薄流選別の夢


標高270m付近から入山する。
鉱石搬出が行われたのは廃道から近く、
見えないだけで選鉱所までのアクセスは近いようだ。 アプローチ


入山してすぐに、
ズリが散らばる一角があり、
人工的な雰囲気となる。 遺構



少し登ると斜面にRC製の人工物が散乱する。
選鉱法は各鉱山ごとに異なり、
産出鉱石が同じでも、その選鉱法は各鉱オリジナルとなる。 選鉱所


地面にはトラップの様な丸い穴がある。
選鉱所にはよくある遺構だが、
細心の注意をもって付近を歩く。 穴


斜面の上部にはコンクリート製の施設跡がある。
金は一般に銀との合金で産出することが多い。
その金銀の割合は一定していないが、銀85〜95%の含有となっている。 遺構


斜面に段々と配置されるカスケードの遺構。
斜面上部から原鉱を砕き、粒や粉にした後、
下部で浮遊選鉱や重液選別により金属成分を抽出する。 選鉱所


最上段には振動を伴うミルやクラッシャーの基台が残存している。
金は浮遊選鉱による回収が可能だが、
それは低品位な場合に 青化法 の前段階として施工されることが多い。 ミル



水または酸に侵されやすく反応しやすい卑金属は、
青化液を消費してしまうが、
品位の高い金鉱においては青化製錬の実収率が高くなる傾向がある。 基礎


薄流選別法とは傾斜のある板(デック)上を水平方向に流れる流体に振動を与えると、
軽比重の粒は水流により低い方に流れ、
重比重の粒は板(デック)との摩擦で引っ掛かり振動方向へ排出されより分けができる。 カスケード


薄流と呼ばれる深さによって流速が違うことを利用した選別法で、
底部は流速ゼロ、次に表面付近が早く、中間層が最も流速が早い。
結果的に上流に密度の高い粒子、下流に軽い粒子が配列する。 廃坑


電動機などを設置したであろうアンカーボルトが残る。
本坑の金鉱石に対してはブランケットテーブル法と呼ばれる、
薄流選別法が利用された経緯がある。 アンカーボルト


ブランケットテーブルは大掛かりな装置とならず、
設備費が抑えられ、開放的な機構から窃盗が抑止でき、
繰り返しの使用と異物対策や粗大な粒でも流用が効く。 廃墟


しかし多量の水を必要とし、回収には労力を必要とする。
選鉱所の最上段に達し、
遺構が巨大化してきた。 山中


レールが杭のように流用されている。
金は数種の鉱物に含まれて回収することや、
浮遊選鉱で硫化物を回収、残った尾鉱を青化処理して金を抽出する場合もある。 レール


比重選鉱、浮遊選鉱、混汞法、青化法を組み合わせ、
単種類の選鉱製錬法にとらわれずに、
各鉱山ごとであらゆる方法が模索されてきたのだ。 浮選


今となってはコンクリートの塊が乱立する選鉱所跡。
当時の資料から垣間見える各鉱の技術の粋を集めた巨大プラント。
森の奥の遺構が語る夢の跡であった。 レール






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