アンダーゾンボイズ双頭型トレパーナ


南北に長い阿寒町は北部の阿寒火山帯と、
南部の釧路炭田丘陵地に分離される。
町内の阿寒湖は湖面の標高420m、水深44mの代表的なカルデラ湖だ。 阿寒


当初は舌辛川沿いの林道を進む。
途中でエゾタヌキがお出迎えだ。
しかし林道は傾斜激しく、この後大荒れとなる。 エゾタヌキ


林道から分岐して廃道行く。
尾根沿いの廃道には古びた木造の電信柱がある。
もちろん既に電線は繋がず、木々と見間違うばかりだ。 電柱


植生の薄い尾根が続く。
エゾシカの角が落ちている。
これは三又に分かれているので、三歳以降のオスの成獣だ。 エゾシカ


東に向かう斜面を下る。
不思議と藪は無く、斜度だけを考慮すれば、
あとはGPSに従って進むことができる。 斜面


そして40分ほど歩き、斜面下に見えたのは小さな構造物だ。
あの円筒は恐らく斜坑坑口。
北進昇に到達だ。 風洞


到達したのは北進昇総排気坑口だ。
通気のための排気用坑口だ。
ここから地底坑道内の空気を吸いだしていたのだ。 連卸し


『昇』(のぼり)とは斜めの坑道で、下から掘りあがるものが『昇』。
対して上から掘り下げるものは『卸』(おろし)という。
つまり出来上がってしまえばどちらかは判定できない。 扇風機坑道


排気用扇風機の台座とリレーのような部材が残る。
主要扇風機は37kwのターボ型(渦巻後曲翼)で、
坑口内径は2,300o。 扇風機室


坑道内部は傾斜しており、数mで封鎖されているが、
斜坑であることは間違いない。
ここから1,300m下部で雄別通洞と接続しているのだ。 扇風機室



付近の斜面にはスレートの部材が残存している。
北進昇には 「上の払」うえのはらい=本層上炭・本層下炭「下の払」したのはらい=下一番層・下二番層 があった。
『払』とは石炭の採掘場の採掘面のことで、側面へ石炭を払い落とす意からきている。 スレート


総排気坑口から300m程度離れた位置には坑口がある。
これは北進昇総排気人道坑口。
つまりメンテナンス用の斜坑坑道だ。 総排気人道坑口


坑道における摩擦抵抗などにより、通気抵抗が発生し、
また坑内からの熱の授受により、流れる空気はその密度を変える。
湿度や通気量を定期的に測定し通風の合理化を図るのも人道坑口の役目だ。 人道坑口


総排気人道坑口から更に斜面を下る。
排気坑口とセットになるのは、巻上機のある斜坑運搬坑道だ。
周囲に目を配り、坑口を探す。 斜面



そして斜面の平場に現れたのは封鎖された坑口だ。
これは北進昇ロープ坑道坑口だ。
1,350m下の雄別通洞まで原炭を運搬する坑道だ。 ロープ坑道


坑口の手前には巻揚げ機の土台がある。
ここには450kwの巻揚げ機があり、
炭車や人車の巻揚げ・巻下げを行っていた。 ワイヤー


坑口の内径は3,000o。
雄別炭鉱 長沢斜坑 と同じく地上までの原炭搬出は行わず、
北進昇坑で採炭した原炭を雄別通洞まで運炭した。 坑口


このRC台座上にあった巻揚げ機とは強力なモーターに大きな円筒を接続し、
これに鋼製のロープを巻き付けて、
坑内から石炭を積んだトロッコを引き揚げる(下げる)設備のことだ。 巻揚げ機


台座の上には巻揚げ機や電動機を保持するフランジがある。
昭和35年に北進昇に採用されたトレパーナ(HL5)は、
イギリス製の大型重機で1台1,700万円(現在の価値で約3憶円)。 フランジ


周辺には多数の部材が埋没している。
トレパーナは1951年にイギリスで開発され、大口径の作孔ヘッドを機械前後端に装着し、
ガイドレールに沿ってけん引されながら採掘を行う機械だ。 ドラム


パンツアコンベアーと呼ばれる幅450oの鉄板の溝内を梯子状のスクレーパーがスライド移動することで、
上に載った原炭を運搬する装置がある。
この斜め上を石炭を砕きながら下部のパンツアコンベアーに同時に積込むのがトレパーナである。 ワイヤー


機械設備の充実と合理化は昭和32年以降、急速に進み、
当時日本唯一のトレパーナは業界の注目を浴び、
薄層採炭に威力を発揮する新鋭採炭機であった。 架台







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ロープ坑道
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