鉱水で生きる苔
入山場所からこの状態、
全く道はなく、コンパスとGPSに従ってアプローチを行う。
沢を探し、そこから南東へ進むつもりだ。
沢に向かって進む。
鉱床図には大切坑(おおぎりこう)と中切坑(ちゅうぎりこう)の記載がある。
どちらも左岸、登り過ぎないように注意する。
山中にはコンクリート製の基台と塩ビ管が這う。
これは閉山後の鉱水処理の痕跡だ。
廃坑後にpH3程度の酸性水が流出したという。
深い山中に石垣が残る。
これは鉱山施設のようだ。
鉱水処理は坑道の水位上昇工事が施されたという。
水路が残り、この上流を追う。
坑道内に壁を作り、坑内水位を上昇させ、
これは露出している黄鉄鉱を水没させるのが目的である。
一面苔の一角がある。
黄鉄鉱を水没させることで酸化を防ぎ、
硫酸の形成を抑制することで水質改善行うのである。
どうやら堆積した汚泥の上を苔が覆っているようだ。
苔の層は厚く、
恐らく汚泥は坑口から流れ出しているように思われる。
足元の埋没に十分注意して奥へ進む。
堆積から考えて、
坑口も埋没している可能性がある。
やがて足元に暗い穴が見える。
坑口、中切坑の成れの果てだ。
辛うじて支保が見えるが内部は埋没している。
付近の流れる水路に沿って下る。
目指すのはメインとなる大切坑、
現在の下流域での水質はpH6以上の中性となっているそうだ。
水路のY字型の出会いには赤茶けた汚泥が混入している。
これは坑口かもしれない。
水量も豊富だ。
汚泥の堆積量はすさまじく、深さは40p以上ある。
徳星鉱山にも匹敵する泥量で、
泥質堆積物の表面が酸化して赤褐色となった『赤泥』のようだ。
上流を追うと閉ざされた坑口がある。
予定の大切坑に到達だ。
流れる鉱水は澄んでいるが、堆積した汚泥の量が多い。
付近には鋼材が腐食して残存している。
鉱水処理は収益を伴わない業務として、
閉山後も恒久的な事業となってしまっている場合も多い。
戻る