日本神話と神々の系譜【1】

          古事記(こじき)日本書紀(にほんしょき)とは

                  記紀(きき)の神話の世界

    日本神話のベースとなった最古の歴史書

     日本神話を語るには『古事記』『日本書紀』の神代巻(しんだいかん)が重要だ。

    これら二典は日本の代表的な古典で、いずれも平城京遷都(せんと)後の奈良
    時代初期(しょき)に成立している。
     『古事記』は天武天皇の(みことのり)を受けて編纂され、和銅五(712)年、
    元明(げんめい)天皇の御代に完成した。もともと諸家に、天皇家の実績を年次順
    に記した『帝紀』、また神話や伝承を記録した『旧辞(きゅうじ)』という書物が
    存在しているが、すでにいつわりも多かったので、それらを調(しら)べ直し
    て再編集(さいへんしゅう)したのである。
     一方、『日本書紀』が完成したのは、『古事記(こじき)』成立から八年後の
    養老(ようろう)四(720)年。こちらは中国の史書(ししょ)を手本としている。これらの
    二典は性格を異にするものの、その内容(ないよう)には共通する部分も多く、二
    つ合わせて『記紀(きき)神話』と総称される。

    記紀の編纂目的の違いとは

     なぜ同時代に似たような二つの歴史書を編纂(へんさん)したのか。それは、『古事記』が
    各地の豪族(ごうぞく)との戦いに勝ち抜いて王権を確立したプロセスが神話という形になっ
    ており、天皇家の正当性を示すものになっているため、出雲(いずも)神話が大きな位置を
    占めている。これに対し『日本書紀(にほんしょき)』は国家の正史であり、中国や朝鮮の書物、
    政府や寺院の縁起(えんぎ)など幅広く記録を収録し、国外向けの通史となっている。よっ
    て地方である出雲(いずも)の記事は『日本書紀』には登場しない。
     また神の名前や表記も違いがある。『日本書紀(にほんしょき)』が漢文で記されたのに対して、
    『古事記(こじき)』は漢字の音読みと訓読みを交えて表記してある。日本語本来の音を漢字
    表記した『古事記(こじき)』に対し、『日本書紀(にほんしょき)』は名前の持つ意味を漢字で表記している
    ためである。
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