエレベーター


これは恐らく水洗後の微粉炭を脱水するバケットエレベーターの廃祉のようだ。
バケットエレベーターはベルトコンベヤーに多数のバケツの付いたようなもので、
急角度で粉粒体輸送ができる装置だ。 マウスon バケットエレベーター


微粉炭の処理を極めることで、繰り返し使用する選炭水の品質保持や、
ポンプの目詰まり、沈殿池からの微粉回収費も削減に至り、
細かな改善が成果に結び付いた炭鉱であった。 バケットエレベーター






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水槽
水槽

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