名を聞くより、やがて面影はおしはか Aらるる心地するを、見るときはまた、かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ。
昔物語を聞きても、このごろの人の家の、そこほどにてぞありけんとおぼえ、 人も、今見る人の中に思ひよそへ Bらるるは、たれもかくおぼゆるにや。
また、 Cいかなる折ぞ、ただいま人の言ふことも、目に見ゆるものも、わが心のうちも、かかることの Dいつぞやありしはとおぼえて、いつとは思ひ出で Eねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思ふにや。【第七十一段】
問1 A、Bの「らるる」の文法的説明として適当なものをそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。★
ア 可能の助動詞 イ 自発の助動詞 ウ 受身の助動詞
エ 四段動詞の活用語尾+自発の助動詞 オ 受身の助動詞+自発の助動詞
問2 Cいかなる折ぞのかかる文節を抜き出しなさい。★★
問3 Dいつぞやありしはの口語訳として適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。★★
ア いつだったかあったなあ イ いつあったのだろうか ウ いつかあるのなら
エ いつもあったよ オ いつかあったのは
問4 Eねを文法的に説明しなさい。口語訳は不要です。★
advanced Q. 第二段落の下線部「人」とはどういう人か。10字程度で説明せよ。
@名を聞くより、やがて面影はおしはか aらるる心地するを、見るときはまた、かねて思ひ bつるままの顔したる人 cこそなけれ。
昔物語を聞きても、このごろの人の家の、そこほどにてぞありけんとおぼえ、 A人も、今見る人の中に思ひよそへ dらるるは、たれもかくおぼゆるにや。
また、 Bいかなる折ぞ、ただいま人の言ふことも、目に見ゆるものも、わが心のうちも、かかることの Cいつぞやありしはとおぼえて、いつとは思ひ出で eねども、まさしくあり fし心地のするは、我ばかり Dかく思ふにや。(第七十一段)
問1 adの「らるる」の文法的説明として適当なものをそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。
ア 可能の助動詞 イ 自発の助動詞 ウ 受身の助動詞
エ 四段動詞の活用語尾+自発の助動詞 オ 可能の助動詞+完了の助動詞
問2 c「こそ」の結びの語を、終止形に改めよ。
b「つる」e「ね」f「し」の助動詞のそれぞれの意味・その終止形・本文での活用形の名を順に記せ。
問3 @「名を聞くより、やがて」、C「いつぞやありしは」を口語訳せよ。
A「人」とは、どういう人か。わかりやすく説明せよ。
問4 B「いかなる折ぞ」はどの部分にかかるか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
ア 目に見ゆる イ いつぞやありしは ウ いつとは思ひ出でねども
エ まさしくありし心地のする オ 言ふことも
問5 D「かく」とは具体的にはどういうことか、30字程度で記しなさい。
問6 この文章の前半と後半とでは、想像力のはたらかせ方に違いがある。最も適当な説明を次の中から選び、記号で答えよ。
ア 前半は過去から現在を想起しているが、後半は現在から過去を想起している。
イ 前半は実体のないものから現実を想起しているが、後半は現実から非現実を想起している。
ウ 前半は自己の連想や類推であるが、後半は他人の連想や類推が含まれている。
エ 前半は過去の体験をよりどころとして想起しているが、後半は現実の現象だけを冷徹に想起している。
問7 この文章の文末に表れたためらいがちな省略表現が、テーマの「心理作用の不思議さ」によく照応して効果をあげている。該当する文末表現に省略された表現を補って、五字で答えよ。
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